「青い春」を見て

アマプラ映画感想日記第8弾。
今回見たのはこちら。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B078N6YZ22/ref=atv_dp_share_cu_r

豊田利晃監督による2002年公開の日本映画。
「ラスト10分に全てかけている」という風に感じました。

いわゆる不良映画で、目を覆いたくなるようなかなり過激な展開もあり、正直途中まで見たのを後悔していました。
登場人物にも全く共感できませんでした。
主人公の九條(松田龍平)はすべてにおいて冷めた目で見ているような落ち着いた子で、他の不良メンバーとは一線を画すような雰囲気がありました。
学校の屋上で策の外に立ち、手を放して何回手を叩けるか、という命懸けのチキンレースを行い、最も多かった者がグループの番長になれるという勝負に九條が勝ち、九條はダルそうにあまり乗り気じゃないようすで周りを仕切るようになった。
九條の性格なら身を引き、周りも「なんだよこの番長、つまんな」ってなって更正していくのかなあ、と期待して見ていましたが、九條はちゃんと冷酷無比な弱いものいじめ根性は残っていて。
自分で手を下さない分、余計にタチが悪い。

しかし、仲間の雪男(高岡蒼佑)が同級生に手を下して警察に連れていかれたり、それぞれに変化が見られる中で、九條の心境にも変化が見られる。
それを明確に示すものはないけれど、花田先生(マメ山田)とのやり取りの中でそれを伺い知ることができます。
「咲かない花もあるんじゃないですか?」というという九條の問いに対して、花田先生は「花は咲くものです。枯れるものじゃない。私はそう思うことにしてます。それは大切なことです。」と答えます。
この言葉がとても印象に残っていて、九條にも響いたんじゃないかなと思います。
九條へ生意気な態度をとった人に対して制裁の暴力をふるう手下から離れ、「なんでもかんでも俺に頼るな」と不良行為に対して距離を置くようになり、ノートを開いて授業を聴くようにもなり…。

そんな九條の姿を快く思わないのが、小学校時代からのツレである青木(新井浩文)。
周りを見て自分の将来に対する不安も強まってイライラも募り、九條にも強く当たるようになります。
「おめえにできねえことしてやるよ!!」
と言い放ち、一人屋上へ。
そこからラスト10分の展開につながります。
屋上から外を見つめる青木、夜が更け、朝になる周りの景色の描写。
憂いを帯びたBGMがすごく刺さります。
そして翌朝、主題歌のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT「ドロップ」とともに青木に駆け出す九條の展開は鳥肌モノです。
本当に緊迫感があり、心を奪われた、強烈なラストでした。
このシーンで九條とともに花田先生も駆け出していくのが良いなあと思います。
この学校、周りの大人は何やってんだよ、って思う場面も多々ありましたが、花田先生はちゃんと不良生徒たちに向き合っていたように思います。
甘く見える部分もありますが、日頃からよく観察していたからこそ、青木が何をしようとしているかに気づき、駆け出すことが出来たのだと思います。

積極的に関わって褒め、心をほぐすこと、本気でぶつかって厳しく指導すること、も大事だと思うんですが、「観察する」ことの大切さを感じました。
花田先生、本当に良いキャラしていると思いました。

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