「カランコエの花」を見て

アマプラの映画感想記録第4弾。
今回見たのはこちら。

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2018年公開の日本映画で、監督は中川駿。
39分という非常に短い映画ながら内容が濃く、強い喪失感を覚えるバッドエンドの映画。

ちょうどブレイクして話題になっている頃の今田美桜が主演を務め、役名は一ノ瀬月乃。
仲間からはニックネーム「ツキ」と呼ばれている。

明るくて笑顔を絶やさず、少し抜けているところがあるツキ。
今作は、そんなツキの魅力、優しさが仇となってしまう非常に哀しい物語。

ツキの所属する高2のクラスでは、ある日英語の先生がお休みで自習となり、養護教諭が自習監督を務める。
その時間、養護教諭の小嶋花絵(山上綾加)は、突如LGBTについての授業を始める。
「異常でも病気でも何でもない」
ハナちゃんと生徒から親しまれるその先生は、いつになく熱のこもった口調で訴える。

その日、自習となった他のクラスではどうやらその授業をしていないらしい。
自分のクラスでだけその授業をしたことにより、「うちのクラスにLGBTがいるんじゃね?」という噂がクラスの間に広まり、当事者探しが始まってしまう。

ある日、ツキの吹奏楽部仲間の葛城沙奈(長瀬千裕)は、神妙な面持ちでツキに相談する。
準備室で2人っきりになったとき、沙奈はこらえきれずに泣きながら訴える。
「私、ハナちゃんが授業で言ってたLGBTが誰かわかっちゃったの。辛そうにしてるのを見てしまって。私、どうしていいかわからなくて…」
その当事者は、ツキや沙奈の仲良しグループに入っている小牧桜(有佐)だった。

その日、ツキは桜と遭遇し一緒に帰る。
ツキは努めて平静を装うが桜に「どうしたの?何かあったの?」と見透かされてしまう。
なんとか誤魔化して今まで通り接することを心掛けるツキ。
自転車を二人乗りして帰る2人。
桜はツキの肩にもたれかかり、後ろから抱き着く。
「どうしたのw」
私は、この時ツキは桜の好意に気づいてなかったんだと思う。
気づいていたら、こんな悲しい結末にはなっていなかっただろうから…。
別れ際、桜は意を決してツキを呼び留め「ツキちゃんにはちゃんと理解して欲しかったから…」
思いを伝えようとするが、沈黙に耐えきれずツキは笑顔で「どうしたのw 何かあった?」
この残酷な優しさの前に桜の思いは引っ込んでしまった。
別れた後、1人バスに乗った桜。
バスが揺れカメラのピントが合わない中少しずつ映し出されていく桜の泣き顔がホントに切なかった。

次の日、教室の黒板に「小牧桜はレズビアン」という落書きが。
当事者探しをしていたいじめっ子たちの仕業だと思ったツキは、「違うよ、桜は違う。桜はレズビアンじゃない」とクラスメイトに訴えかけ落書きを消す。
またしてもあまりにも残酷な優しさに心が締め付けられた。
教室を飛び出す桜。
「あれ、黒板に書いたの私なんだ」
翌日から桜は学校に来なくなった。

あまりにも辛い幕切れに言葉を失った。
最後、ハナがLGBTについての授業をする数日前の保健室のシーンに切り替わる。
桜がハナにツキの魅力を語り楽しそうに恋愛相談する姿。
あの時、ハナがLGBTについての授業をしなかったら…。
あの時、ツキが桜の好意に気づいていれば…。
当事者ではなく、周囲の人たちの視点、かかわり方について深く考えさせられた。
周囲の人たちの視点、接し方によって当事者は如何様にも翻弄されてしまうのだなと感じた。

バッドエンドだけど、何度も見たい、尊い感情がたくさん詰まった映画だと思った。

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