【ワイナリー立ち上げ日記】トラクターをかける
先日、無事父の伝手で近所の休耕地を借りられた。「すぐにでもぶどうの苗を植えたい」と思うものの……。そうは問屋が卸さない。
しばらく使っていなかった畑だったので雑草だらけ。等身大くらいの大きさになる茎の太いコスモスが生えていた後もあったりで、まずは数回トラクターをかけて土を掘り起こすことが必要だった。
そこでこの春は弟と2人でトラクターかけをすることに。
幸いにもトラクターも祖父が残してくれており、実家にある。物心ついた頃から実家の物置にあった。朧げに作業着を着た祖父が乗っていた記憶もある。後輪の後ろには「ハンマーナイフモア」というトラクターにつける草刈り機がついていて回転してゴリゴリと土を耕してくれるのだ。
なんとなく「70年代くらいの製造なのでは」と思っていたけれど、機種番号で調べてみたら「85年から88年の販売」とあった。ほぼ僕ら兄弟と同い年だ。
車は10万キロが一つ寿命の目安とはいうけれど。トラクターは毎日使うものではないからそんなに走っているわけではないし、そもそも頑丈に作ってあるのだろう。物持ちが良いのはありがたいことである。
肝心のトラクターの運転は……。実は自分がマニュアルの自動車免許を取った15年くらい前の大学生の頃に少し練習したことがある。マニュアルで運転ができるならば、トラクターの運転はむしろマニュアル車より楽だと思う。
エンジンをかけてレバーを上げて回転数を1500~1800くらいにすればスタート。左足はクラッチ兼ブレーキなので、踏めばクラッチが切れて止まる。右足のブレーキは左右に分かれていて、後輪の右と左のどちらかだけを止めることが出来る。右のブレーキを踏んだままだと、その位置で右にドリフトして旋回してくれるわけだ。グリグリと左右の後輪タイヤを止めて旋回するさまは馬に乗っているかのようである。小さなスペースしかなくても後輪のブレーキで回れるのは面白い。
一応、右足の横には小さくアクセルがあるが坂道の登りで吹かすくらいでほぼ使わない。まっすぐトラクターをかけている状態のときはハンドルくらいしか操作しなくてもクラッチが繋がっていればゴリゴリと進んでいく。
トラクターをかけた跡には、すぐさま掘り起こした虫を狙ってカラスや黄色いくちばしをしたムクドリが20羽ほど集まってくる。ムクドリは近年、住宅街に集団で現れて糞害が話題になっているが、農家にとっては立派な益鳥。1羽で年間1万匹もの虫を食べてくれるそうだ。てんとう虫やシマヘビも見かけた。住宅街にある畑だけれど、意外と自然豊かだったんだなと思い出す。
畑の方も雑草だらけ……ではあるものの。よく見るとアザミやペンペン草と呼ばれるナズナ、何かしらのアブラナ科の菜の花が植わっていたりする。元アスパラ畑なので時折生えているアスパラは有り難く頂戴して夜に天ぷらにした。
季節の移ろいを見ながら、トラクターをかけるのも悪くないもんだよなぁと思っている。
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