コロナ禍において配当に拘ることの是非:配当はするけど、リストラもする?
株主は安定した配当を望んでいる
このことは間違いないです。
配当を減らされたら…ショック
ですよね。
というわけで、企業はなるべく配当を安定的に行おうとします。
しかしながら、これは果たして正しい行動なのでしょうか?
というのも、配当の原資は企業のキャッシュ、現金です。
配当は現金を配る行為です。
なので、稼げていない企業が配当するのはどうか?
となるわけです。
利益剰余金、つまり利益の蓄積から配当するのが筋というか通常なのですが、資本剰余金から配当することも可能です。
そもそも自社株買いや資本剰余金からの配当は、平成13年6月商法改正により可能になりました。
その当時、会計学者の大家である安藤先生が論稿を書かれています。
最近の商法の動向は,企業・株主志向であり,債権者保護が後退している。株主有限責任の会社の法制において,債権者保護を犠牲にして企業・株主志向を優先することは,平時では異常なことと考えざるを得ない。
新事業創出促進法(および要綱試案)には,最低資本金規制の特例(緩和)に対する債権者保護の担保措置として,配当等の規制があるとされる。しかし,これらの措置によって,最低資本金規制が果たすべき債権者保護機能
が回復されるわけではない。これらは最低資本金規制を代替・補完する担保措置といわれるが,その実質はいわば補修措置にすぎない。すなわち,最低資本金規制を満たしている会社とそれを満たしていない会社とを比べて,債権者がもっとも恐れる会社が破産する確率は後者の会社の方が高いことは避けられない。
商法改正に進んだ債権者保護から株主への流れ。昨今の動きをみていると短期的な株主志向が日本企業に高まっている気がします。
最近の倒産の事例を精査すべきと思いますが、倒産に至らないまでも極端な事業不振に陥った大塚家具などは多額の当期純損失を計上している中で配当を続けていました。
業績不振に陥っているケースでは、「洋服の青山」を運営するAOKIホールディングスは店舗を160点閉店し、希望退職者も募る旨公表しています。この事態は予想されたはずですが、2020年3月期において、同ホールディングスは配当を維持しています。*以下は有価証券報告書より抜粋したものです。
リストラするのに配当は維持するという姿勢はどうでしょうか?
実はこの点については、憂慮する声明が2020年4月に出ています。
機関投資家も新型コロナかで雇用不安が高まる中で、配当を無理に維持せず、雇用を維持するように、ということを求めています。
これは機関投資家たちも短期的に配当を得たとしてもそれは最終的なリターンには繋がらず、雇用、経済の安定が重要であり、配当を維持するよりは雇用を維持するように心がけてほしいという力強いメッセージです(本音は分かりませんが、建前としてはこうした声明が出されていることには注目すべきでしょう)。
こうした声明が出されているにも関わらず、なぜ企業は配当維持に固執するのでしょうか?
短期的な株主への利益への還元に固執することがかえって企業業績を悪化させることになるのではないか?この点を憂慮します。
そして日本郵政です。
減配をすれば、一時的に株価は下がる可能性があります。ただ、長期的にみれば、その利益をコロナ対策などに回せることを考えれば減配、もしくは配当をしない、という転換もありだったのではないでしょうか?
私自身は配当に関する専門・研究を行っていませんが、新型コロナ禍において無理に配当を維持しようとしている企業が散見されるのは残念なことです。
利益の裏付けのない配当にどれだけ意味があるのか?リストラを行ったうえで配当することの是非は?
もう一度問い直してみる必要があるのではないでしょうか?
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