中学生の時に最もやらかしたこと

少々、というかかなり汚い話にはなってしまうが、数々のやらかしを披露してきた中学時代の中でもとびっきりやらかした話を書こうと思う。

あれは忘れもしない、中学2年生の夏休みに入る直前の7月のある金曜日。

その日は変則的なスケジュールで、1〜4時間目まで、つまり午前中全てを使い、家庭科の実習ということで近所の幼稚園を訪問していた。基本的には幼稚園児と遊ぶだけという、子供が好きな人にとっては天国、そうでない人にとっては地獄のような時間だった。

それが終わると学校に戻り、給食を食べて5時間目は全学年が体育館に集まり、誰だかよく知らないおっさんの講義を聞くという時間。まあこれも退屈だが寝てれば終わるので、この日はまあまあ楽な一日だった。

しかしこの比較的ラッキーな日にアンラッキーなことは起こってしまうものである。

ぼくは学校に戻るとすぐ、トイレへと向かった。小便器に向けて放水を開始したその刹那、左太ももにものすごくあたたかいものを感じた。

開始1〜2秒ですぐにこれはまずいことになったとわかった。冷や汗が止まらない。もちろん尿(以下"甲"とする)も止まらないので、ぼくは体中から色んな液体を放出しながら、全てが終わるのを待った。

そもそもぼくのおつんつん(以下"乙"とする)は、というか皮の先端なのだがなぜか左を向いており、それ故に幼少期から立ち"甲"を失敗することが多かった。そのため基本的には小の時でも個室を使っていたのだが、中学生という生き物は個室を使う人をとにかくイジる。

あいつう○こしてるぅ!などとイジられたくなかったぼくは友達がトイレにいる場合は無理をして小便器を使っていた。この時も隣で友達が放っていたため、ぼくも仕方なくやることにしたのだ。

そしてもう一つ、先述の通りこの日は実習だったため、ジャージを着用していた。これがまた良くなかった。

ぼくは下着パンツ→ジャージ短パン→長ジャージの順で下に3枚履いていたのだが、普段より単純に履いている枚数が多いのでより立ち"甲"がしにくくなり、結果的に"乙"にとって満足なポジションで仕事をさせてあげられなかった。

しかもジャージの素材は、学生服に比べて液体を吸収しやすい。最悪学ランに"甲"を引っかけちゃったとしても、あまり染みないしすぐ乾くので被害は少なく済むのだが(もちろん経験済み)、この日に関しては上下ジャージという、普段より過ごしやすい格好だったことが逆に裏目に出てしまい、その被害をより甚大なものにさせていくのだった。

友達と共にトイレを後にしたぼくは、とにかく悟られないように自然体を演じた。しかし、"甲"を吸いに吸いまくったジャージが一歩一歩と歩くたびにぼくの左下半身にヒヤッとした冷たい感触を与え続ける。

ここで保健室など行くなりすれば予備のジャージなど貸してもらえただろうに、不思議なことに当時のぼくにその発想はなく、この状態でどう過ごすかという思考のみが頭を駆け巡っていた。本当に頭の悪い中学生である。

給食になると、皆で机を合わせて食べるのだが、もうぼくはそれどころではない。どうにか周りの生徒の素敵な食事の時間を悪臭で壊すわけにはいかない、となんとか姿勢を変えながらもほぼ味のしない給食を平らげた。

だがぼくの小手先の努力でどうにかなるレベルではなかったらしく、ぼくの前に座っていた女子がぼくの隣の女子に、「なんかトイレ臭くない?」という禁断の質問を繰り出した。ぼくは内心、かなりのピンチを迎えた…と焦っていたのだが、隣の女子は「うん…。」と返しただけであった。おそらくぼくが何かしらで左下半身に"甲"を連れて帰って来てしまったことを察したのだろう。それかその日ありえないくらい鼻が詰まっていたとしか考えられない反応の薄さだった。

だがいくら焦ったとて、この状況のぼくに出来ることはただ"甲"が乾くのをじっと待つのみである。そしてそのまま5時間目の講義を聞くため、体育館へと移動した。

その間もぼくは左下半身が気になって正直講義どころではなかったが、ただひたすらに時が過ぎるのを待ち、5時間目もなんとか終了した。だがホッとしたのも束の間、今度は別のクラスの女子から、「なんか5時間目ずっと臭くなかった?」と聞かれてしまった。この人も何かを察したのだろうか。とにかく女子は鼻がよく効く。いや偏見だけど。

実はその子とぼくは体育館で同じ列だったらしいのだが、彼女によるとその列の生徒みんな臭いと言っていたらしい。

なぜぼくの"甲"の臭いは横一列をピンポイントで刺激するのかは謎だが、少なくともその女子とは7〜10mは離れていたはずである。そんなに遠くまで伝わってゆく"甲"の守備範囲の広さに感銘を受けつつ、「あ〜なんか腐ってる系ね?」とあくまでも臭いものの原因は自分ではないですよアピールを無事キメて、体育館を後にした。

そして放課後、ぼくはバスケ部に所属しておりその日も練習があったのだが、当時のぼくはやはり頭がおかしかったので、そんな状況なんだから適当に仮病でも使って帰ればいいものの、なぜかいつも通り練習に参加した。

しかも部室は野球部、サッカー部、バスケ部が合同で使っており、たたでさえ臭いのにこの日はさらにぼくの"甲"の臭いが加わり、えも言われぬカオスな悪臭が漂っていた。

だが放課後になってもぼくの左下半身からの臭いはTommorow never knowsくらいとどまることを知らない。部室からは「臭い」「誰か失禁しただろ」「窓開けろ」と怒号が飛び交っていた。

そんな中で犯人のぼくはその正体を隠すようにそそくさとバスケットパンツに着替えた。すると少し臭いは和らいだが、それでも練習中、靴ひもを結ぶふりをして左太ももを嗅いでは、「やっぱり臭い」と絶望に打ちひしがれていた。しかしみんな走り回っているのもあり、練習中はあまり臭いは目立たず、ぼくも束の間、悪臭から解放されて練習に打ち込んだ。

だが練習が終わってバスケットパンツから直接的な被害者であるジャージに着替えると、またあの悪臭が蘇ってきた。練習が終わった頃には悪臭は部室を超えてゆき、もはや学校中に広がっていた。

そしてなぜかここで、1個上のK藤先輩というイジられキャラの先輩が標的となってしまった。他の先輩達から「K藤、お前失禁しただろ」と練習後のミーティングが始まる前まで散々イジられてしまっていた。

本人は「いやしてねーって!」と否定しまくっていた(当たり前である)。ぼくは心の中で「K藤先輩ごめんなさい」と思いながらも、ここで「実はそれ僕でえす」と言い出す勇気はもちろんなく、そもそもぼく自身イジられキャラでもなかったので、隣の友達に声を震わせながら「なんかずっと臭くない?」とバレバレの猿芝居を打つことしか出来なかった。臭いのはお前の左下半身とその演技だよと言ってやりたい。

そしてミーティングが終わり、長い長い一日が幕を閉じた。こうして振り返ってみるとぼくの行動には不思議な点しかなく、なぜ当時替えのジャージを貸してもらいにいかなかったのか、なぜ悪臭を身に纏ってまでも意地でも部活に参加したのか謎が深まるばかりであったが、今後これを超えるやらかしは無いだろうと思うと少しは気が楽に過ごせそうではあるが。

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