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博物館法改正について

博物館法改正がついに閣議決定されたようです。
概要などは文部科学省のHPなどから見ることができます。

興味深かった点をいくつか挙げていきます。

まず、文化芸術基本法との関わりです。これまでの博物館法は社会教育法体系に属し、文化芸術基本法とは直接の関わりがなかったのですが、第一条に社会教育法と文化芸術基本法の精神に基づくことが盛り込まれました。個人的にはこれまでの社会教育法と新しく追加する文化芸術基本法の双方が同等に盛り込まれたことが良かったと思います。博物館にとっては、文化芸術の振興だけでなく、社会教育施設としての役割も大切だと思います。

また、デジタル・アーカイブの公開が博物館の新たな役割に付け加えられたのも印象的です。調べ物によく横断的なデジタル・アーカイブであるジャパンサーチを使います。デジタル・アーカイブの公開を法文で明確にすることで公開が促進されると嬉しいです。

一番印象深かったのが第三条3項です。

博物館は、第一項各号に掲げる事業の成果を活用するとともに、地方公共団体、学校、社会教育施設その他の関係機関及び民間団体と相互に連携を図りながら協力し、当該博物館が所在する地域における教育、学術及び文化の振興、文化観光(有形又は無形の文化的所産その他の文化に関する資源(以下この項において「文化資源」という。)の観覧、文化資源に関する体験活動その他の活動を通じて文化についての理解を深めることを目的とする観光をいう。)その他の活動の推進を図り、もつて地域の活力の向上に寄与するよう努めるものとする。

(文科省HP「博物館法の一部を改正する法律 新旧対応表」より)

博物館の役割は社会教育施設としての役割、学術資産を保存収集する役割、観光資源としての役割などさまざまなものがあります。多様な意味を持つ博物館という存在の複雑さを条文にしっかりと示したことは現代的な博物館の状況を繁栄していると言えるのではないでしょうか。また、「文化資源」という言葉が条文に表されたのも注目すべきです。「有形又は無形の文化的所産その他の文化に関する資源」とは具体的にどういうものかなど、「文化資源」そのものについて何であるのかという議論は当然必要かと思いますが、いずれにせよ単に「資料」ではない表現をしたことに意味があると思います。

博物館法が法である以上、時代に対応した変化を即座にするのは難しいかと思います。しかし、今回の法改正で博物館を取り巻く様々な状況を盛り込むことができたのは十分評価できるのではないかと思いました。

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