スウィング_キッズ

『スウィング・キッズ』青春ダンスムービーと見せかけた戦争人間ドラマの傑作 公開中

スウィング・キッズ+

英題:Swing Kids ★★★★☆4.8

『神と共に』二部作で涙を誘ったド・ギョンスこと「EXO」のD.O.(ディオ)をはじめ、『エクストリーム・ジョブ』のオ・ジョンセや、新星パク・ヘスらがタップ・ダンスで魅了! しかし、そこは朝鮮戦争下、最大の捕虜施設・巨済島捕虜収容所。

D.O.が演じるのは捕虜になった北側の兵士であり、収容所には戦後に北に送還されたくない者(反共)がおり、そんな彼らやアメリカ側を敵対視する(親共)に中国の共産軍なども入り乱れ、まさに一触即発状態。

収容所内で血なまぐさい事件も多発する中、対外的なイメージアップを図るべく新任のアメリカ人所長は下士官ジャクソンに、捕虜たちによるタップダンス・チームを結成させ、ダンス公演を行おうとします。

しかし、そう上手くは事は運ばないのです。


メガホンをとったのは、号泣必至映画『サニー 永遠の仲間たち』を手掛けたカン・ヒョンチョル監督

1951年、休戦までまだ2年近くある朝鮮戦争を背景にして、個性豊かな寄せ集めのメンバーがタップダンスのために、人種やイデオロギーを超えたチーム力で熱い青春ダンスムービーを見せてくれるのかと思いきや

圧巻の感動のステージ! のままで幕は下りません。絶対に。

そこは戦時下、しかも大国による資本主義と共産主義との代理戦争のさなか。

独特のセンスを持つ振付師の中国人、日本統治下を経験し4カ国語を話せる若き女性、家族と逃げる途中に巻き込まれた韓国の民間人、とてつもないダンスの才能の持ち主の北側のトラブルメイカー、
そして彼らしか友達がいない黒人兵士

差別をされ、抑圧を受けてきたあらゆる人々がこのチームに集い、

自由のためのタップダンスで

「ファッキン・イデオロギー」、イデオロギーなんてクソだ!というメッセージを贈ります。


その巨大な収容所(しかもセット!)を躍動感たっぷりに駆け回るD.O.をはじめ、キャストたちのダンスはスクリーンで必見であり、

『汚れた血』も、『フランシス・ハ』もそうですが、思わず疾走したくなるデヴィット・ボウイ「Modern Love」に乗ってD.O.とパク・ヘスが踊り、駆けるシーンは、爽快さの後に彼らが抜け出せない苦い現実をこれでもかと突きつけます。

また、米軍下士官ジャクソンを演じたジャレッド・グライムスは、ブロードウェイで最優秀ダンサーに贈られるアステア賞を受賞し、オバマ前大統領の前でも踊ったこともあるというプロ中のプロ。

そんな彼と1対1のダンス対決でも引けを取らないD.O.も、ランクの違いを見せつけます。彼はアイドル俳優ではけっしてないのです。

青春ダンスムービーとしても、戦争映画としても、舌を巻くしかない傑作。アカデミー賞4冠の『パラサイト 半地下の家族』や国内動員記録を塗り変えた『エクストリーム・ジョブ』などで改めて注目を集めている韓国映画のすごさを、今作でも目の当たりにできるかと思います。

▼こちらメイキング



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