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水路をなくしたい|用途廃止(払下げ/付替え)ではないまったく別の方法

自分の土地に水路が通っていて邪魔だけど、公共物のため勝手に潰すことができなさそう…。これは、自分の土地を最大限活用させるため、まったく想定外の方法で、無料で水路を自分の土地にした実際の話です。


1|どんな水路なのか

水路の図

上の記事に事情は事細かに掲載しましたが、私が所有する2筆の土地(農地)の間には、今は使われていない水路があり、その水路が低い位置にあることから、水路沿いは斜面となり、土地の多くが農地として使えない状態です。

ちょうど境界に水路があります。
水路が低い位置にあり、斜面ができ、作付けできないところが多いです。

この使われていない水路(水が流れていない)は法定外公共物なので、役所で「用途廃止」の手続きをして、「払下げ」をしてもらえれば自分の土地となり、埋め立てて大きな斜面ごとなくすことができます。

そうすれば当該地との境界線ギリギリまで隣接地を利用することができます。

法定外公共物とは

法定外公共物とは、道路法、河川法等の法令の適用等がなく、かつ、登記上私権が設定されていない公共物のことを言います。公図(14条地図)には「水」や「道」と記載されていて、地番が付いていないような土地です。
次で説明する「用途廃止」を行うには、その水路が法定外公共物である必要があります。
今回の土地の公図を見てみると、水路には「水」と記載されていて、地番はありません。このことから、この水路が法定外公共物であることがわかります。

「地番を調べる方法」で紹介した「MAPPLE法務局地図ビューア」でも確認できます。「水」の部分をクリックすると、地番ではなく、「水-〇〇」と表示されます。

2|用途廃止の検討

用途廃止とは、法定外公共物の公共性がなくなったとして、道、水路としての利用目的をなくすことをいいます。法定外公共物であれば、条件を満たせば、自治体に申請して用途廃止できる可能性があります。

法定外公共物の用途廃止(払下げ)

用途廃止ができれば、払下げと言って、自治体から有償でその部分の土地を手に入れることができます。

用途廃止と払下げはセットです。「水」だった部分に地番が付き、個人の土地になります。

法定外公共物の用途廃止(付替え)

今回は水路が使用されていないので払下げを目指しますが、水路に水が流れていて、それでも水路をなくしたいという場合は「付替え」という方法もあります。用途廃止と付替えのどちらかを先に考えるのではなく、用途廃止と付替えをセットで同時に自治体に相談する必要があります。

自治体の許可を取り、ピンクの部分の水路を自費で新設し、土地を分断していた水路は用途廃止し、交換するようなイメージです。

用途廃止の条件について

自治体によって異なりますが、よく見かけるのはこの3つです。
① 代替施設が設置されたことにより不用となった場合
② 宅地造成等により、その区域内に存置する必要がなくなった場合
③ 現況において機能がなく、将来とも機能回復させる必要がないと認められる場合
今回は①と②には当てはまらないので、③が該当するか自治体に相談しに行きます。

また、これとは別に、水路に接する土地の所有者等の同意を得るという条件もあります。私の場合、もともと水路両側の土地を持っていたわけではなく、もう一つの土地は所有者不明だったので、許可を得ようにも得られず、用途廃止するには所有者不明状態を解消する必要がありました。

●東近江市のHPが色々なパターンが載っていて参考になります。https://www.city.higashiomi.shiga.jp/cmsfiles/contents/0000001/1110/004_youtohaishi_jirei.pdf

用途廃止の費用について

費用は大きく分けて2種類です。

① 土地の測量費
水路分の土地を自治体から購入することになりますので、自費での土地の測量が伴います。専門知識が必要なので、土地家屋調査士に依頼して自治体に申請してもらうことになりますが、その費用は20万円と言われました。

② 土地の購入費
①で土地の面積がわかるので、面積(㎡)×㎡単価(円)で求めることができます。㎡単価は自治体によっては単価が決まっている場合もありますし、周辺の土地の固定資産税評価額を元にして求める場合もあるようです。

今回、私は用途廃止(払下げ)に①+②で単純計算で約57万円かかるところ、無料で自分の土地にすることができました。

付替えをする場合は、水路を新設するので、規模にもよるでしょうが、私の状況で付替えをした場合、工事費用は自分持ちで100万円単位でかかることになります。

3|自治体に相談

用途廃止は可能か?

事前に自治体に相談をしたときは用途廃止できるとのことでしたが、何か月か経っていざ申請の段階で相談すると、厳しいかも知れないとの回答でした。用途廃止の条件の、特に「将来とも機能回復させる必要がないと認められる場合」が認められないかもしれないということです。
色々簡易的に直していますが、状況は次のとおりです。

水路Aを用途廃止して、自治体から払下げしてもらいたいわけですが…。

それから何度か相談しましたが、結論から言いますと(むしろ、考慮する点が多すぎて結論しか書けません…)、用途廃止はできない可能性が高いということになりました。
用途廃止をして、自治体の土地を個人が購入するということは、ある意味、自治体や地域の方の不利益に繋がる可能性があります。ですから自治体も慎重になります。自治体の役職に就いた方々はもちろん、首長の許可が必要となりますが、その人たち全員が「将来とも機能回復させる必要がないと認められる場合」に該当すると納得させるほどの状態ではないとのことです。

道が絶たれた?!

この用途廃止はハードルが高いと思っていましたが、事前相談のときは好感触だったので、はしごを外された感がものすごくあります。ワンチャンスを狙い、申請してみるのも手ですが、相手の判断ミス待ちのようで好手ではありません。それに、一度申請して不許可の判断がされると、それを覆す何かを示さなければならないので、より難しくなります。

「所有者不明土地管理命令制度までして用途廃止の条件を整えたのに、結局ここまでか。」

やり切ったすがすがしさと、もう土地を整地できない残念な思いとで、今日は一人残念会でもするかなと思ったとき、一本の電話で状況が一変します。
その電話は、土地の測量に20万円かかると言った土地家屋調査士からでした。


ここまで読んでいただきありがとうございました!
土地家屋調査士からの電話がきっかけで、道が開かれるわけですが、私個人としては、この方法は運の要素が強いと感じています。用途廃止を考えているすべての人に当てはまるわけではなく、むしろ当てはまることは稀だと思います。
しかし、可能性はまったくゼロではありません。
自治体に現状をもとに用途廃止を断られて、その時点で諦めてしまった人にとっては、逆転満塁さよならホームランになる可能性があり、私もその一人となりました。

これからその話を詳しく記事にしていきたいと思いますので、ご興味のある方は購読をどうぞよろしくお願いいたします!

4|まったく別の方法

土地家屋調査士からの電話

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