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"肥満と呼吸器疾患”の関係について呼吸器内科専門医が思うこと

上西内科副院長の中畑征史です。
当院では、生活習慣病である糖尿病や高血圧などに強く影響を与える肥満について積極的に食事指導などの取り組みをしています。

肥満というと糖尿病などを思い浮かべることが多いですが、呼吸器疾患との絡みはどうでしょうか?
今回は肥満と呼吸器疾患(特に気管支喘息)の関係について調べてみました。

呼吸器の代表的疾患は気管支喘息ですが、肥満が重症化のリスクとなることが知られています。
詳細は不明であり、肥満合併喘息に焦点を当てた観察研究になります。
方法としては、成人になって発症した気管支喘息の患者をBMIが25以下、25~30、30以上と分けて12年間追跡しました。
内服ステロイドの使用と入院に関して評価されています。

結果としては、12年の経過後、当時肥満であったBMI30以上の患者のうち86%が肥満のままでした。また、BMIの群間で体重変化に差はみられませんでした。
診断時肥満だった患者(BMI25以上の群)は、正常体重の患者と比較すると、内服ステロイドの使用がより頻繁になっています。(46.9% vs 23.1%、p = 0.028)
また、より高用量の内服ステロイドが使用されています。(プレドニゾロン中央値1350mg(280-3180mg) vs 600mg(0-1650mg)、p = 0.010)
これは12年間の総量です。
肥満は、正常体重の患者と比較して呼吸関連の入院の頻度が高い結果でした。(38.8% vs 16.9%、p = 0.033)
多変量ロジスティック解析もされていますが、肥満は内服ステロイドの使用と入院の予測因子となっていました。

今回この論文を見た時、もともと実感としても肥満合併の喘息患者に関しては入院歴などが多いイメージだったので、正直イメージが裏付けされただけという感じではありました。
この論文で最も考えさせられたところは、肥満患者は12年経っても86%が肥満のままという結果の方です。
確かに、自分を含めて肥満に関して積極的に介入する呼吸器内科医がどれくらいいるでしょうか?
吸入ステロイドに関してなど治療の相談には乗ることはできても、外来で減量の相談に乗っている人は少ないのでは無いでしょうか。
僕にしても、当院で院長とともに肥満患者、糖尿病、高血圧患者さんへのアプローチをする中で出てきた視点でもあります。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cea.12544

この論文は、気管支喘息と食事についての関連を調べた観察研究になります。

ポルトガルの健康調査からの研究で、32,644人の成人(女性53%)を対象にしています。
過去1年に症状があったものを current asthma としていますが、この率が5.3%、過去1年に喘息の治療歴があるものを current medicated asthma としておりこれが3.5%、過去1年に予定外の受診を必要とした人を current severe asthma としていてこれは3.0%でした。
これらの人のうち食事パターン(DP)との関連を調べています。

結果としては、高脂肪と食塩と砂糖が喘息の有病率に関与しており、野菜やフルーツ、魚の摂取は逆に喘息の有病率と負の相関をしていました。
なかなか珍しい報告ですが、食事も喘息に影響があると思われます。
ただし、肥満に近づく食事をしているから喘息が多いのか、それとも魚やフルーツ自体に喘息を抑える効果があるのかは不明です。

当院では管理栄養士が複数名常駐しています。
引き続き肥満合併の呼吸器疾患患者への介入を、積極的に継続していきたいと考えています。

愛知県小牧市
糖尿病・甲状腺 上西内科
副院長 中畑征史
https://uenishi-naika.com/

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