見出し画像

雇用と退職金を考えてみる(2)内定取り消しは雇用の開始?

諸事情ありまして、少し間が空きました(汗)

まずこのことを考える上で、雇用っていつから始まっているの?

という事から、考えていきます。

というのも、そもそも雇用が開始されないと、退職金は発生しませんよね?

退職金は、賃金後払、功労報酬、生活保障、色々な説があるということは申し上げてきました。

共通しているのは、「勤務」の事由(理由)として給付されるものである。

ことはいかなる説を採用しても共通しています。

「勤務が始まらないと退職金は発生しない」ということです。

内定からどういった権利関係が従業員と発生しているのか?

を確認していきます。

1. 内定に伴う権利

いわゆる内定の話ですね。

採用内定取消はどこまで可能か?


新卒一括採用の場合、大学4年次の春以降に採用決定の通知を内々定あるいは内定として口頭等で受け、秋ごろに文書による正式な採用内定通知がなされ、入社に関する誓約書などを提出するといった一連のプロセスをたどるのが通常であり、「始期付解約権留保付労働契約」であると考えることができる。

つまり、労働契約とは

「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約」

内定の通知をもってこの契約が成立したものと考えられます。

しかしながら、実際に就労するのは卒業後の4月。

学校を卒業することが要件になっている場合が多いため、卒業できなかった場合は、内定取り消されます。

契約している従業員の瑕疵ではなく、会社側から内定を一方的に取り消せるものなんでしょうか?

2. 内定取消は可能か?

内定から労使間における労働契約が始まっている、と解釈すれば、内定取消は、労働契約の解約にあたります。

労働契約法16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」

とあります。

客観性、社会通念、この2つがキーワードになります。


内定を取り消すことができるケースをみてみましょう。

①採用内定者が学校を卒業できなかった場合
②採用内定者が傷病により働くことができなくなった場合
③採用内定者が罪を犯した場合
④採用内定者が重大な虚偽の申告をしていた場合
⑤経営が困難になり、整理解雇が必要になった場合

①から④は従業員(内定をうけた人)の瑕疵ですが、⑤に注目する必要があります。リーマンショック、3.11、いずれも⑤に該当する話でした。どういった場合に解雇が認められうるのでしょうか?

整理解雇の4要件をみてみましょう。

整理解雇の4要件(いずれが欠けても解雇権の濫用となり、無効である

1 人員整理の必要性:余剰人員の整理解雇を行うには、相当の経営上の必要性が認められなければならない。
 一般的に、企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性が認められる場合は、もちろんであるが、そのような状態に至らないまでも、企業が客観的に高度の経営危機下にある場合、人員整理の必要性は認められる傾向にある。
 人員整理は基本的に、労働者に特段の責められるべき理由がないのに、使用者の都合により一方的になされるものであることから、必要性の判断には慎重を期すべきであるとするものが多いが、判例によっては、企業の合理的運営上やむを得ない必要性があれば足りるとして、経営裁量を広く認めるものもある。
2 解雇回避努力義務の履行  期間の定めのない雇用契約においては、解雇は最後の選択手段であることを要求される。
 役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がなされ、整理解雇に着手することがやむを得ないと判断される必要がある。
 この場合の経営努力をどの程度まで求めるかで、若干、判例の傾向は分かれる。

3 被解雇者選定の合理性  まず人選基準が合理的であり、あわせて、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。

4 手続の妥当性  整理解雇に当たって、手続の妥当性が非常に重視されている。
 説明・協議、納得を得るための手順を踏んでいない整理解雇は、他の要件を満たす場合であっても無効とされるケースも多い。


3. 安易に同意しないことが大事。

内定は雇用であり、内定取り消しが解雇と同じ、と捉えておくことがまず大事です。

内定先から取消の通知を受けても安易に同意しない、

が基本です。

整理解雇の四要件を満たした、他の手段がなくやむを得ず内定取り消しを行う場合に、初めて認められます。

会社は採用内定取り消しの対象となった学生の就職先の確保について最大限の努力を行わなければならない、とされています。

場合によっては、損害賠償を請求するという権利も雇用されている側にある、ということを認識して、弱気にならないことが重要ですね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?