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メランコリー、のようなもの #6

 気まずい感じにもならず、とりとめのない話をしながら10分経ったら示し合わせたように二人が来た。

 「ごめん、電車遅れちゃった」
 「なんか急に電話かかってきてさ」

 言い訳の見本みたいな感じ。怒るでもなく、揃ったからじゃあ遊びに行こうかって。駅の脇から商店街の反対側に抜けて、古着屋さんを横目に少し歩いた。階段を降りたらもうそこは公園だ。初めての井の頭公園は結構広くていろんな人がいた。僕らみたいなデート、昼から飲んでる大学生のグループ、ジョギングしてる高校生とおじさん、家族づれ、トランペット吹いたり大道芸したり漫才の練習している人たち、自由で雑多な感じ。なお、ベンチはカップルで埋まっている。
 駅前はお洒落に見えたけど、少し歩いたここはそんな雰囲気があんまりない。いろんな人がそれぞれの目的で来ていて、皆自由に、やりたいことをやっている感じ。僕らも例にもれず、大学生のダブルデートらしく歩きながらはしゃいでいた。先を行くのは僕と××さんの友達同士。身振り手振りを交えながら話すあいつの話を聞いてとても楽しそうなその子を見て、ああなんかお似合いなんじゃないかなとか思ったりしていた。こういうのって感覚でしか分からないもので、僕の友達はノリが軽くて色々な友達がいて誰とでも仲良くなれる。すると結構同じような人たちが集まってくるから、仲良くなっても恋愛にまで発展しないことが多い。だから、いつも楽しそうにしているけど、今日は微妙に違っている感じがする。××さんの友達は全然裏表なさそうで屈託がない。だからあいつは自然に楽しくなって、テンションが上がっている気がする。そういう友達を見るのが新鮮だったりした。

 こういう時って自然と2対2になるもので、向こうとこっちで勝手に喋りながら井の頭自然文化園の方に歩いていった。池にはアヒルのボートが浮かんでいたりして眺めていて面白い。

 「あのアヒルさんボートに乗ったカップルって別れるらしいよ」

 前から会話が聞こえる。西東京の大学生でまことしやかに伝わる噂。

 「だってさ。知ってる?」

 「知ってるよ。有名じゃん。私の友達も乗った後一週間で別れたって言ってたよ」

 「付き合ってない男女が乗ったらどうなるかとか言い出しそうじゃない?」

 案の定、ボート乗り場で前の二人は止まって、この即席のカップル同士で乗ることになった。

 「この場合どうなるんだろうね?」

 爆速で漕いで行く二人を見て、呆れたように笑った君が言った。

 「何も起こらないんじゃない?ただ楽しいだけ」

 「めっちゃ適当だ。何も起こす気がない人のセリフだよそれは」

 「起こす気ないよ。姫と何かあったらサークルの皆に何されるかわかんないし」

 「へー、真面目なんだねー」

 言葉に詰まる。まあいいや。今日は友達のためなんだから。あと高嶺の花子さんには気を付けた方がいいって僕の直感が言ってる。

 「そろそろ上がって動物園いこうか」

 「わかった。ラインしとくね。ちゃんと見てくれるかな」

 そういってスマホに目を向ける彼女の横顔は相変わらずきれいだけど、それを意識しないように僕はハンドルを回転してペダルを漕いだ。

 

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