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途上

 あまり上手な歩き方ではないと思う。ゲームばかりして、もうすぐ20台も終わってしまう。お金も仕事も人間関係も、積み重ねてきたものは薄い。この筋肉で、先に続く、細く険しい道は登れるのか不安になる。人生はゲームのように、攻略法がない。歩みはカメのようだが、サボりはウサギのよう。

 初めて看取りをした人がいる。もうすぐ90台近いその人は「おれは小学校しか出たことがない」と笑いながら、毎日クロスワードや読書に勤しんでいた。骨を折って寝たきりになってからも、本を持ってきてほしいと頼まれた。コンプレックスだったのかもしれないが、年齢を感じず楽しんでいるようにも見えた。人はいくつになっても発展途上で、勉強も好奇心も人間関係も、積み重ねることができると見た。

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 何度指摘されてもできない人。嫌なことがあるとすぐ逃げる人。そもそも仕事に来ない人。就労支援を受けている人は、あまり上手な働き方をできないことがある。時に呆れてしまうこともあるが、ここまでの道のりを聞くと、乗り越えてきたものに頭が下がる。いじめ、入院、刑罰、発狂、家族との軋轢、介護。障害を抱えて生きる道の、細く険しい道を超えてきた。歩みはカメのようだが、心はウサギのよう。

 これからも上手な生き方はできないと思う。苦難や思い出や自己理解を、薄いながらも積み重ねていく。時に呆れてしまうこともあるが、ここまでの景色に背中を押される。人生はクロスワードのように、ある日突然道が拓けることもある。歩みはカメのようだが、攻略法は見つからないまま、LEVELは30にUPしていく。

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