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日本郵政の今後を考える(5)かんぽ生命をどうするか?生命保険事業の仕組みを理解しよう


郵便局ネットワークが必要なのは分かります。では、かんぽ生命も必要なの?という声(意見)もありそうですね。

今、かんぽ生命は不適切販売問題もあり、2020年4月15日現在においても、勧誘による販売再開が見込めない状況です(保険の販売そのものが止められているわけではないので、顧客が希望すれば契約をすることは可能である)。

色々と問題視されるかんぽ生命ですが、ここからは、ではかんぽ生命の存在意義ってなに?

ということを考えてみたいと思います。まず、生命保険の事業特性から確認してみましょう。

1.保険事業の特性

まず気を付けてみなければならないのは、生命保険事業の特性です。

保険会社は通常の企業(特に製造業)とは全く異なる業態を取っていることに注意しなければなりません。

ビジネスの主目的を、利益(キャッシュ・フロー)の獲得にあるとするならば、保険業は一般の企業とその目的は変わりません。

しかしながら、利益の源泉は保険業と一般の企業では全く異なることに注意が必要です。

つまり、保険契約を取ってくること、

それが必要になります。

保険契約をとる、保険商品を販売することは、保険契約に伴う義務を履行すること、になります。

つまり、義務(負債)が発生します。

一般の企業の利益の源泉は資産にあります。

企業は資産を購入し、それを有効に活用することで利益を獲得します。

製造業であれば、生産手段のための工場、組み立てのための部品、機械が必要になりますね。そうした資産を有効に活用することで、利益を得て、その事業規模を拡大していきます。

一方、保険業のビジネスモデルでは、利益の源泉は資産ではなく、反対の負債にあります。

一般の企業(製造業・サービス業):

・資産購入⇒それを生かして製造、製品販売(サービス業の場合、サービス提供)⇒現金回収

保険会社の場合

・申込書に署名・捺印⇒結保険引受⇒保険料を受け取り続け⇒何もなければ契約終了(契約に基づいて給付、もしくは掛け捨てであればそのまま終了)

となります。


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貯蓄型の保険でなければ、保険事故(事象)が発生しなければ保険金は支払われません。

一方で、病気にかかったとき、自己を起こしたとき、つまり、契約に当てはまるようなことが起きた時、保険金が給付されるます。

2.保険会社の利益とは?

保険業では保険契約を引き受けた時点で、保険負債(保険契約準備金)という保険会社が負う義務が発生します。そして、その対価として保険料を受け取る。受け取った保険料は、保険会社が請け負ったリスクを保障するために積み立てられ、資産運用されます。


保険負債のイメージ図

最終的に保険契約終了時にキャッシュ・アウト(支払が発生しなかった)しなかった部分が、保険会社の利益(取り分)として確定することになります。

もう一つは、保険の新規契約の獲得にはお金がかかるということですね。

こちらの記事でかんぽ生命の個人保険における新規契約数が減っていることが示されています。それと同時に以下の様な言及も。

2019年9月期の中間決算期において、純利益は5.8%(128億円)増の2365億円。営業自粛でかんぽの商品販売を担う日本郵便の人件費が減ったためだ。

新規契約を取ると、それに見合った事務手数料がいります。いわゆる、新契約費です。さらに保険契約準備金を保険会社は積み立てる必要があります。

保険契約締結⇒すぐに保険事故発生!

でも保険会社は保険金を支払わないといけないですから。

ですから新規で保険契約を取ってきたとしても、その保険契約がプラスになるまではそれなりの期間が必要です。

生命保険契約は中長期で見なければならない、

といわれるのはこのためです。

3.生命保険会社の決算はあてになるの?

毎期の決算は報告されていますが、短期での利益、損失は実はあまり意味がありません。

いや、むしろ保険を売らない方が、短期的には収益を獲得できます。

なぜならば、既契約の満期に伴い、利益が順次発生するからです。

最初に損をして、後から得(利益)が発生する。

これが保険事業の特性です。

損害保険会社(損害保険契約)も同様ですが、短期の契約が多いので、生命保険のように中長期で資金回収という発想はありません。

損害保険会社においては、突発的な天災による損失が一番会社に損害を与えます。

生命保険業は、中長期で堅実にやるということが求められています。

損害保険と生命保険の営業の方のキャラクターは全く異なるな・・・と思ったことありませんか?

事業の特性が営業のスタイルにも影響しますね。

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