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癒しをもらい、美しさを愛し、生き方を教えられる
ふーっとため息をつくと、テーブルの上にある花たちに目をやった。
ステイホームが叫ばれた頃、スーパーに買い物に行った際、入り口にある花たちに目を留めた。
今まで何度もそのスーパーに行っていたのに、目を留めたのはこれが初めてだった。
カーネーション
ゆり
ガーベラ
スターチス
ダリア
かすみそう
ストック
トルコ桔梗
芍薬
今はこんなふうにスラスラっと花たちの名前を口にすることができるが、当時はカーネーションとゆりくらいしか知らなかった。
大きな花が好きなので、何を買ったか忘れたが買って帰った。
それなのに花瓶さえろくなものがなかったので、とりあえず使っていないグラスに花たちを生け、テーブルの上に置いた。
その瞬間、ぱあっと一段部屋の電気の照度が上がったかのように感じた。
じっと見ると、それぞれに美しい。
どれが一番美しいとか、大きいとか小さいとか、比較することはないし、その必要もない。それぞれが自分の咲きたいように咲いて、自分の持ち味を出しているだけなのに、美しい。
いや、もしかしたら、咲きたいように咲いて、自分の持ち味を出しているから美しいのかもしれない。
しばらくぼうっと見惚れていた。
じわじわと心に入り込んでくる温かいものを感じた。
仕事はどん底で、先の見えない不安だけが付きまとっていた時、花たちが私を
励ましてくれた。
人はどんな時でも美しいものたちから力をもらい、立ち直ることができるのかも
しれない。
その日から家に花たちがいない日はなくなった。
彼らが求めるのは、水だけ。
自分たちが限りある命をまっとうするために必要な水だけ。
そのシンプルさに惹かれる。
花たちが寿命を終える頃、またその季節、つまりその瞬間に咲いている花たちを探しにいく。
花たちによって季節の移り変わりを知り、花たちによって癒しをもらい、美しさを愛し、生き方を教えられる。
今いる花たちはもう少し花の寿命はありそうだが、水と多少のお手入れが必要な気がした。
あともう少し、あなたたちと一緒にいたいと思う。
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