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子供の頃に住んでたお家は、もうないけど


子供の頃に住んでいたお家は、とっくに壊されてなくなっている。

ちょっとだけでも見たくても、見ることさえできない。


何度も泊まりに行った幼なじみのお家は、
隣の人に売ってしまって、もう入れないけど。

幼なじみのお父さんは亡くなってしまってもう会えないけど、
私の記憶に、絵が描けるくらいに鮮やかに残っている。

胸が焦がされるように好きだった初恋の人は、
亡くなってもう二度と会えないけど、
好きで好きで仕方がなかったあの切なさを、心が覚えている。

建物も、人も、物も全て永遠なものは何一つないけど、
頭や心が覚えている。

家も人も物も、何一つ私がいなくなるときに持って行けないけど、
頭や心に記憶されたものは、持って行ける気がする。

形あるものは消え、形のないものが残る。

記憶がなくならない限り、残る。


不思議で、素敵な事実。


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