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自分で自分の可能性を狭めない:主体的なキャリア形成のために

1.安定の捉え方を考える

私が行っている会計学総論で学生にやってもらった業界分析レポートでは、

「あなたが就職したいとするとどんな業界」

というお題で書いてもらい、企業の分析をしてもらいました。

8割、9割の学生が、「安定性」を重視すると回答していました。

聞き方も悪かったかなとは思っています。

安定性とは何か?

そうしたことももう少し考える機会を提供してもよかったかもしれません。

安定した業界

金融業界とか、大手企業などを思い浮かべるでしょうか?

私が学生だったときは、東証一部の有名企業に就職できたら安泰だ、とか。

良い大学に入って、良い企業に就職するのが王道

なんて言われた時期があります。

この考え方は今でもある程度支配的でありそうです。

勤務している大学(静岡県立大学)は、公立大学ですから、公務員になりたい、もしくは地元の有力企業もしくは金融機関(地銀)に就職したいというのが王道のようです。

これはこれで良いことだと思います。

業態は変化していくでしょうが、この3~5年ぐらいのスパンでみた場合に、まずは地元の有力企業、金融機関、もしくは公務員でスタートしていくというのは悪い選択ではないかもしれません。

給料が安定しているから、です。

給料が安定していれば、次の一手を打ちやすくなります。

2.10年のスパンで考えてみる

5年のスパンでみた場合は、これが答えですが、10年のスパンで考えた場合、それでいいのか?

ということはあります。

積極的な選択肢として選んだ就職先なのか。

消極的な選択肢として選んだのか。

これによって、自分の心持ちは変わってきます。

「キャリア」

就職するまでがゴールではなく、就職してからがむしろ始まりです。

就職すると何が求められるでしょうか?

・業種によってはノルマが課せられます。*ノルマがない業種であっても何らかの実績が求められます。

・時間が拘束され自由がなくなり、言われたことについて従わなければなりません。

ノルマは、企業、もしくはその部局が求めているKPI(重要な経営指標)に関連付けた者が多いでしょう。たとえば、金融機関であれば親戚縁者から口座を登録をかき集める(通帳、口座を作ってもらう)というのはよく聞く話ですよね。

銀行においては、金融機関の預金残高を増やすことというのが経営指標に組み込まれているからに他なりません。

公務員だったらノルマないでしょう?

と思う人、そうでもないです。

警察官の方々が点数を稼いだり(交通違反の取締)、国税庁の職員が脱税や所得漏れの指摘をしたりは、多くの場合ノルマが課せられています。

ノルマは悪いことではありません。限られたパイ(範囲)の中での取り合いは、どの業種でも多かれ少なかれ存在するものですし、ノルマがなければ人は積極的に動かない側面があるからです。

特に衰退業界、今後の伸びしろがあまり見込めない業種(例えば、銀行、保険、外食産業などはそうでしょう)においては、厳しいノルマを課す傾向にあったりします。

3.衰退業界も面白い?

衰退業界も座しているばかりではありません。

衰退業界だからこそ、他の業界と連携し、別の手段で儲けを得ることを考える知恵を絞るということが行われていたりします。

静岡銀行とマネージャーフォワードとの家計簿連携アプリもありますね。

衰退業界に就職した学生たちは、多くの面白い経験が出来るかもしれません。つまり、安定していると考えられていた業界の方が今後は先が読めなくなってくるとも言えます。

例えば、銀行は、22年前、保険商品販売や投資信託の解禁で、窓口で取り扱う業務が多くなりました。いわゆる銀行窓販の解禁です。

これに伴い行員には、金融関係の知識、ファイナンシャルプランナー系の資格取得が求められるようになり、販売に関わる資格取得も求められるようになりました。

一昔前は、簿記が出来た方が銀行の就職が有利と思われていたかもしれませんが、むしろ、こうしたファイナンシャルプランナー系の資格の方が有利かもしれません。

また直近による変化は、マイナス金利の導入でしょう。国内の運用に限界が生じ、外貨建てで資産を保有する率も高くなりました。

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上記は銀行ではなく、第一生命の例です。運用の4分の1以上、10兆円もの外国証券で運用されています。つまり外国の株式、債券を売り買いする機会がとても増えたわけです。地方の銀行であってもこれは多かれ少なかれそうですから、就職したら、外国の運用も意識しておく必要がありそうですね。

利率が高そうな外国債券も為替のリスクを抱えていますし、また投資リスクの高い銘柄もあります。こうした点に注意して運用先を選ぶ必要がありそうです。

この10年、20年は、金融機関の業態多様化をもたらしました。では、今後10年、20年はどうなるでしょう。これは私の予測ですが、地方創生を担う機関としての業務が託されることになるでしょう。

人も資源も足りない中で、リソースを集約していくことが求められているはずです。つまり、地方の金融機関の大規模な再編は避けられないと考えています。再編の時に、大幅な人員カットが行われる可能性もありますが、その中でも、この難局に立ち向かえるような人材は多くの活躍の場が与えられることになり、チャンスであるとも言えます。

4.成長業界は面白いが、儲け話に注意が必要

一方で成長業界はどうでしょうか?DX、デジタルトランスフォーメーションが進む中で、ICT系の業界にお金が流れ込んでいくということは変わらないでしょう。また、限られたリソースを活かすためのシァリングサービスを提供する企業も伸びていくことが期待されます。

こちらは、日本の新興市場であるジャスダックに上場する銘柄の平均株価である日経ジャスダック平均株価(日経ジャスダック平均)です。

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これは平均値で、今は日経平均も上がっていますから比較は難しいかもしれませんが、2020年になって反転して伸びていることが分かります。新興企業の成長への期待が高まっています。

成長業界は、衰退業界とは異なり、「新しいこと」が大量に流れ込んできます。これもまた非常に面白い経験になるでしょう。従来の慣例、ルールを打ち破ろうとしている企業に就職すれば、まさに海賊団の一員になったような気持ちになるかもしれません。

給料は保証されないかもしれませんが、それに勝る経験を得ることが出来ます。

今、ベンチャー企業をおこしている創業者の多くが、元は別の有力なベンチャー企業で働いていた、というケースはとても多いです。こうした人たちの多くがそこで得たノウハウを活かし創業したいわけです。

ベンチャー企業の経営者の経歴は多種多様です。多くの人が一足飛びに創業したというケースよりも、ベンチャー企業で働いた経験に基づいて自分で事業を起こしている人が多いと思われます(そうでないケースもあります)。

ただ、成長業界はリスクを伴うのも事実です。時に詐欺の片棒を担いでしまったり(儲かる業界でのあるあるです)、騙されたり、することもあるのもこの業界の特徴です。お金のあるところ、悪い人が集まってくる。

これもまた法則ですね。

また成長業界は、面白い経験は出来ると思いますが、自分の時間は取れないかもしれません。成長業界においても人手不足というのは変わらないので、多忙で忙しい働き方が求められるかもしれません。この辺りは、入ってみなければ分かりませんね。

5.手堅い技術系の製造業や物流系企業

新興企業にばかり、目を奪われがちですが、地球温暖化への取り組みが加速していくことを考えると環境関連の機器を作っているところや、特殊な部品を作っている企業などは底堅く、かつ成長が期待できそうです。

中小企業においても独創的な部品、製品を作っている企業は多くあります。文系職での就職は少なそうと思われますが、ICT系の技術を身に着ければ、就職のチャンスはありますし、また営業職、経理部門での募集を行っていることもあります。

また今後、EC(電子商取引)がますます拡大することを考えると倉庫・物流業界は一定の手堅さはあります。ロジスティクスも色々な点で新しい技術が取り入れられて進化していくでしょうから、面白い仕事ができそうですね。

ロジスティクス関係の仕事は大変かもしれませんが、人にものを届ける喜び、縁の下の力持ちとしてのやりがいは、また格別かもしれませんね。

また最初に紹介した技術系の企業も面白いと思います。モノづくり、に携われる喜びは、金銭的な価値では変えられないものがあります。

6.自分のキャリアを主体的に考えてみる

で、何が正解なんですか?

と言われそうなので、お答えすると、

「答えはありません」

が正解になります。

マインドセットが大事です。つまり、「自分のキャリアを主体的に考える」こと、です。

就職も自分のキャリアのプロセスにすぎません。

そう考えると何をしたいのか?

を積極的に考えておかなければ、受け身でキャリア選択をして、運に天を任せるような人生の選択をしなければなりません。

キャリアを考える際には、自分の可能性は制限しないほうがいいです。

「あなたが魔法の杖を持っていたとして、叶えたいキャリア像はなんですか?」

ということに答えるのが一番よいでしょう。

あなたが心の底から望むことは何ですか?

それをはっきりせずして前に進むことは出来ません。

自分で自分の可能性を狭めないようにしてください。

特に若い時においては、無限大に可能性がある。

そう思って取り組んでいくことが大事です。

もちろん、実際には能力、才能、そして運によって限定されます。

ですが、多くのことは実現できる可能性があります。

たとえば、億万長者になりたい、宝くじで一等賞を取りたい、ノーベル賞を取りたい、というのは難しくても、

・公認会計士試験に合格して会計プロフェッションになりたい。

・海外留学をして、海外支援の仕事をしたい。

・起業をして、地域貢献を自分の手でしたい。

こうしたことは十分可能です。

こうした人に共通しているのは、失敗を恐れない勇気と行動力の2つを兼ね添えていることです。

企業に就職するのも、自分で資格を取るのも、起業するのも、キャリアの一つであり、プロセスにすぎません。

自分が何を成し遂げていきたいのか?

そのイメージをもって、貴方のキャリアを考えていけば、おのずと道は開けてくる。

そのように思います。

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