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PURE SONIC MANIFESTO 「BEAUTIFUL NOISE Ⅱ」Self Liner Notes



Intro

BEATNOID WORKS コンポーザーの植草史仁です。

約6年ぶりに自身のバンド「PURE SONIC MANIFESTO」のセカンドアルバムとなる「BEAUTIFUL NOISE Ⅱ」を2023年8月29日にリリースする運びとなりました。
今回はその発売と配信を記念して、全20曲に及ぶ楽曲の紹介や解説、そして制作にまつわる話などを、セルフライナーノーツとしてここにアーカイブしておきたいと思います。

今作はアルバムのコンセプトに「記憶」というキーワードを掲げ、そこに関連・付随する様々な物語をテーマに楽曲を制作し、構成しています。
未来へとつながる過去の記憶を巡る旅。
ぜひアルバムを聴きながら、楽曲と照らし合わせてご覧いただけると嬉しいです。


Tracks

1-01. AKASHIC RECORDS

アルバムのオープニングを飾るシネマチックなオーケストラ風のインスト。
今作は「記憶」を制作のコンセプトとしているため、「宇宙誕生以来のすべての記録がアーカイブされた記憶の概念」という意味合い的にも「アカシックレコード」というタイトルは、これ以上ない冠かなと思います。
冒頭、オーケストラのチューニングから始まるのですが、ここの雰囲気を出すのが一番難しかったです(笑

1-02. BOOLEAN

プログラマーには馴染みの深い「ブーリアン(真偽値)」というワードをテーマにした、お行儀の良いインテリ系ロック。
左か右か。白か黒か。善と悪か。対極となる所以のその真偽値はどこでフラグが立つのか。といった、わりと哲学的な孤独を歌っています。
楽曲に関してはめずらしくギターソロのない曲で、冒頭のミステリー感漂う雰囲気から一転、サビで一気にメロディックな流れに持ってく感じが好きです。

1-03. ALL OR NOTHING

「イエスかノーか」「いちかばちか」という意味で、詞の内容的には1曲目の「BOOLEAN」と近いものがありますが、こっちはもっと熱量あって、自分が本当にやりたいことや、やるべきことに気付いているのなら、言い訳ばかり考えていないで迷わずやってみろよ、っていう、自分への戒めを込めた歌です。
ビート感重視のナンバーで、タイトなリズムでベースはひたすらルートを刻んでいるんですけど、そのベースに対して超低音のサブベースと高音のシンセベースを重ねたり、サウンドエフェクトにデジタルパーカッションを使ったりと、自分が思うモダンなビートロックに挑戦してみました。
ちなみにこの楽曲、前作「BEAUTIFUL NOISE」リリース後、そんなに間を置かずに作った曲で、2019年12月28日に行った初自主企画にて演奏した記録が残っています。
バンドで初めてMV制作を行ったり、ライブハウスで初めて映像同期を行った楽曲というのもあり、個人的にも思い入れのあるナンバーです。
ギターソロでバッと視界が開ける感じが好きです。

1-04. MIRAGE

ゆるぎない過去の「記憶」をテーマにしたメロディックなロックチューンで、アルバムのリリースに先駆けて先行配信したシングル曲。
普段あまり使わないコードやコード進行を意図的に使ったり、キメの要素が多かったりで、自分の中では全パート結構テクニカルというか、レコーディングが大変だった記憶があります。
歌に関しては、歌唱時の熱量調整が難しくて収録に3日くらいかかっちゃったんですけど、3パターン収録して、結果的に一番熱量の低いものがしっくり来て、そのテイクが採用となりました。

1-05. WITH ONE BLOW

世の中の様々な物事に対しての閉塞感や、「無関心」がデフォルトとなりつつある、時代に対して皮肉を込めたフラストレーション高めのナンバー。
普段はほぼ曲先なんですけど、この楽曲に関してはテーマが明確で、1時間くらいで歌詞がババっと書けたので詞先で進行しました。
サウンドに関しては「ALL OR NOTHING」同様、ビート感を重視したモダンなビートロックを意識して制作。個人的にめずらしく終始パワーコードで弾いています。
コーラス部分も含めて、割とライブでの演奏を意識して作った楽曲ですね。

1-06. TOKYO MUST BE DESTROYED

「東京は破壊されなければならない―。」
かなり過激で物騒なタイトルですが、バイオレンス的なイメージというよりは、この社会における孤独や哀しみの連鎖を断つ、というテーマを持って制作しました。
個人的には一聴して頭に映像が浮かぶ、ドラマチックなインストになったかなと思います。
サウンドデザイン的なところでは割と90年代後半に、さていよいよ来るか!と期待しつつも一瞬でそのブームが終わってしまったビッグビートや、デジタルロックを自分の中でリバイバルしています。

1-07. RUMOR HUMOR

現代人のソーシャルメディアとの関わり方を題材にした歌。
インターネットやソーシャルメディアってのは自分のアクションひとつで(または何もせずとも)手軽に情報が入手できる反面、様々な問題が表面化しているのは周知の事実で、承認欲求や同調圧力、過剰なコンプライアンスやフェイクニュース、正義気取った偽善クソくらえ!とまでは云いませんが、何かと心が疲れてしまう現代社会において、そういったアンチテーゼが生み出す皮肉や風刺なんかにも、もうちょっとユーモアがあってもいいんじゃないかなと思うのですが、これ如何に。

1-08. JUST BE MYSELF

本当にくだらない些細なことでイジけたり、あきらめちゃう連中に対しての応援歌、と云ったらこれまた語弊がありますが、この楽曲に関しても過去の自分に対してのアンサーソングかなと思います。
個性やオリジナリティーに執着する連中ってのは、結果「かたち」を残していないのが大半で、そんな奴らのノイズを気にして、迷ったりしているほど人生は長くないです。
口で云うことは本当に簡単ですが、結局自分は自分でしかなく、誰かにはなれないので。
今の自分を自分らしく、ごまかさず、ありのままにさらけ出せばいいと思います。無個性やオリジナリティのない人間なんてこの世には存在しません。
ただ自分の場合、その結果たくさんの夢が殺されましたが、それを越えてかけがえのない今があるので幸せです。

1-09. NOW AND FOREVER

今回のアルバムは「記憶」が重要なコンセプトになっているという事で、過去の自分を振り返ってみた時に、今現在も過去も変わらないもの、また自分が人として成長するうえで切り離せない愛情や夢、孤独などを歌ったワルツ。
普段こういったタイプの曲を書くことはあまりないのですが、歳を重ねた今だからこそ書けた楽曲かなと思います。

1-10. AFTER THE TWILIGHT

このAFTER THE TWILIGHTって曲は、自分がまだ20歳そこそこぐらいの頃に作った楽曲なんですけど、供養するという意味も込めて今回の作品としてのケースに入れました。
若い頃に書いた歌詞を大人になってから歌うのは、色々な意味で勇気がいる場合がほとんどですが、この楽曲に関してはライブなどであまり演奏こそしていないけれど、共に成長してきた感じがあって違和感なく歌うことができた、自分にとって特別な曲です。


2-01. RASTER SCROLL

ラスタースクロールって主にテレビゲームで使われていた、画面がゆらゆらとうねるスクロール効果(ファミコン版ドラゴンクエストの旅の扉に入った時のアレ、といって伝わりますかね)のことなんですけど、そのラスタースクロールがまるで人生にかかるような瞬間ってのが少なからずあって、そんなくじけそうな時であっても、時間と命は絶対に前にしか進まない。
だからたとえどんなにズタボロになった心でも進むしかない、という心情を歌った曲。
とても哀しい歌なんですけど、自分にとっては背中を押してくれる楽曲でもあります。

2-02. MARIANNE

イントロのブラスが象徴的なシャッフル・ナンバー。
マリアンヌという架空の女性像をモチーフに、自分が失ってしまったものに対して心情を重ねた歌となっています。
わかる方には1発でわかってしまうオマージュがいくつかあるので、そこらへんを探って楽しんでいただけたら嬉しいです。

2-03. RAIN TRAVELER

「雨の旅人」という題材で、制作に関しては曲や詞からではなく、ストーリーの脚本っぽいところから始めた異質な楽曲。
曲に関しても普段作るような感じのものではないところを目指していたので、ギターではなくキーボードからサウンドスケッチを始めています。

2-04. SHE SAID YES I DO

自分の中での王道となる「切ない系ロック」。
実はデモのスケッチ段階ではもうちょっと秒数長い曲だったんですが、これ以上歌詞の言葉が出てこなかったというのもあり、歌詞に合わせて楽曲自体の展開を調整し3分台に収めました。
これまでは Intro → Verse → Bridge → Chorus といった進行で、1曲平均5分という長さのものが多かったんですけど、今回は詞先が多いというのもありますが、極力1曲平均3分台を目標とした楽曲制作を心がけていて、Intro → Verse → Chorus というシンプルな構成が多くなっています。

2-05. BLUR

制作中、色々アレンジしてみたものの、楽曲のクオリティが自分の中の合格ラインになかなか届かず、歌を入れるまで今作に収録するか、最後まで悩んでいた楽曲。
普段は少しでも悩んだり、追い込んでも納得いかない部分があるとサクッとお蔵にするのですが、この楽曲に関しては何故かどうしても今作に収めたかったんですよね。
んで、悩みつつもスタジオで歌を録ってミックスしてみたら案外悪くなかったので、その後オケの細かい部分を歌に合わせる形で再調整し完成に至りました。
前作「BEAUTIFUL NOISE」の「ESCAPE FROM DISTANCE」という曲の続きを歌っています。

2-06. BRINGING BACK MEMORIES

一聴してラブソングに聴こえるんですけど、それは過去の恋愛であったり、またはかけがえのない時を共に過ごした仲間への言葉であったりもします。
ひとつのテーマに対して複数の解釈を持った歌詞を書くのって、制作当時結構大変かなと思っていたんですけど、詞のほうは意外とすんなり書けた楽曲です。
ただコードの展開が多く、ブリッジ(Bメロ)とインタールード(間奏)の進行・展開において、着地がかなり悩ましかったですね。
大切な人と共に過ごした過去に想いを重ねて聴いていただけたら嬉しいです。

2-07. DRIVING TO THE FUTURE(feat. Natalie)

女性ボーカルをフィーチャーしたミディアムファンクなドライブミュージック。
当初ギターを弾きまくるインストを予定していたのですが、楽曲のアクセントとして女性ボーカルのサンプリングをバッキングボーカル的に入れてみたところ、案外悪くなかったので、ボーカルをメインに持ってくるような構成に変更しました。
ちなみに歌っているのはナタリーさんといって、Dreamtonics開発の「Synthesizer V」を採用しています。
ブリッジ(Bメロ)で前作 BEAUTIFUL NOISE のラストの曲、LAST DAYS で使った暗号を入れたり、ベースソロがあったり、ボサっぽい要素もあったりと、結構やりたい放題やってる印象ですね。
曲の終わり方が所謂「植草史仁」っぽい強引な着地で、個人的には好きです(笑

2-08. LOVE REPLICA

とにかくクールでカッコいい曲が1曲欲しい!ってことで、現時点での「切なカッコいいスキル」を全力投球でぶつけたビートロック。
サビ後のディミニッシュはデモの段階ではBOOWYの「WORKING MAN」だったんですけど、流石にオマージュと呼ぶには厳しく、怒られそうだったので見送りました。
あとイントロのギターリフは単純なんですけど、実際に弾いてみるとこれが結構面倒で、これはコードを踏まえたうえで弾かないとダメ、というのを完成後に知りました(笑

2-09. WILD RAGE(feat. kabu)

この「WILD RAGE」という楽曲は、自分が20代の頃に作ったもので、当時から仲良くしていたボーカリストのkabu氏(現TRAVE)をゲストに迎えてコラボした楽曲です。
サウンド面ではスージー・クアトロの「THE WILD ONE」のBOOWY版を意識した楽曲で、80年代のアメリカンロックないしはミディアムハードロック的なアプローチを踏まえて制作しました。
ちなみにこの楽曲にはちょっとした歴史があって、20代で当時やっていたバンドのデモに収録、活動終了した30代でそのバンドの区切りとしてスタジオレコーディングして配信、というヒストリーがあるんですが、今作は自分の音楽人生においても重要な作品となるので、ぜひ収録したいなと思っていたんですよね。
んで試しに相談してみたら「むしろ待っていたよ」と快諾してくれたので、40代となって成熟したこの「WILD RAGE」という音源は、PSMの今作「BEAUTIFUL NOISE Ⅱ」への収録が決定したのでした。
軽い気持ちで始めた遊びが、今なおこういう形で自分と並走しているという、なんかとてもBABY ACTIONで感慨深い楽曲です。

2-10. SAMSARA

サンサーラ。インド、サンスクリット語で「輪廻転生」を意味する言葉で、今作のラストを飾るインストとなっていますが、前作と同様にアルバムのオープニングへの布石となる楽曲でもあります。
今作のレコーディングでギターはすべて愛機のZEMAITISを使用していますが、この曲に関してはアーミングを使いたかったので、サスティナー搭載のTEJを使用。
ラストはひとしきり弾き終えた後、ギタージャックから豪快にシールドを引き抜いて、ノイズを意図的に発生させたテイクを採用しています。
サスティナーということもあり、個人的には弾いていて結構高揚する楽曲なので、ライブでのチャレンジがちょっと楽しみな曲でもあります。


Outro

バンドのデビュー作となった前作BEAUTIFUL NOISEですが、この「BEAUTIFUL NOISE」というテーマをシリーズ化する考えは、前作の制作時点ですでに明確にありました。
ちなみにBEAUTIFUL NOISEは直訳すると「美しいノイズ」なんですが、これは心音、鼓動を意図しているもので、つまりBEAUTIFUL NOISEとは「命の記録」を意味しています。

今回のアルバムのコンセプト「記憶」に対する裏設定で、前作と同様に「生と死」というものがあります。
が、そこは決してネガティブな意味合いではなく、結局は絶対的に手に入れるものですから、それを踏まえた「未来」のために「今」をどういった「過去」として「記憶」に残すのか。
というのが、今回のアルバムに込めた自分の想いであったりします。

あなたの「BEAUTIFUL NOISE」は鳴り響いていますか?

Fumihito Uekusa



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