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日本の森林を救う苗木生産者を知っていますか?

森林は地球温暖化の防止や災害から人々の命・生活を守る、そして木材としての資源など私たちが安全に暮らしていく上で多様な役割を担ってくれています。国土の67%を森林が占める日本において、全ての森が自然に成り立っているものではありません。多くの人々の手によって管理され、守られてれているのです。

そんな森林をつくる上で、実は欠かせないのが苗木。

福島県南相馬市に、年間250万本、およそ100種類の苗木を生産している上原樹苗という会社があります。上原樹苗は日本の林業家たちが適地適木を考えた『森林デザイン』を苗木で支援しています。

上原樹苗とは

機械で防除作業をしている様子

上原樹苗は明治初期に創業。会社のある福島県南相馬市萱浜地区は昔、養蚕の桑苗生産地でした。

明治元年位の原町(現在の南相馬市原町区)

この土地は腐蝕質粘土といって透水性と保水性を持ち合わせている特性があります。時代とともに、多くの桑苗生産者が造林用苗木生産へと移行し、今ではこの地域で苗木生産をしているのは上原樹苗のみに。

上原樹苗は2011年3月11日の東日本大震災による津波で、社屋、苗畑及び各種機械のほとんどを失いました。しかし、4代目社長の上原和直氏は、被害に落ち込む暇もなく震災翌日から上原樹苗の苗木を求めて電話がなりやまない事態に感化され、マイナスの状態からある意味成るべくして事業を再建することに。今では震災前の年間生産量を上回る生産規模を誇り、本数・樹種量ともに他に類を見ない規模を誇る生産者となっています。

震災後復活した苗木圃場

上原樹苗のHPはこちら

4代目社長 上原氏の想い

上原樹苗4代目代表取締役社長 上原和直氏

上原樹苗の4代目代表取締役社長上原和直氏は、21歳で家業を継ぎ2017年に社長に就任。

周囲の農家がどんどん苗木生産を辞めていく中、幼い頃から懸命に苗木を育て続ける祖父の姿を目にしてきました。そんな祖父に上原氏は「なぜ儲からない、みんな辞めるような苗木を作り続けるの?」と聞いたことがあるそうです。祖父は「俺が辞めたら困る人がいるだろうよ」と答えました。

上原氏はその言葉を聞いて、「自分も後を継ごう」と決めたそうです。しかし、「このままのビジネスモデルでは先が見えている。自分がやるからには、売れるものをつくるだけでなく、世の中にちゃんと貢献できるものをつくっていかなければ」と、木材としての針葉樹苗木生産をほとんどの農家が占める中で、上原樹苗は広葉樹苗木を積極的に取り入れた大量多品種生産というビジネスモデルを確立していきました。

今では、日本全国から上原樹苗の苗木を求めて注文が入ったり、「こんな山にしたいんだけど、どんな木を植えたらいいか」という相談があるといいます。

東日本大震災の津波によって、「残ったのは命だけだった」という状態から、上原樹苗を継続させた背景には、幼き頃に祖父が言っていた「俺が辞めたら困る人がいるだろうよ」という言葉と同じ想いが上原氏の胸の中にありました。

当時を振り返って上原氏は、このように語ってくれました。
ーー大量多品種生産というビジネスモデルが形になってきて、全国からいろんな要望をいただいて商いをさせてもらっていました。そんな中で、自分が大切にしていた自然の力によって一瞬にして会社がなくなったわけです。津波は人間の力ではどうすることもできない。あの出来事は、自然の偉大さとか自然の優しさ、怖さを、本当の意味でより深く考えるきっかけになりました。だから二度と起きてほしくはないけれど、僕にとってはあの経験はある意味宝で。当たり前にある自然や森ともっと向き合っていかなければいけないという考え方を広くみなさんに知ってもらうためには、この事業を津波ごときで辞めるわけにはいかなかったんです。ーー
上原社長のインタビュー記事(Forbes JAPAN)

苗木で日本の森林を豊かに

従来の苗木よりも植え付けが容易なマルチキャビティーコンテナ苗

そんな上原樹苗は、現在社員15名で多品種の苗木を生産。その用途は、林業用苗木から環境・国土保全用苗木、緑化用や園芸用苗木と多岐に渡ります。スギやヒノキといった針葉樹は木材として需要が高く、戦後日本国内では山奥や急斜面などの不整地にまで針葉樹を多く植えてきました。しかし、元々山は針葉樹のみで構成されているわけではもちろんありません。『適地適木』その土地や気候に合った木を植え、用途や管理方法、目的に合わせてバランスよく植えられるのが望ましい形です。そんな日本の森林をより良いカタチにデザインしていくことで、人と森は共存し、そこから恩恵や安心をもらう。

そんな『森林デザイン』という考え方を後押しするために、上原樹苗は大量多品種の苗木生産を行っています。

上原樹苗のSNSから日頃の取組みも覗いてみてください。
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