立川笑二 - ひとりでまくら投げ

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数年前、師匠の立川談笑、兄弟子の立川吉笑、私。の3人で、NIKKEI STYLEというサイトにてリレー形式のエッセイを連載していた。その連載自体は今でも続いているのだが、現在記事を書いているのは師匠と兄弟子のみだ。

私が締め切りを守れずに連載に穴をあけてしまったり、連載の締め切りをギリギリで守って書いたとしても、表現上、掲載不可能というよう理由から連載に穴を開けてしまったり、表現として一切の問題がない、かつ、締め切りをしっかり守って原稿を書き上げたのにも関わらず、担当編集の方が校正した文章を読み返そうともせず、その確認を促すメールを無視し続け、連載に穴を開けてしまったり…という理由から私はクビになってしまったのだ。てへぺろ。

当時、私にはクビ宣告があっただけで済んだが、そこにいたるまでに、師匠には相当なご迷惑をおかけしていたと思う。本当に申し訳のないことをした。

 クビになった後の私は「今後、連載のような仕事を頂いた時には自覚を持って、締め切りを守ろう」という考えには、勿論、ならなかった。そういう考え方に切り替えられるなら、連載中にやっていた。私は「今後、締め切りのある仕事は、どれだけ条件が良くても引き受けるのを辞めよう。」と心に誓って生きている。

 つい先日、上原落語会の主催者である齊藤秀一さんからメールが届いた。「NIKKEI STYLEの時にやっていた様な連載を始めませんか?」という内容だった。

 当時私が書いていた記事はまだNIKKEI STYLEのサイト内に存在しているため、この様な仕事の依頼はこれまでにも何度かあった。

 「笑二さんの文章はとても面白いです」と言ってくださる方々。本当にありがたい事だと思う。しかし、すでに私に好意を持ってくださっている方に、連載が始まったことで迷惑をかけてしまい、最終的に嫌われてしまう。それは明らかな未来であり、避けなければならない未来なのだ。

 私はその手の依頼の時に用意している答えを齊藤さんにお返しした。

 「エッセイの連載、物凄くありがたいのですが、実はあれ、締め切りを守れなさ過ぎてクビになってしまいました(笑) 締め切りがないと書かないし、締め切りがあっても守るかどうか分からないという、傍若無人さをご検討下さい!」(原文ママ)

 この返事をすることで大抵の相手は私との仕事を諦める。そして結局、嫌われる。

 結果的には嫌われているのだが、少なくとも依頼主に迷惑をかける様な事態にはなっていない。

駆け引きするぐらいなら、先に条件を出してしまったほうが楽だからという理由で、この様な返事をしてしまう。

しかし齊藤さんからの返事は

「なんとなく察してましたw。そんなノリで全然OKなのが私のオファーでしてw。単に読みたいだけという。固定でも歩合でも、いかようにも」(原文ママ)

というものだった。変な人だ。そのうえ、齊藤さんには私の書いた記事をnoteで有償公開し、後には書籍化する野望まであるという。とっても変な人だ。そもそも、あなたは一体、なに者なんだ!

私は齊藤さんが上原落語会の主催者であるという事しか知らない。上原落語会は東京の代々木上原で年に数回、不定期で開催されている落語会なので、この会だけで齊藤さんが生計を立てているとは考えにくい。こっそり「齊藤秀一」でググってみたが、1940年に亡くなった方言研究者の情報しか出てこなかった。かといって直接本人に素性を問うのも憚られる。

私の性格上、もし齊藤さんが広告代理店に勤めるイケイケの社員であるのなら、全身全霊で媚びてしまうに決まっている。

もし齊藤さんが大富豪の一人息子で親の金で自由自適に暮らしている人であるのなら、全身全霊で舐め腐るに決まっている。

私はそういう人間なのだから!

いずれにせよ、「笑二さんが書きたいときに書いてくれれば良い」「一番最初に原稿を読める事が出来れば良い」とまで言ってくださるのだから、断る理由はどこにもない。

どうやら私は奇跡の人に出会えた様だ。これを奇跡の出会いにしたいと思っている。

そんな訳で、立川笑二による「ひとりでまくら投げ」、連載開始です。えいっ!

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