シナリオを書くために最初にすること 【シナリオ作法】
今回のシナリオ作法は
書くために最初にすること、です。
前回は
「最後まで書くための8ブロック」について書きましたが、
そもそもシナリオを書き始める前に
ちょっとした準備をしておくと
最後まで書きやすくなりますよ、
というお話を今回させていただきます。
目次
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どんな風に書き始めますか?
シナリオを書いているという皆さんは
どんな風に書き始めているでしょうか。
最初に、描きたいシーンから思い浮かぶでしょうか。
それとも、
こんなキャラがいたらいいなと思って始めるでしょうか。
あるいは、
伝えたい何かがあってシナリオを書き始めるでしょうか。
いずれにしても、何かをきっかけとして
シナリオを書こうと思うわけですが
そのシナリオの種ともいうべき状態から
どうやってシナリオを紡いでいけばいいのか分からず
手探り状態で始めてしまう…という事になってないでしょうか。
シナリオの種だけ握りしめて
ひとまず書いてみよう…!というやり方というのは
勢いがありますから、時にはいいかもしれませんが
最後まで書き上げるのは難しいかもしれません。
頭の中には色んなシーンが思い浮かんでいて
キャラクターたちもワンサカ賑やかに動いていて
なんとなくのストーリーも出来ている。
あとは、それらを文字にするだけでシナリオができるはず…!
と、書き始めた人も
実際に書いてみたら意外と進まなくて途方にくれてしまう
という事があります。
頭の中のキャラたちの動きやセリフを文字にすればいいだけ
と思っていたのに
キーボードを叩く手が止まりがち……
思いついていたシーンは書けるけど
シナリオとして繋がらない……
次の展開が見つからない……
思ってたのと違う……
面白いシナリオになってない……
てか、10ページくらいで書き終わっちゃうんですけど……
もしくは、何ページあっても足りないくらい長くなっちゃうよぉ……
などなど…
そんな事態に陥ってませんでしょうか。
そういった方々は、
シナリオを書き始める前に4つの要素を整えてみましょう。
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書き始める前に決める4つの要素
4つの要素というのは
・キャラ造形
・CQ(セントラルクエスチョン)
・リード(3行くらいのあらすじ)
・テーマ(伝えたいこと)
の4つです。
今まで、ぼんやりと思い浮かんでいたものを
この4つの要素にしっかりと明文化して
言葉として定着させます。
こうすることで
シナリオを書いてる途中で
展開に行き詰まったり
シナリオのゴールを見失ったり
キャラクターにブレが生じてしまったり
ということが少なくなり
格段に書き上げる率が高くなると思います。
各項目についてザッと説明しますと
「キャラ造形」は
主人公をはじめとしたメインキャラについての
様々な設定を考えることです。
シナリオコンクールの人物表には
佐藤太郎(35歳)デザイナー …などのように
氏名・年齢・職業くらいしか書かないかもしれませんが
キャラ造形では、
もっと詳しくキャラクターの背景を設定しましょう。
どんな性格か、どんな生い立ちなのか
どんな理想を持って、どんな悩みがあるのか
どんな趣味嗜好で、どんな口調なのか、などなど
なるべく詳しく設定するのが肝要です。
「CQ (セントラルクエスチョン)」は
主人公が解決すべき問題のことです。
それは、主人公の内面だけでなく
物語の中で解決すべき問題と直結します。
主人公が悩んでいる問題でもいいですし
自覚がなくてもいいです。
主人公が直すべき問題で周囲が迷惑しているというのも
いいと思います。
プロット的なCQですと刑事物なら犯人を捕まえられるか
などのような分かりやすいCQというのもありますが
今回のシナリオ作法では、内面的なCQを取り上げております
「リード(3行あらすじ)」は
物語の概要をざっくり3行ほどで書き記したものです。
これは、映画紹介文などでよくあるような最後の締めを
「~果たして主人公は勝利できるのか !?」的なものではなく
最後まできちんと書いてあるものです。
例えば「桃太郎」のリードですと
「桃から生まれた桃太郎が
犬・猿・雉をお供に連れて鬼ヶ島へ行き
鬼退治をして村に平和が戻る」
こんな感じになります。
「テーマ」は、作品を通して作者が一番伝えたいことです。
これは、恋愛とか青春とか、単語で示されるようなものではなく
簡潔な文章でいいので何を伝えたいのか明文化しておきます。
例えば「友情から始まる恋愛だってある」
などのように
具体的なものをテーマとして設定しましょう。
テーマ設定を抽象的なままにしてしまうと
シナリオを書いてる途中で
様々な派生テーマを思いついてしまい
当初、自分が書きたかったはずのものからブレてしまいます。
すると、最後まで書き上げることが難しくなってしまうのです。
と、いうことで
最後まで書き上げるために
・キャラ造形
・CQ
・リード
・テーマ
以上4つの要素をしっかり設定しておきましょう。
では次に、この4つの要素を使って
シナリオを書き始める準備をしてみましょう。
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シナリオの種
シナリオを書き始める最初の発想=シナリオの種には
色々な種類があると思います。
そして、
実は上述の4つの要素が、その種になることが多いのです。
こんなキャラが出てくる物語を書きたいな、とか
こんな問題を解決する物語を書きたい、だとか
こんなストーリーを思いついた、
こんなテーマについて書きたい、というのが
シナリオを書き始める種になると思います。
では、
ひとつの要素だけの種を使ってシナリオを書き始めて
最後まで完成させられるかというと、ちょっと厳しいです。
テーマを思いついたから
あらすじを思いついたから
喜び勇んでシナリオを書き始めたとしても
それだけでは
思ったようなクオリティのシナリオにはならないでしょう。
ではどうしたらいいかというと
ひとつの種だけを頼りに書くのではなく
他の3つの要素もおろそかにせず書き始めましょう。
例えば、キャラクターを最初に思いついたなら
その種がしっかりと芽吹くように
CQやテーマやリードを整えて
水や肥料や日光の役割をするようにするのです。
もしかしたら4つの要素以外のシナリオの種から始める人も
いるかもしれません。
その場合も、
この4つの要素をしっかり整えてシナリオ執筆に臨めば
きっとシナリオの芽が出て茎が育つと思います。
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種を育てるために
シナリオの種だけでは
何か面白そうなシナリオができそう…という予感だけですが
そこから芽を出して茎を伸ばしていくことで
花を咲かせることができます。
いわば予感だけのものを
具体性を持たせて形にしていくための作業が必要になります。
そのためにはどうすればいいのか。
まずは、自分が思いついたシナリオの種が
4つの要素の中のどれにあたるのか判別しましょう。
テーマなのか、あらすじなのか、
キャラなのか、解決すべき問題なのか
上述したそれぞれの要素のどれにあたるのか
考えてみてください。
それが判別できたなら
他の3つの要素を順次、設定していきましょう。
例えば、
こんなキャラが活躍する物語がいいな、と思ったのなら
次に、そのキャラが解決すべき問題:セントラルクエスチョンを
設定してみるのです。
キャラクター造形をしっかりと作り込む中で
セントラルクエスチョンは自ずと現れてくるかもしれません。
あるいは、こんな弱点があったら面白いなという発想から
セントラルクエスチョンが設定できるかもしれません。
セントラルクエスチョン:CQが固まったら
次はテーマを設定してみましょう。
キャラ造形やCQの設定をしてきた中で
シナリオを通して自分が何を伝えたいか、考えをまとめます。
普段思っていることと結びつけてテーマにしてもいいですし
キャラ造形やCQ設定の過程で
こういうことを伝えたい、と思うことが見つかるかもしれません。
テーマをしっかりと明文化しておきましょう。
この際、CQを解決することがカギになって
テーマが命題として成立するように設定すると
主人公の成長や変化が
物語のメイン事件の解決に直結するので
わかりやすいですし、視聴者や観客は爽快感を味わえます。
テーマが設定できたら
最後に、リードを作りましょう。
設定したテーマを
より際立たせるような3行あらすじを考えるのです。
メイントラブルを解決するためには
主人公のCQ克服がカギとなり
そのカギによってメイントラブルが解決され
テーマが浮き彫りになる。
……というのが理想的ではないでしょうか。
いきなりそんなの難しすぎるわ!
と思いますので
まずは
今まで設定してきたキャラ・CQ・テーマを使うと
こんなストーリーが作れそう……くらいの感じで
3行あらすじを考えるところから始めてみましょう。
こうして
ざっと4つの要素が揃ったら
もう一度それぞれを見直して
しっかりと深掘りしてみましょう。
4つ揃った状態で深掘りしてみると
それぞれの要素と連動したり相乗効果が現れて
より立体的に物語が立ち上がってくるはずです。
3行以上のあらすじが見えてくる、と思います。
それがシナリオの種から出た芽、ですので
大事に育てましょう。
そのためには、3行以上に育ったあらすじを
書き留めておきましょう。
なんとなく頭の中に出来上がってるから
書き留めなくてもいいや、というのはナシです。
これらが、シナリオを書き始める前に準備しておくこと、です。
準備が整いましたら、
今度は最後まで書くために
以前ご紹介した「8ブロックで構成されたプロット」を
組んでみましょう
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4要素の順列組み合わせ
前章で例に挙げたのは、キャラ造形が一番初めの種でしたが
別の要素が一番初めだったら、どうすればいいんだろう……
という方もいらっしゃると思いますので
ざっくりですが
私が考える4つの要素の順列組み合わせを記載しておきます。
(もちろん、これが絶対の真理とかではありません。
あくまで今の時点で私が考えるものです。
自分でやってみたけど、別の順番にした方が良かった!
ということもあると思います。色々試してみて
自分にとってのベストな方法を探してみてください)
ではまず、4つの要素についておさらいです。
・キャラ造形
・CQ (主人公が解決すべき問題)
・リード(3行ほどのあらすじ)
・テーマ(作者が伝えたいこと)
この4つです。
で、それぞれが最初になった場合の順列組み合わせは
以下の通りです。
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【キャラが最初の場合】
・キャラクター造形を深掘り
↓
・CQが何になるのか、考えます
↓
・テーマを決めます。
CQの解決によって導かれるものにすると収まりがいいです。
↓
・リードを決めます。
キャラ+CQ+テーマを包括する3行あらすじを作ります。
キャラ……こんな人がいて
CQ ……こんな問題が発生して
テーマ……こんな方法で解決しました。
(こんな方法、という部分に自分が伝えたいことを込める)
という感じにすると作りやすいかもです
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【CQが最初の場合】
・CQを思いつく
↓
・キャラを作ります
CQがより鮮明になるようなキャラを設定して
さらに深掘りします
↓
・リードを組みます
どうやったらCQが解決するかを考えると
組みやすくなると思います
↓
・テーマを決める
CQやリードから浮かび上がってきたものを
明文化して、自分の考えを乗せて整えます
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【リードが最初の場合】
・リードを思いつく
こんなストーリー書きたいな…位のざっくりしたものを
3行程度に明文化します
↓
・テーマを考える
リードから導かれる「自分が伝えたいこと」を書き留めます
↓
・CQを考える
テーマが解答になるようなセントラルクエスチョンを作ります
↓
・キャラ造形
上記の3要素を包括して鮮明に表現できるキャラ設定を考える
主人公含めたサブキャラたちの相関図を作るのも効果的です
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【テーマが最初の場合】
・テーマを思いつく
単語ではなく、具体的に明文化しておきましょう
↓
・リードを組む
テーマが浮き彫りになるような3行あらすじを作りましょう
自分が伝えたいこととは真逆の命題を与えたり
困難を与えると、あらすじが組みやすくなると思います
↓
・キャラ造形する
リードの中に放り込むと面白くなりそうなキャラたちを作ります
主人公については、特にしっかり深掘りしましょう
↓
・CQを考える
キャラを深掘りした結果、テーマに繋がるような
セントラルクエスチョンが浮かび上がってこないかを
注意深く見定めます。
CQが解決すればテーマが証明されるようにすると
着地感が出て、良きです
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以上となります。
もちろん、これらは一例であって
これ以外の順番はあり得ないとかではないので
その点、ご承知おきください。
自分なりの順番を確立したなら
その方法でやるのが一番だと思います。
また、一度この順番で4つの要素を作ったら
その後絶対変えてはいけない、というものでもありません。
色々考えたり設定を作っているうちに
調整が必要になると思います。
例えば
テーマをより明確に表現するために
キャラ設定をちょっと変えた方がいいと思ったら
ためらわずに変えてください。
こうした推敲ができるのも
前もって4つの要素を明文化しておいたからであって
ここを頭の中だけでうっすらイメージしてるだけですと
いつまでも、ああでもないこうでもない
あれ?どっちの設定だったっけ?ということになり
中々シナリオが前に進まなくなってしまいます。
それを防ぐための4つの要素です。
ということで、
シナリオを最後まで書き上げるためには
まずは、この4つの要素を事前に用意しておくといいですよ
というお話でした。
長文のおつきあい、ありがとうございました。
シナリオを書いてる皆さんや
これから書きたいと思ってる皆さんの
参考になれば幸いです。