『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』“反抗”という自由意思 2/7(金)~公開中
原題:Disobedience ★★★★☆
『ナイロビの蜂』でオスカーを獲得し、『女王陛下のお気に入り』でもノミネートされたレイチェル・ワイズが主演&製作し、『ミーン・ガールズ』『きみに読む物語』から変身を遂げて『スポットライト 世紀のスクープ』でオスカーにノミネートされたレイチェル・マクアダムスと共演。
このWレイチェルはもちろん、『ジュラシック・パークIII』で卵を盗んじゃった若造にして、近年ではエル・ファニング『ネオン・デーモン』などのねちっこいイメージが強かったアレッサンドロ・ニヴォラがすばらしかった。
厳しい超正統派ユダヤ教コミュニティにあって、言葉にならない感情があふれ出す、まさに解放といえる情愛シーンばかりが注目されがちですが(確かに重要です)、この3人が演じる、愛する人と自分自身のための選択がテーマ。
原作は、マーガレット・アトウッド「侍女の物語」の逆バージョンといわれ、女性優位社会を描いた「パワー」作家にして、フェミニズム文学の新たな旗手といわれるナオミ・オルダーマンの自伝的デビュー作。
「パワー」もドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」のリード・モラーノ監督らによってAmazonでドラマ化されることが決まっていて注目を集めているところですが、本作ではレイチェル・ワイズが原作に惚れ込んで製作に名をあげ、『グロリアの青春』『ナチュラル・ウーマン』のセバスティアン・レリオが監督を務めました。
エンドロールにも使用されている、キーとなる曲を噛み締めながら帰宅。
劇中、空っぽになったロニート(ワイズ)の実家でラジオからふいに流れたその曲は、1989年リリースのもの。おそらく2人にとっては思い出の曲であり、エスティ(マクアダムス)が口ずさむところも印象的。
しかし、10代のころに、ロニートの父であるラビに関係を知られて引き裂かれ、一度離れた2人は、10数年も会っていなかったことになります。
愛し合っているのだけれど…、家族やコミュニティ、そして信仰を捨てて故郷を去ってNYにいるロニートと、あつい信仰心があり、もうひとりの親友と故郷に留まるしかなかったエスティという対照的な2人が過ごしてきた、その月日はまるで異なります。
曲の歌詞を聴きながら、2人はこれからもそうして生きていくのだろうと推察、まるで
今泉力哉監督の『his』のように、好きだけではどうしようもない愛のその先のごとく。
冒頭、倒れる直前に語った父ラビの説教が、作品の本質であり、終盤になって沁みてくるので、初めから全感覚を研ぎ澄まして見入ってほしいです。
超正統派ユダヤ教についても
・既婚女性は生来の髪を見せてはならない(カツラをかぶる)
・既婚者と異性が肌を触れ合ってはならない(ハグもNG) など多少は知っておくと入り込みやすいかと。
あとは、日本のコミュニティとそうそう変わらないと私は思います。
が
個人的には、ラストは『キャロル』の選択が好み。
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