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6.4 Webの運用体制

 Webの初期構築時には開発担当しかおらず、運用担当という存在はいない状態から始まります。Webがリリースされて実運用に使われはじめると、不具合対応やユーザ/クライアントからの問い合わせ対応などのような運用関連の業務も継続的/断続的に発生するようになります。開発規模が比較的小さい場合や、運用を開始しても機能追加などの開発も並行して行う場合など、初期構築時の開発チームが運用対応を行うような体制はよく見受けられます。このような体制のメリットは、対象システムの仕組みや実装がよくわかっているメンバなので、問い合わせ対応にしても不具合対応にしても、迅速に対応できるところがあります。

開発だけでなく運用担当エンジニアもいる業務体制

しかし一方で、開発も運用も同じメンバで対応していくと、開発スケジュールがひっ迫している状況などでは、運用の対応も行うのが難しくなったり、開発をどうしても優先して、運用の対応を軽視したりすることも見受けられるようになったりします。ある程度、運用の業務量も増えてきた段階では、運用担当と開発担当を分けていくのが通常かと思います。運用担当も当該Webの仕組み・要件・実装についても理解している必要がありますので、開発担当と似た能力/経歴の人間が対応する必要がありますので、開発担当のメンバの中から運用担当を選ぶこともよくありますが、それでも開発担当とは別に運用担当としてアサインして運用業務に専念してもらうことはさまざまなメリットがあります。
 
 当該Webの仕組み・要件・実装について把握しているエンジニアが、開発業務をもたずに運用担当としてアサインされることにより、ユーザ/クライアントからの問い合わせ対応にしても、自動監視からのアラートの対応についても、各種調査を迅速に対応できる体制にすることができます。この役割をこなすためには、一定水準以上の技術力があるエンジニアである必要はもちろんありますが、当該Webの仕組み・要件・実装についても把握している必要がありますので、特に当該Webの規模が大きくなってくると、新しい運用担当をアサインした場合に、そのWebシステム全体の把握をどのように進めてもらうかについてきちんと計画をたててサポートする必要があります。前提としてドキュメントが整備されている必要はもちろんありますが、ある程度以上Webの規模が大きくなってくると、ドキュメントを端から端まで読んで把握することはふつうできなくなりますので、実タスクによってシステムのひとつひとつの側面を把握してもらう手順とドキュメントを読んだり時間をとってドキュメントを用いて説明する作業の組み合わせが必要となります。
 
 ユーザ/クライアントからの問い合わせは、当該Webシステムの仕組み/使い方がよくわかっていないための問い合わせもあったりします。そのような問い合わせに対して、操作手順や操作日時、事象が不明確な場合には必要な情報を聞き出して、システムに記録されているサーバログやDBの内容などを確認して、何が起きたのかを具体的に特定して問い合わせに回答するためには、一般的なシステム・技術に関する知識だけでなく、当該Webシステムのことがわかっている運用担当がいる必要があります。その運用担当はある程度はアプリケーションのソースも読んでいて、どのようにプログラムとして実装されているのかも把握している存在であるべきです。このような存在の運用担当エンジニアがいないと、問い合わせがあってもすぐには回答できなかったり、あるいはいちいち開発エンジニアに対応してもらうためには開発業務が都度都度止められてしまうという状況となり、開発スケジュール遅延が起きたり開発品質の低下をまねくことになりかねません。
 このようなアプリケーションがわかっている運用担当エンジニアの存在は重要ですが、エンジニアは運用よりも開発を好む面も強いので、運用体制の維持には開発体制とはまた異なる注意が必要となります。システム全体を把握するのにある程度の期間は必要ですが、何年もひとつのシステムの運用担当をさせられるとエンジニアとしての成長を感じられないという面もあります。2年程度では開発側に戻してあげるなどの人員配置上の配慮なども必要になる面があります。しかしそのようなローテーションを実現するためには、定期的に新規のメンバにシステム全体の把握をさせる必要がでてくることを意味します。次の節では安定してシステムを運用していくために必要となってくる、運用エンジニア以外も含めた各職種の新規メンバへの情報共有方法についてみていきたいと思います。


Webディレクタとして次のステップをさがしている方たちへ

これからのWeb構築・Webディレクションとして、業務にまで踏み込んでディレクション/プロデュースすること、それが近年のバズワードであるDXにもつながること、そしてWebの進化とともにWeb構築の各種ツール/サービスやSaaSが広がってきていることにしたがって、業務とシステムの両面からWeb構築・運用していく人間が求められていくこと、そのためにどのような知識や能力を身に着けていくとよいかについて解説している「マガジン」です。