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トヨタの株はなぜ上がり続けるのか?

トヨタ自動車の株価が上がり続けていますね(2021年6月16日現在)。この要因についてはどうみるべきでしょうか?トヨタ自動車の2021年3月期の業績と今後の業績予想を振り返ってみましょう。

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まず販売台数ですがコロナ禍の影響もあり、2020年3月期と比較すると14.6%減の7,646千台にとどまりました。業績については営業収益もそれに比例して下がっています。また営業利益も減となり減収減益であったことが分かります。この決算は、コロナ禍の緊急事態宣言により、4-5月の間、十分な生産が出来なかったことを考えると「良く立て直した」と評価されてよいと思います。

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営業利益は減少した一方で税引前利益、当期利益は増加しています。この要因としては営業外損益7,346億円の前期比3,408億円増加がけん引していることが分かります。

決算短信の該当部分を見てみると次のようになっています。

トヨタ

その他の金融収益、為替差損益<純額>が2021年3月期は増加していることが分かります。

この要因は、為替レートによるところが大きそうです。2020年3月期は1ドル109円だったのが、2021年3月期は1ドル106円となりました。つまり、円高ドル安が進行したわけです。この結果として為替差益が発生して収益が発生したと思われます。ただ、決算短信、決算発表の資料ではこの点については触れられていないのでまだ詳細は分かりません(その他の金融収益が、為替レートの変動により発生したものかが分からない)。ともあれ、円高ドル安は、トヨタ自動車にとっては追い風になったとはいえそうです。

とはいえ、トヨタ自動車の2021年3月期の業績が良かった、円高ドル安だから、ということが、株高の要因と直接結びつくとは思われません。というのも投資家は今後の業績の伸びに期待して株を購入するからです。

さて、そのことを踏まえて、今期の業績予想をみてみましょう。

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連結販売台数の見通しについては、前年度減少の反動もあるでしょうが、今期(2022年3月期)は13.8%増を予想しています。注目すべきは、北米エリアの伸びの予想でしょう。17.6%増の2,720千台と予想しています。また欧州も14.7%増の1,100千台の予想です。米欧などでワクチンの普及が進み経済再開に伴った販売増が織り込まれている予想になっています。

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となると当然、営業収益、営業利益も大幅増の増収増益の予想となります。2022年3月期の業績は期待できそうです。この予想は、為替により変動するでしょう。この予想では、為替レートは1ドル105円で推移することを想定していますが、これがどうなるかで利益は上振れ、下振れしそうです。

なおトヨタ自動車の株高ですが、自動車業界全体で株価の動きでのようです。

トヨタ自動車(7203)が続伸して連日で上場来高値を更新。新値追いの展開となっているほか、ホンダ(7267)、日産自動車(7201)、SUBARU(7270)、マツダ(7261)など自動車株が軒並み高。最大手のトヨタは午前9時43分時点で前日比76円(0.8%)高の9499円で推移している。米欧など新型コロナのワクチン普及が進む主要国を中心に、経済再開に伴って新車や中古車の需要が伸びており、今2022年3月期の業績上振れへの期待が高まっている。景気敏感株としての自動車株を見直す動きは世界的な潮流でもあり、1日の海外市場でも欧州のフォルクスワーゲン(2.6%高)やダイムラー(2.6%高)、アメリカでもフォード・モーター(1.9%高)などがそろって上昇。これを受けて本日の東京市場でも外国人投資家主体の買いが増えているもよう。日本の自動車各社は今期の業績予想を1ドル=105円、1ユーロ=125円程度の為替レートを前提に算定しており、足元の相場がそれよりもかなり円安方向に振れていることも収益押し上げ要因になるとみられている。

本田技研工業(ホンダ)の株を見ていますが、こちらも確かに上がってきていますね。ただ、トヨタほど急激な上がり方ではないですね。

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同じ北米エリアで強いトヨタとホンダで株の上がり方に差異が生じている要因については、別途検討する必要がありそうですが、トヨタについてはコロナ禍でも比較的安定的に自動車の製造販売を継続しており、その信頼感も高く評価されているのかもしれません。

半導体不足は自動車産業にとってかなり深刻なダメージをもたらしています。どれだけ強固なサプライチェーンを持っているかが試される時代になっているわけです。

東日本大震災や、熊本地震など、数多くの震災の経験を経て、自社のサプライチェーンを見直し、生産、販売体制を見直したトヨタは、この状況における一日の長がある、といえるのかもしれません。

なお、株価が上がっている事については株式分割をすることも影響してそうです。株式分割をすることが直接的に株の価値を上げることはないのですが、分割により株数が増え、売買しやすくなることは投資家としてはメリットがあります。株式分割で株数が増えることは、場合によってはボラティリティを高める可能性もありますが、株価が上がっている局面においては有効に作用しそうです。



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