見出し画像

すごい高校生



先日講演先に、すごい高校生がいた。

すごい高校生というと、成績優秀とか、資格をたくさんとっているとか、何かの賞を取っているとか、部活で大きな大会で活躍した、と言うことを考えるだろう。

実際には、そうではなく、「伸び代100」の「ポテンシャルの高い高校生」と、私が感じた高校生だ。

私の仕事としては、専門学校の推薦入試を受験する予定の3年生に、面接指導をする、と言うものだった。

(私はそもそも面接指導が、大好きだ。誰も聞いてないけど)


だから、ワクワクして高校に行った。

しかし、少々私には夏休みボケしている部分があり、実は最初の50分間で、面接マナーや、面接で何を聞かれるのかとその答え方についてお話をし、その後「希望者のみ、残って面接指導をする」と言う内容だだと言うことを、よく理解していなかった。

高校に到着して、他の先生方と打ち合わせをしてそのことに気づいた。

そこで「第一印象をよくするポイント」「必須質問」についてお伝えし、
その後全体でできる、マナー実技を練習していただくことを、急遽決めた。(何度も経験があるので、ぶっつけでも大丈夫と思っていた)


こちらの高校には何度か伺っているが、生徒さんたちはとても素直で、熱心な人が多い印象があったが、今回もそうだった。
ただ、メモはあまり取らないのは、今の若者の常なので、その点についても、具体的になぜメモが重要かについて伝えると、一人二人とメモを取り始めた。
(やっぱり素直だ)

そして、授業終了間近に、聞いてみた。

「この後、希望者の人は残って面接練習しますが、希望者の人いますか」
と。

シーン・・・


誰も手が上がらない。

担当の高校の先生は、「やらなくていいの?」と小声で声をかけている。
2度聞いてみたが、用事がある人もいたり、と結局誰も手が上がらない状況は変わらなかった。

「じゃ、これで終わります」


と、少々どころか、かなり残念な気持ちで、授業を終了した。

生徒さんたちが、ゾロゾロと教室を出ていく。
質問に来た人はいたので、アドバイスした。

すると、一人の男子高校生が、「何時までですか」
と聞いてきた。

終了時間を告げると、「あ、じゃあ俺残ります」

と言うではないか。

一人でも希望者がいれば私は残らないといけないので、休憩時間を挟んで残ることが決定した。(2コマやっても、講師料は同じなのだけど、私はこの仕事が好きなので、実は嬉しかったのだけど)


休憩後、戻ってきたのは女子2人と男子1人。

おー、女子二人が増えている!!

「きっと聞きたいことがあるんだよね。あ、面接の入退室もやりましょうか」
と言うと、女子二人はうなづく。

男子に「何が聞きたかったのかな」と聞くと、「いや、実は俺こないだ面接終わったんすよ」と言うではないか。

「どうだった?」「どんなこと聞かれた?」

「褒められました」

「おー、すごいね〜。志望理由言えた?」
「はい、言えましたよ。将来の夢も言えました」

ここで、疑問が湧く。

面接も終わっている。
面接の手応えもあり、今結果待ちをしている。
なぜ、残った??


「じゃ、何か聞きたいことがあったの?」

「いや、先生と話したいと思って」


おーーーーーーー

なんか、嬉しいぞー

「俺一人と思ったから」
と言うではないか!!

マスクして50分間、マナー指導をしたり、メモの重要性を言ったり、面接で聞かれる質問と答え方のポイントを言っただけなのに、なぜ私と話したいと思ったのか、俄然興味が湧いた。


確かにこの生徒さんは、ちょっと他の生徒さんとは違っていた。
何が、と言われると表現しづらいのだが、「大人」の雰囲気があったのだ。


「じゃあ、先に入退室練習と、ちょっとした質問をしてみようね」
と言って、実践に入った。
男子生徒さんも「俺もやります」と言って、3名で実践した。

志望理由で悩んでいる女子生徒さんには、いくつか質問をして、出てきた答えから、「こんな内容で言えると思いますよ」と、即興で志望理由を作成し、アドバイスをした。

その後、男子生徒さんに、「何が聞きたかったのかな?何を話したかったの?」
と聞いてみた。


すると、

「先生、この仕事で生活できるんすか」

と聞いてきた!!!!

面白い!!


「いい質問だねー」

と言って、「いや、実は私、この仕事は本業じゃないんだよね」
と言って、エアラインスクールを経営して26年であること、それ以外にも仕事をしていることを伝えると、
「すごいっすねー。成功する人ってやっぱ違いますよね」

と、言う。

成功してるかどうかはわからないけど、26年続いてる、と言う事を評価してくれたらしい。

おそらく彼は、私の講演を聞いていると同時に「何かを感じていた」のだろう。

「この人に人生の話を聞いてみたい」と思ったのではないか。

おそらく、彼は経営や社会に興味関心が高いのだろう。社会に目が向いていて、開いている高校生だ。閉じてない、のだ。
彼のバックグラウンドは私には全くわからないが、(あまり聞くと個人情報に踏み込み過ぎてしまうので)大人に見えた理由はこれだったのだと思う。


「すごい高校生」


とは、「社会に関心を持ち、自分が興味を持ったことは行動に移すことができる」高校生だ。

年間に50校ほど講演で訪れる高校で、時々このような生徒さんがいる。


ある私立高校ではふたコマある授業の一つ目を終え、休憩していると、じーっとこっちをみている女子高校生に気づいた。

「何か聞きたいことがありますか」と聞くと、「先生はどうやって英語を勉強したんですか」と、私が講演の最後にやっている、「アレンジした機内アナウンス」を聞いて、興味を持って質問してくれたのだ。

「あ、じゃあここで話そうか」

と私が女子生徒さんに近づいて、剣道場の床に直に座ると、あっという間に10人くらいの女子生徒さんが一斉に集まり、円ができ、お話ししたこともある。

こういう予想外の嬉しいハプニングがあるからこそ、高校講演は面白いのだ。
大学生よりも若い分、素直であり、吸収力は抜群だ。
そして、自分の周りにはなかなかいない大人(多分、私のこと)に興味を持つ。
女子は、働く女性として、私のことを見ているのも嬉しい。

「生きているサンプル」のようなもので、それを50分話して、私に何かを感じてくれたことは、本当にありがたいし、大した準備はしていなかったけど、何かが高校生たちに刺さったのであれば、本当にうれしい。

自分の子供よりもずっと年下の、若い人たちに、まだ私が何かを伝えることができることは、お金には変えられない楽しさだ。


そしてこの男子生徒さんは、会話ができる。
ぽんぽんとこちらが言ったことに、とてもよく反応する。

その反応の素晴らしさ、をもっと褒めてあげればよかった、と少々反省している。

でも、きっと彼は大物になるだろう。
自分のやりたいことを、形にしていくだろう。
それを既に18歳で感じさせてくれた高校生は、やっぱりすごかったのだ。

日本の未来は明るい、と彼が思わせてくれたのだから。


サポートありがとうございます!いただいたサポートは、次の良い記事を書くために使わせていただきます!