”互選会”、それは忍耐力が試される場

すべての始まりはここからである。
”互選会”という、世にも不思議な恐ろしシステムがあることを諸君はご存知か?

くじ引きからの”互選会”へ

子どもの学校では、次年度のPTA役員は、「立候補がなければくじ引き→互選会の実施」という流れで決めることになっています。
このくじ引きは、”学年会”と呼ばれる各学年での予備選のようなもので行われ、年末の保護者会の後に学年の保護者が集まって文字通りにくじを引くのです。

くじ引き会場では、保護者(100%に近い割合でお母さんなのは何でなんだぜ?)が祈りながら割り箸のくじを引く姿と、先が赤く塗られた当たり割り箸を引いてしまった人の強張った表情を目にすることができます。それはもうものすごい緊迫した空気と、それを誤魔化すようにおしゃべりをする声、仕事の都合でどうしても来られない人に代わってくじを引く選挙管理委員会の人にも緊張感がみなぎり、夕方の視聴覚室は妙な熱気に満ちていました。

そして、呼ばれた私は厳かに引いたよね、静かに、1本。
その先端は見事に赤く染まっておりました。
「キタコレ!」周りのお友達、気の毒そうな顔だけれどちょっと安堵した顔でもあるな?そりゃそうだ、1枠減ったんだもの、自分が当たる枠が。

これって「自己申告制不幸自慢選手権」じゃない?

互選会は、土曜日の午後一番から学校で開催されます。
くじを引いてしまった人は、選挙管理委員会に名前と連絡先を登録し、後日”互選会”への出席命令のお手紙が送られてくるというわけなのですよ。

各学年から10名、都合50人の生贄と選挙管理委員会の方々、そして本年度役員がずらっと顔を並べた特別教室に冬の午後の弱い日差しが当たっていました。目の前に置かれたお茶のPETボトルとお菓子。「あー、サンガリア。安く上げたね、こりゃ」などと思っているうちに、現役員から仕事内容の紹介が行われます。仕事内容についてはやる気もないので「ふぅん」とか言いながら聞き流している人も多数。私も御多分に漏れないはずだったんだけどなあ?

ひと通り紹介が終わった後に、選管の方から一言。
「仕事内容を聞いて、立候補される方はいますか?」
「・・・」
いるわけないやろ!
ただでさえやりたくない人が、くじを引いちゃったもんだから仕方なく集まっているのがこの場じゃないですか!
「ですよね。それでは、まずはこの場に来ている方がどんな方なのか自己紹介をしていただこうと思います」
って、えぇえええ?合コンじゃないよ?名前くらいは言えるけど、下手に覚えられても嫌だしいったい何を話せというのか?などと考えているうちに、5年生からスタートしてしまった自己紹介。
トップバッターが凄かった。
この人のおかげで、この後の自己紹介で皆さんがドラマティックに自分のことを語り始めたと言っても過言ではないと今は思います。そういう意味で、いい仕事したよ!

この方は、某機関にお勤めでした。
ここまでにしっかりしたキャリアを積み重ね、この2020年度はどうしても外れるわけにいかないプロジェクトがある、自分は全く身動きが取れない、といった感じのことを伝えられました。海外出張も頻繁で、学校行事やPTAの行事に費やす時間がないとおっしゃる。いやよくわかるよその気持ち。

でーもー、それみんな同じ。
働いている人はみな同じ。何の仕事でも海外出張が多くても、それは理由にはならないのです。
ただこの方は、現状のPTA活動には疑問と危機感は持っていて、次年度には何か貢献したいです!という意気込みを見せてスピーチ終了。

そしてその後は、総勢50名がここぞとばかりに自分ができない理由を述べ合うという、「自己申告制不幸自慢選手権」が開催されました。
例えば、「両親の介護と乳児の子育てを同時にやっている」とか、「仕事の傍に、さらなるキャリアアップを目指して資格取得の学校に行っている」とか、「病気療養のため今は仕事を休んでいるので耐えられないと思う」とか、出るわ出るわ…。裏を取っているわけではないので、真実なのかはわかかりませんが、みんな真剣そのもの、絶対に役員などやれない!という意気込みが強く感じられます。

そんな皆さんのスピーチを聞きながら、「そもそも何故こんなにみんながやりたがらないのか?」に思いを馳せていました。だって、本来PTAって子どものために学校と保護者が協力しあうための組織でしょ?なのになんで、みんなで押し付け合う形になっているんだろう?
…そんなことを考えているうちに私の番になりました。

何にも考えていないし、自慢するほどの不幸(っていうか忙しさアピール)もないし、いったい何を話せばいいのかなと思いつつ立ち上がり最初に出た言葉は「こんなにみんなが押し付け合わなければいけないPTAってなんなんでしょうね?」という意味合いの言葉でした。
実際自己紹介の前にこの発言をしてしまったので、この後に名前などを申し上げたわけですが。いやぁ、考えなしに言葉にするのは本当に致命的なのでオススメできません。

長くなったので私の自己紹介から先、互選会の顛末は次に持ち越し。



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