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冬の贖罪シリーズ 〜感染〜

あのテレビの様な光景が、
まさか自分に訪れるなんて思わなかった。

「誰と話したんだ」
「どこの課と接触した?」
「ご家族は陰性なのか?」
「休みの日はどう過ごした」
「ほかに触った箇所は?」

すみません…
すみません。
すみません。


僕は常日頃から、ちゃんとしていた。
マスクは毎日してるし、
アルコールや検温だって言われる通り実践してた。
マスクをしていない同僚にだって注意をしていたくらいだ。

なのになぜ…

朝起きると身体が怠くて、寒気がした。
熱を測ると微熱があった。
会社の規定で熱があれば、休む事と明記されていた。
会社に休む旨を伝えて、自宅でできる検査キッドで調べてみた。
陰性証明書が欲しかった。
だけど結果は陽性!
なぜ?なぜだ。
自粛要請にも従い、徹底的に自己防衛していた筈なのに…

その頃会社では
ヒソヒソ
「営業2課のやつかかったみたいだ」
「あのおとなしそうな」
「2課はバイキン要注意課だな」
「全席アルコール消毒してくれ」
「迷惑な話ね。」

約10日間の隔離期間を終え、僕は出勤した。
僕の机の物は全て廃棄されていた。
思い出の写真もない。
早速、フェイスシールドをしている部長から質問責めにあう。
「誰と話したんだ」
「どこの課と接触した?」
「ご家族は陰性なのか?」
「休みの日はどう過ごした」
「ほかに触った箇所は?」

すみません…
すみません。
すみません。

冷ややかな視線を送る
同じ課の仲間たち。
「なんで俺らの部署から出るんだ」
「痩せてるからじゃない?」
「俺たちまでバイキン扱い、
 たまったもんじゃねぇ」

(バイキン…)
(たまったもんじゃない…?)
(なんで僕は謝ってるんだ…)

「おい!お前聞いているのか!?」

「…。」
「…。」
「…。ふざけるな。」

「おい!お前何言ってるんだ!」

「ふざけるな!!」
ザワザワ…

「お前誰にむかって…」

「おいお前!
 お前が守ってるのは自己保身だろ!
 お前が守らなくちゃならないのはお前の部下だろうが!
 なのに、発症した部下を腫物みたいに扱う。
 誰も罹り(かかり)たくて罹ってるわけじゃない!
 寧ろ、普通に罹るインフルエンザよりも
 陽性になりやすい検査で何がわかる?
 何が感染者だ!
 無症状でも感染、感染。
 ウイルスに侵されてるのはお前たちの頭だろうが!!
 マスクをしてれば大丈夫?
 何が大丈夫!?
 ウイルスは飛沫感染じゃなく接触感染。
 マスクの網は悠々マスクを潜って通り抜ける!
 にもかかわらず、密だのクラスターだの!
 マスクをしていれば大丈夫?
 何が大丈夫?
 お前らの頭が大丈夫かよ!!」

…シーン

「俺も聞いたことがある、
 国民の8割が感染して初めて集団免疫ができるって。
 罹っても大事にならないように免疫力を高めろって。」
「こんなこと繰り返してたら、
 ホント誰も幸せにはなれないし、
 楽しいことが無くなっちゃうね。」
「保身保身で言いなりになるのもうやめよう。」
「治って良かった。今日からまたよろしくな!
 そうそう、お前が大事にしてた写真ちゃんと取ってるから安心しろ。
 しかしおとなしいお前があの部長に楯突くとはな!
 気持ちよかったわ。」


明日は我が身。

その時、本当に助けて欲しいのは、
病気じゃないかもしれない…
正直に生きれない
生き辛さなのかもしれない。

上田慎一郎
免疫力あげるため
自家製の糠床で日々せっせと
漬物を漬ける。
冬の食材

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