虚実皮膜-1
しばらく休んで鯰のように暗く濁った川底で文字でも書いてみようと思った。有ること無いこと書こうとしたが、何を書けばいいのか分からない。
「サゲな昨日はお焚き上げ
世界はクソでけ〜OTOMEゲー」
とりあえず昨日出た田島ハルコの新曲のリリックを書いてみた。スマホがラップしてるみたいでかわいい。田島ハルコの言葉はこんなに楽しく飛び跳ねているのに、私の言葉はゴロゴロしてるだけ。私のための文章なのに、誰かが読むことを考えて指が進まない。就職活動でもエントリーシートが出せなくてお祈りメールが貰えなかった。なんのための文学部だったんだろう。
「おもろい以外いらんねん」という題名の本を思い出す。題名が怖くてあの本は読めそうにないが、嫌な言葉だと思った。「おもろい」が痛い、「いらんねん」が痛い。最近知り合ったコテコテの関西人はコテコテの関西弁を話す。関西弁を話す人たちは自分も他人もなく、見透かすような話し方をする。私にはその勇気がない。自分を、他人を、見透かす勇気が私にはない。
何もせずに川底に籠もっていたら、23歳になった。
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