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シナリオ分析 VS 構想力

将来を予測することは意味があるのか?

山口周「ニュータイプの時代」ダイヤモンド社

「未来予測」は原理的に不可能

であるとし、「シナリオプランニング」の意義を問うています。


1.シナリオプランニングは無意味か?


ただ、シナリオプランニングが全く無意味か?といえばそうではないと思われます。

損害保険における積立の考えでも用いられるのですが、過去の経験測に基づいて積立が行われる。

結局、過去に起こったことでした判断が出来ないのはやむを得ないわけです。

ですから、ある程度、発生することが確実なもの地震・災害については、それに対する備えを行っておくことが必要なわけです。

防災に関する考え方もそうですよね。

矢守克也(2012)「「津波てんでんこ」の 4つの意味」『自然災害科学』46(2012)

https://www.jsnds.org/ssk/ssk_31_1_35.pdf


「津波てんでんこ」「命てんでんこ」を防災教訓として解釈すると、それぞれ「津波が来たら、取る物も取り敢えず、肉親にも構わずに、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろ」「自分の命は自分で守れ」になるという。

「釜石の奇跡」東日本大震災の時に、生存率99・8%と被害者が極めて少なかったのは、 この防災教育、つまり「備え」があったからです。

予測できることに対する事前の備えは決して無駄ではないです。

2.事業継続の観点からのシナリオプランニングの重要性

その後、感染拡大が大幅に進行し、経済へのダメージが大きく膨らんでいる。しかも、この危機はいくつもの面で前例がなく、情報も十分でない。今後の展開を予測することは、ほぼ不可能と言ってもよい。このような未経験の世界では、世界規模のリセッションが近づいていると指摘するだけでは、経済の先行きについて見えてくることはあまりない。せいぜい、マイナス成長になることを覚悟できるだけだ。 いま知りたいのは、「経済への打撃と、その後の景気回復の道筋はどのようなものになるか」「世界各国は、コロナ前の経済生産と経済成長率を取り戻せるのか」「コロナ危機は社会と経済のあり方を恒久的に変えるのか」といったことだ。

こちらではいくつかの経済回復に関するシナリオ「V字」「U字」「L字」が想定されています。

しかし、著者が認めているようにいかんせん予測するための不確実性が多すぎてまともに正確に予測するのは不可能だと感じています。

そもそも、シナリオプランニングは何のために行うのでしょうか?リスクマネジメントのため、ということであれば、私は一定の意義はあると思います。

というのもやはり一定の備えをするためには、どんな事象が起こりうるか?ということは想定しておかなければならない、からです。

そしてそれに対する備えをしておかなければならない。

いわゆる、BCP、BCMの重要性ですね。


【BCP】

事業の業務の中断・阻害に対応し、事業を復旧し、再開し、あらかじめ定められたレベルに回復するように組織を導く文書化された手順(ISO22301:2012より)

【BCM】

組織への潜在的な脅威、及びそれが顕在化した場合に引き起こされる可能性がある事業活動への影響を特定し、主要なステークホルダの利益、組織の評判、ブランド、及び価値創造の活動を保護する効果的な対応のための能力を備え、組織のレジリエンスを構築するための枠組みを提供する包括的なマネジメントプロセス。(ISO22301:2012より)

【BCMS】

マネジメントシステム全体の中で、事業継続の確立、導入、運用、監視、レビュー、維持及び改善を担う部分。(ISO22301:2012より)こうした定義を眺めると、いずれも組織の事業継続能力を高めるためのもの、という点で違いはありませんが、少しずつ意味が異なっていることだけは分かります。

BCP、BCM、BCMS、いずれも用語としての違いはありますが、事業継続に対する備え、であることは共通しています。

決算の場でも報告されていますが、トヨタは、「国内生産 300 万台体制の死守」を掲げています(今年度は330万台でした)。

この状況下においてもそれだけのメッセージを発信できる。その裏付けがあってのことだと思います。

そもそもトヨタのサプライチェーンは、東日本大震災を機に見直しが進められてきました。

結果的に今回の緊急事態宣言後との対応においても、かなり迅速に対応することに繋がってます。

4.シナリオプランニング+構想力の重要性

シナリオを作って備えておく、ことは必要ですが、今回のように予測が難しい事象に対して、一生懸命プラニングすることに時間を使うことはナンセンスだと思います。

プラス、必要なのは構想力になるでしょう。

つまり、

・この状況の中でもどうやったら付加価値の生むことを出来うるのか?

・そのために必要な仕組みは何か?

・既存のどういった枠組みが邪魔になっているのか?

といったことを考えていく必要があります。

こうした状況の中で、今までの持っているもと、培ってきたものを再構成することは大変ですし、容易ではありません。

ですが、今、まさにそれが求められているわけです。

(1)内省のための時間を確保する

(2)イエス/ノーで答えられない、能動的な問いを発する

(3)遊び心を持つ

(4)アイデアを共有する仕組みをつくる

(5)変則的で予想外のものに目を向ける

(6)実験を奨励する

   (7)希望を捨てない

上記の論文では想像力を生むための上記7つの大切なことが書かれています。

能天気!でもよくないですが、よりよい将来を再構築することは出来る。

その可能性は私たちの中にある!

そう思って過ごすことがまずは大事ですね。

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