うがぴょん

中井英夫、須永朝彦、泉鏡花などの幻想文学の著作や装釘の美しい本に関心があります。また、…

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中井英夫、須永朝彦、泉鏡花などの幻想文学の著作や装釘の美しい本に関心があります。また、フォクトレンダー、イハゲー、ゼンザブロニカなどの機械式フィルムカメラにも興味があります。そんな関心に沿った記事を投稿すると思います。どうぞよろしくお願いします。

最近の記事

中井英夫『とらんぷ譚』異本(補遺)

はじめに 中井英夫『とらんぷ譚』異本(1)~(4)を公表後、生前の中井と交流がおありで、1979年初版『とらんぷ譚』の献呈署名本を受贈されたというKさんから貴重な情報をご提供いただきましたので、その内容の一部を補遺として投稿します。 2種類の1979年初版本が存在する理由 Kさんが最初に中井とお会いになったのは1985年のことだそうで、それ以前、中井の手元には校正用に1979年初版『とらんぷ譚』の試し刷り本が数冊あったようです。1985年春、Kさんは、中井がつねに傍ら

    • 中井英夫『とらんぷ譚』異本(4)

      1979年初版本の異本 2022年7月16日から7月30日までの期間、恵比寿のシス書店/Galerie LIBRAIRIE6で「「中井英夫 生誕100年」展 – 本多正一写真集「彗星との日々」と装画作家たち – 」が開催されました。 私は、中井英夫ファンの某氏と一緒に観に行ったのですが、落ち合ってから開場まで少し時間があったので、近所の喫茶店に入り、互いに持参してきた1979年初版本を比較してみることにしました。 さて、写真はそのときに撮影したもので、左が私の、右が彼の

      • 中井英夫『とらんぷ譚』異本(3)

        13部限定本の可能性 所有する1979年初版本の署名の日付「1979.12.」が薔薇パーティの時期と矛盾するように思われたので、この『とらんぷ譚』が薔薇パーティで13人の参加者に配られた「13部限定本」の1冊なのかどうか確信が持てませんでした。 そんなとき、何の気なしに読んでいた中井の『香りの時間』(大和書房、1981年)に、手掛かりになりそうな一文を見つけました。 ここで中井のいう「クリスマス」がいつのことなのか、本文中には明記されていませんが、『とらんぷ譚』を近著と

        • 中井英夫『とらんぷ譚』異本(2)

          13部限定本 2020年、私は、ある古書店から中井英夫『とらんぷ譚』(平凡社)の識語入り献呈署名本を購入しました。「影の狩人たるべき―」という識語とともに松村禎三氏への宛書のある本です。そして、この『とらんぷ譚』には中井本人による手書き正誤表のコピーが挟まっていました。 松村氏は作曲家で東京藝術大学教授を務めた人物です。中井英夫の飲み仲間で麻雀仲間、中井のパートナーで作品社(第2次)社主の田中貞夫が経営するバー薔薇土の常連、軽井沢の流薔園や羽根木の薔薇パーティの常客で、そ

        中井英夫『とらんぷ譚』異本(補遺)

          中井英夫『とらんぷ譚』異本(1)

          はじめに 中井英夫(1922年9月17日 - 1993年12月10日)の短篇小説集に平凡社から刊行された『とらんぷ譚』という本があります。1980年1月10日付け初版第1刷発行のもの(1980年初版本)が一般に知られていますが、それとは別に、少部数ながら1979年12月20日付け初版第1刷発行の異本(1979年初版本)の存在が知られています。 因みに、国立国会図書館や東京都立図書館に納本されているのも1979年初版本のようです。 私は、1979年初版本と1980年初版本

          中井英夫『とらんぷ譚』異本(1)