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マロニエ

パリの朝 僕は 老木に出会う

散歩の途中で 見上げる空と木

この空に 写していいものは
少し優しい 穏やかな心だけ



マロニエの 淋しい嘆息が漏れているから  

重なる枝から 実が落ちてしまっているから

盛んだった頃の 青い葉と 白い花を 
見失えば 落ちて終わるさだめだと

あなたは 僕よりも 長く 
長く 人を待ってるんだ 自分を枯らしながら
二度と来ないかもしれない人を だから

ここには 慰めを添えてそっと 
通り過ぎよう
僕は 通りすがりの旅する者 
きっと
明日は もういないから



風に聞いてみた

何もなかったように 終わる事 
あんな素敵な時を なかった事になんて 
できない時は 君ならどうする


風は僕の頬を撫でるだけで 
こう言った


君はどうしたいの




僕は今も 苦しみを選択し
悩みの 記憶を綴ってしまう


僕は どうしたらいい

僕の心に あの人との時間を 取り戻したい

忘れる為に ここに来たけど
とても無理

今朝の 空も同じ様に 
おもむろに
僕を見下ろすだけなんだ


歩いて
歩いて
ただ 歩いていた


帰り道
マロニエが 微笑んだ


沢山 お泣きよ と

恋をして 人を好きになって
沢山泣いて もっと 素敵になれると

マロニエの じいさんは 僕を見てそう言った

きっと じいさんも 素敵な恋を 通ってきたの

あなたにも 忘れられない人がいたの



僕は まだ少し寒い朝に
腕を抱えながら 体の中をすり抜ける ちょっと冷たい空気を感じた それは きっと

君のぬくもりを 恋しがる 僕の孤独


いまだ 今朝の 君を
欲しがっている




2024/03/01  teo

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