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【きよしこ(重松清)】うえこーの書評#107

 著者の少年時代を基にした、とある吃音を持った少年のお話。

 吃音とは話そうとすると自分の意思に関わらずどもってしまう症状をいう。特に、少年は「カ行」と「タ行」が苦手だった。

 吃音を持つ人は少ない。しかし、そこから生じる少年の悩み自体は誰もが一度は悩んだものだろう。自分の意見が言えない、友達ができない、いじめられて辛いなどのような悩みは多くの人も共感するだろう。

 少年の悩みは完全に解消することはない。この本は私小説である。完全なフィクションのようにさっそうと現れたヒーローがすべてを解決することは決してない。しかし、最後には少しの希望を見出すことができる。悩みや後悔を繰り返しながら、少年は成長していく。

 1章での少年ときよしこのお話はフロイトの精神分析を彷彿させる。ここで、少年は患者できよしこは精神分析学者である。きよしこは少年に質問を繰り返し投げかけることで、少年自身が忘れていた吃音の原因となるトラウマを思い起こすことができた。そこで、完全に吃音が治ることはないが、少年の気分が軽くなる効果はあっただろう。

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