UgandaForever

日本の未来はアフリカに在ると信じています。ウガンダはいずれワカンダに。

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SFプロトタイピング小説「北部回廊」外伝ー グローバル感染症②

3.ケーススタディ:OMオーエム株  感染終息まであと数株に迫っていた2021年末、南アフリカ共和国の医師会会長の勇気によって報告された、新たな感染株 OMオーエムは、それまで流行していたDLディーエル株と全く異なる性質を持つ、奇妙な相手だった。  OM株のいち感染者が二次感染を起こすまでの『世代時間』は、早い段階でDL株の半分程度の2日間と判明。この事実から、各国の感染症専門家は「OM株のPCR陽性者数の増加率、いわゆる【感染速度】は、おそらくとんでもない速さになるだろ

    • SFプロトタイピング小説「北部回廊」外伝ー グローバル感染症①

      1.総論  約80年前に流行した、あるグローバル感染症は、世界全体を短期の経済混乱に陥れた。現代の経済学者たちは、この短期の騒動を一顧だにしない。  現代のデータ心理社会学者/データ地政学者たちも、経済学者と同じく、この感染症のグローバル経済への影響について全く興味を示さない。他方、各国が当時採った未知のウィルスへの戦い方には、大きな関心を寄せる。  彼らの興味を惹く最大の理由は、各国最高峰の頭脳が四苦八苦の末に都度編み出した【戦術】が、為政者による意思決定の段階で、E

      • SFプロトタイピング小説「北部回廊」5

        5.正 経済回復の目途がついたシー国は、さらにアフリカへの関与を強める。目立たぬように。  まず、東南部アフリカでの『ベルト&ロード』プロジェクトのみならず、アフリカ全土での新規・対外融資プロジェクトについて、❶貸出金利を最大で150ベーシスポイント緩め、❷返済期間を最長40年に延長、さらに❸返済猶予期間グレース・ピリオドを、プロジェクトの種類に関わらず一律10年延ばした。  すなわち、平均年利 2.85パーセントに及んでいたシー国の対アフリカ巨額融資プロジェクトの貸出金

        • SFプロトタイピング小説「北部回廊」4

          4.澗 2064年の97億人をピークに、人類文明は人口減少時代に突入した。環境問題も、食料問題も、温暖化も、すべて吹っ飛んだ。「いずれ人口は減る。一時的な問題に、何を騒ぐ必要があるんだ」と。  各国は、人口減に加えて高齢者層の増加に悩んでいた。80歳以上が保有する貯蓄の地球規模的増加と、平均寿命の世界的急上昇は、低インフレーション社会への無言の圧力となった。インフレは長生きする高齢者の将来資産を、静かに刈り取ってしまうからである。何もしなければ、今日の10億イェンが20年後

        • 固定された記事

        SFプロトタイピング小説「北部回廊」外伝ー グローバル感染症②

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」3

          3.溝「いいですか、この話のキモは【新ジカ】の前身、国際協力公団【旧ジカ】による実績です。【旧ジカ】がアフリカやアジアでやっていた開発援助の歴史がほんとに大きかった。アジアでは前世紀からずっと評価されていたし、貧困層を中心に、アフリカでも今世紀初めには、評価が大きく高まりました。だけど……」 「援助の貢献度を定量的に評価できなかった、だな」 「全くその通り」 「俺の口癖、イジるな」 「ハハハ、スミマセン。いや、全くそのとおりなんです。【旧ジカ】が“めっちゃ、いいことや

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」3

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」2

          2.穣 ジェイ国の政府援助機関だった国際協力公団【ジカ】は、2050年にその名を「国際信用創造公団―ジェイ・インターナショナル・クレジット・エージェンシー」と変え、【新ジカ】として、デジタル通貨 J・トークンの発行を所管することになった。中央銀行の国立ジェイバンクを差し置いて。  2010年代半ばから先鋭化したブロックチェーン革命は、ジェイ国の救いの主だった。「急激な人口減少と極度の高齢化は、何をやろうがもう避けられない」と本気で覚悟したジェイ国は2050年、経済成長に囚わ

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」2

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」1

          1.𥝱「あのとき、我々の先達がデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラストをもっと正しく理解していたらな」  ジェイ国外務省の首席戦略書記官・長坂ジュマは、ある欧州の政治家のつぶやきを反芻していた。世紀末最後の年、アフリカの先進国家ワカンダに派遣された彼は、ジェイ国とワカンダ国が共同で実施予定の、ある実証実験のコーディネート役を担うとともに、その前提となる重要な外交交渉に臨もうとしていた。 「いまさら自分たちのご先祖さまに文句言ってもねぇ。自業自得とはこのことですよ。ねぇ

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」1

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」ーあらすじ

          あらすじ 2064年の97億人をピークに、人類文明は人口減少時代に突入した。地球規模の人口減少を予測していたアジアの超大国シー国は、ユーエス国に代わる覇権国家を目指し、残された唯一の人口増地域アフリカに、経済成長の果実を求めた。同じアジアの旧先進国ジェイ国は、貨幣経済を棄て、ブロックチェーンに紐づいた「いいことやってる」トークン経済圏を創設、国家の生き残りを図る。2100年、東部アフリカの先進国家ワカンダに派遣された主人公は、ジェイ国の運命を握る外交交渉に臨む。 #創作大賞

          SFプロトタイピング小説「北部回廊」ーあらすじ