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ジャンプ・イン・ザ・レイン

 大学の購買部で少年ジャンプを買った。わざわざ通学途中にコンビニに寄らずとも、学内で手軽に買えるということはとても利便性が高い話だ。

 ジャンプを買うのなんて、一体いつ以来だろう。多分高1か高2を最後に、買うのも読むのもやめていた。

 だが僕は先述の通り、今月から週刊少年ジャンプを購読している。それは単に娯楽というより、絵やストーリーの参考のためにという動機に基づいた行為だ。因みに漫画雑誌では、ジャンプしか置かれていないというのもグッドポイントだ(マガジンなんかは表紙がグラビアだから?)。

 昼休み、図書館でジャンプを読んだ。悪くない時間の過ごし方だ。

 雲行きの怪しい春の午後だが、雨が降らないだろうかと思案したところで無駄なことだ。人間の意識が天候の変化に影響を与えるなんて、そんなことは到底あり得ないからだ(僕は雨男や雨女などという類の迷信は一切信じない)。

 講義が終わり、外に出た時には、案の定雨が降っていた。僕は自転車で大学に通っている。だから公共交通機関を使うという選択肢も、最初からありはしない。きっと折り畳み自転車があれば、それを電車内に持ち込めて、話は変わってくるんだろうけど(まさにここ数日、サイクル店でそれを注文したところだ)。

 雨の降りはそこまで激しくはない。少し煩わしいといった程度の降水量だ。僕は自転車に乗って、片道およそ50分の距離を漕ぎ出した。レインコートは着ていない。レインコートは暑苦しいし、雨粒で視界が悪くなったりするので、僕は着ないようにしているのだ。

 鞄の中には、本、文庫本、筆記具、水筒、数冊のノート、そしてジャンプと混み入っている。僕のこれまでの経験則から判断して、鞄の中身は恐らく濡れることは無いだろうと、僕は予測を立てていた。つい今日買ったばかりのジャンプも大丈夫な筈だ。

 僕はその不確定的な予想を抱えながら、自分で開拓した通学路を走っていた。川沿いの道だ。雨に打たれた水面は、いくつもの波紋を描いていた。そして雨の降りしきる世界の中で吹く風は、少し冷たく少し心地良かった。雨は自転車の車体を濡らし、鞄の表面を濡らし、そして僕自身を濡らしていった。

 家に帰り、鞄の中身を確認すると、それらは予想通り無事だった。勿論、ジャンプも濡れてはいなかった。




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