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仮説⇔検証の往復こそが仮説思考:仮説思考×事業モデルの企業分析法

仮説って自分が思いたいことを思ってその証拠を探せばいいんですよね?

こんな質問が来ました。

これたまに(よく)ありますよね。

自分が実証したいことのデータを集めて、都合の悪い情報は入れないで実証したりすること(もしくは限りなくその影響を無視して行うこと)。

理論は単純化されていますが、現実は複雑です。

つまり複雑な現実を映しだすためには、他の情報ではなく注目したい情報にフォーカスを当てる、ということはあり得ます。

ただ、他の情報の影響を全く無視してはいけません。

ですから実証の世界でもコントロール変数というのを入れるわけです。

また他の要因を考慮しない場合でも、他の影響がありうることも記述するわけです。

仮説を立て、そのあと検証しても多くの場合、思い通りの結果が出てきません。

その際に、なぜなのか?ということを考える思考こそが大事です。

例えば、

A社は高付加価値製品・サービスを提供しているので、利益率が高いに違いない、と思い数値をみてみると・・・

⇒実は利益率は他社と変わらなかった。

⇒その理由を調べてみると・・・

販管費に多くのお金を費やしていたため、売上原価については確かに他社よりも低いものの、利益率については違いがなかった

⇒では次に、どんな販管費にお金を費やすことで付加価値を上げているのかをみてみよう・・・

というように進んでいきます。

これを何も考えず数値だけでみるとこうなります。

『A社の利益率について調べていると他社と利益率が変わらなかった。』

終わりとなってしまいます。

つまり、仮説、自分なりの見立てを脳内で作り出して数値をみないと単に数値をみているだけとなります。

仮説を立てる上で重要になってくるのは、企業のビジネスモデルを考えることです。

つまり、どのような経路でお金を稼いでいるのか?です

損益計算書をみれば分かるように、売上収益―コスト=儲け

になります。

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バリューチェーンを意識する、ことです。営利企業を名乗っている以上は必ず何らかの経路で製品・サービスに付加価値をのせて取引しています

たとえば、スーパーマーケットは、多数の品ぞろえと量が勝負です。個人では調達に手間がかかる製品を、一括して大量に仕入れることで価格を安く、購入者に販売させることを可能にします。

品揃えで勝負するブティックもありますよね?

この人の目利きで選んだ服を買いたい!

そうしたお店ありませんか?

それはお店の店員さんの目利きにより選ばれた服が付加価値を生んでいるわけです。

自動車もそうですね。一つ一つのパーツでは価値を生みません。ですが自動車工場で組み合わせることで初めて価値を生みます。同じことが家電でもいえると思います。

事業モデルを通じて企業は儲けを生みます。

この構造自体は全ての企業で同じなのですが、

問題は、儲けが持続するかどうかにあります。

企業によってはこの儲けの仕組みが強靭か脆弱か、で企業が埋めるキャッシュ(儲け)が決まるといってもよいでしょう。

内的な環境(企業の組織、経営方針)だけでなく、外的な環境(市場環境、ライバル企業)によっても影響されます。

内的な環境についてはある程度有価証券報告書で分かりますが、外的な環境については中々知ることが出来ません。

その際に活用したいのが業界地図ですね。


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外的な環境を自力で調べるのは難しいです。なので、その場合にはこちらのテキストを活用しましょう。

業界地図にライバル企業も含めて全ての情報が網羅されているわけではないですが、その業界が、業界全体でどのような立ち位置(今後発展しそうか?競争環境は激しい、それとも寡占化が進んでいる?)を知るのに役立ちます。

最近思うことは、ネットの情報も役立ちますが、情報が多過ぎてある程度の情報が網羅的に、かつ一覧性のある形でまとめてくれているということが本当に貴重である、と感じています。

最後にまとめです。

・仮説思考とは、自分の思い込みを検証するのではなく、自分の仮説⇔検証の往復である、ということです。

・仮説思考×事業モデルでは、事業モデルの構造を知る、つまりどのような経路で企業が儲けているかを知ることが重要

・事業モデルの強度を考察する際には、企業が属している業界が、業界全体でどのような立ち位置(今後発展しそうか?競争環境は激しい、それとも寡占化が進んでいる?)を業界地図で読み取ることが重要

というところでしょう。

初学者において事業モデルの詳細な分析をするのは難しいかもしれません。その場合には、おおよそこのような経路で儲けている。時系列で売上、収益をみてみて、安定しており、事業モデルは強そう(ある程度の強度をもっている)のように数値からまずは推察してみるということでよいでしょう。

ただし、注意しなければならないのは、過去の事業モデルの安定性が将来の安定性を約束しているわけではない、ということです。

企業分析で重要なのは将来のことです。

市場環境が激変すれば、過去の事業モデルによりもたらされた安定性は消え去ってしまいます。そのことは新型コロナ禍での事業構造の変化で明らかになったことではないでしょうか?



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