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企業評価は、企業の潜在的な富を評価する手段である。

利益剰余金は過去に企業が稼いだ利益の蓄積により形成されています。

稼いだ利益の蓄積とはいえ、蓄えられた剰余金(資本)が全て現金などの流動性の高い資産で保有されているとは限らないため、利益剰余金(内部留保)に対して課税する、ということは、場合によっては企業が資産を売却して現金を用意しなければならない状況を招きかねません(相続の際に税金を払いきれずに、資産を売却するのと同じ理屈ですね)。

税金の支払いは「現金」で行わなければなりませんからね。

では、利益剰余金が、企業の富を表しているといえるでしょうか?

それは半分当たっていて、半分は違う気がします。

利益剰余金が積みあがっている、ということはそれだけ「収益―費用」で見た場合に、過去の企業の生み出した利益の蓄積がそれだけ大きかったということを意味します。

なので、課税するかどうかはおいておいて、利益剰余金(内部留保)の大きい企業が富をたくさん持っている企業、と言えなくもありません。

しかしながら、富の大きさは必ずしも資本だけで規定されません。

事業の評価においては、事業そのものの価値が、潜在的な富を保有していることもあります。

いわゆるブランド価値ですね。

会計においては測定可能な(客観性が担保される)範囲で資産の含み益が計上されることがあります(逆に含み損も計上されます)。金融商品などがこれに該当します。当然ですが、含み損益は計上された時点で「含み損益」ではなくなります。その価値が資産価格に織り込まれていますから。

一方で、事業そのものを構成する資産や企業が持つであろう事業自体の価値(無形のブランド価値)が持つ含み益は計上されていません。

例えば、ソニーの持つ事業の価値が、10兆円だとしても、その額が資産計上されたりはしません。

仮に計上されるとなると以下のような仕訳になると思います。

(借方)ブランド資産10兆円 (貸方)資本金 10兆円

有価証券報告書を通じたファンダメンタル分析は、評価されていないブランド価値(事業価値)をどのように見極め、評価するかに依拠しています。

ただし、厄介なことにこのブランド価値は、多くの要素で構成されているということです。

ブランド資産(事業価値)=企業が保有している固定資産(オンバランスされている)×企業が持つノウハウ×企業戦略×マーケティング×組織、などに依拠するでしょう。

なので、容易に見積もれるわけではない、ということです。

企業評価とは企業の持つ潜在的な富を評価するための手段である、といえるかもしれませんね。

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