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【毎週ショートショートnote作品】涙鉛筆

 休み時間、教室の後ろの棚で、僕と佐々木と高田はバトル鉛筆で遊んでいた。

「あ! バトエン!」背後から女子の声がした。

 振り返ると、そこには学級委員長の藤尾美久がいた。

「みーちゃった、みーちゃった。セーンセに言っちゃお」と藤尾は歌い、「先生っー」と叫びながら教室を飛び出していった。

 佐々木は舌打ちをした。「藤尾のやつ、先生にチクリに行きやがった」

 三時間目の算数が始まる直前、僕ら三人は教卓の前に立たされていた。

 池田先生は僕らを見下ろした。「言ったはずでしょ? うちの学校ではバトル鉛筆は没収なの」

 昼休み、僕らは教室の後ろに固まり、池田先生に対する愚痴をこぼしていた。

「マジでオニババだよなあ」

 僕がそう呟いた時、「聞いちゃった、聞いちゃった。セーンセに言っちゃお」と藤尾が後ろで歌っていた。

 今度は、僕一人だけが教卓の前に立たされた。

「聞いたわよ?」先生はジロリと僕を見下ろした。

 さすがに、ちょっぴり涙が出た。

(409文字)


 二回目の参加になります。

 小学生時代の実体験を基にして書きました。

 鉛筆を没収されてクラスメイトの前で説教をされるという苦い(?)思い出も、十年以上の時を越えて創作のネタに活かせたりするので、それはそれでアリかなとか思ったりします。

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