伊藤詩織さん「ブラックボックス」の真相は「ブラックアウト」なのか

ブラックアウト_それはアルコール健忘症のことである。簡単に説明すると「飲み過ぎで記憶が”飛ぶ”」。

多くは「停電」などの意味に使われる事が多いが、今回記事に引用する「ブラックアウト」は医学用語になる。文字通り大量の飲酒により、意識が暗転し記憶が一時的に消失する事を言う。

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伊藤詩織さんの著書『ブラックボックス』にはこの事件について、実は本当の真相が隠されているのではないか、と言う箇所が多数散見される。(伊藤詩織さんを詩織さんと表記します)

ジャーナリストで映像作家の伊藤詩織さんは元TBSワシントン支局長の山口敬之さんと飲食した際に意識を失い、山口氏の宿泊先のホテルで性被害を受けたと記者会見で告発し、「真実は、ここにある」と表題された『ブラックボックス』を出版した。(以下、『ブラックボックス』を詩織さん裁判ウォッチクラスターの慣例に従い、『BB』と表記します)

詩織さんは著書『BB』の中で、「デートレイプドラック」の存在を読者に示した。意中の相手を意識不明にして、行為に及ぶ目的を果たす為の飲み物等に入れる薬物のことだ。(この件について民事裁判では争われなかったようだ)

今回、改めて、『BB』や「日本外国特派員協会」で詩織さんが行った記者会見に対する山口氏の反論を見てみようと思った。両論併記を重視する為である。

捜査員が山口氏に示した「ブラックアウト」の可能性

すると、山口氏は捜査員(『BB』のA氏なのかは不明)から次のように言われている。

「あなたの供述は何度聞いても詳細で矛盾がない。他方、詩織さんは朝まで記憶がなかったと言っている。双方の主張は一見矛盾しているようだが、2人ともウソをついていない可能性が1つある。それは『ブラックアウト』だ」(誰も証明できない「密室」での出来事)より

後編ではこうも続いている。

捜査員が示した可能性は、簡単に言えば「飲みすぎて記憶が飛んでしまった」という、酒飲みにとってはよくあるありふれた話です。しかし、しかしです。私と同じく、あなたも捜査員からブラックアウトの可能性について説明を受けたはずだ。そして、あなたは記憶がないからこそ、「ブラックアウトではなかった」と断言することは絶対にできない。(③詩織氏特有の性質――「盗撮されたに違いない」より)

飲み屋で意気投合して気がついたら知らない人の家で寝ていた。駅の階段で倒れていた_そんな泥酔の上での過ちだと言う可能性_

「よくある話」は性被害についてなのか

詩織さんは『BB』の中でこの事件のことを捜査員A氏から「よくある話だ」と言われたとして取材に応じた時も性被害を「よくある話で済ませてはダメ」と語っています。

上記リンクの山口氏の反論手記を読むと、捜査員が詩織さんに語った「よくある話」はブラックアウト(酒の上の過ち)のことではないかと推察される。しかし、 『 BB』では捜査員から意識を失ったことの可能性の1つとしての示唆されたはずの「ブラックアウト」のことは一切触れられていない。

『 BB』の捜査員A氏と詩織さんが事件当夜の記憶について緊迫したやり取りをしているところを書き出してみる。

詩織さんはブラックアウトの可能性を読者に伝えていない

「裁判でもし、それまで記憶がなかったら、どう説明するんですか?と決めつけられた。私は悔しかった。なぜ記憶をなくしたのかなぜ急に戻ったのか聞きたいのは私の方だった。そして実際にその疑問があったからこそ、すぐに被害を訴えることができなかったのだ。」(第3章 混乱と衝撃 p92 )

この部分の詩織さんの苦悩と、その後の数ページを使ったデートレイプドラッグの事件簿が続く。

読者には山口氏がデートレイプドラックを詩織さんに盛ったのだろう...と想起させるのに十分なボリュームがある。

詩織さんが捜査員から「ブラックアウト」の事を聞かされていたのにもかかわらず、読者に隠して、「なぜ記憶がなくなったのかわからない」などと書いたのなら大問題だ。

詩織さんが自らの意識で大酒をのみ、ブラックアウトで意識を失ったのであれば、詩織さんが今メディア界に持つ「性被害者として実名で告発した勇気ある女性」としての立場を危うくするものだからだ。

また捜査員に示唆された「よくある話」(アルコール健忘症で知らない人の家にまたはホテルに泊まってしまってトラブルになる)を昏睡レイプ被害とすり替えて警察批判やレイプ被害の対応の遅れた国だと海外で吹聴するのも問題がある。

これらの行為を自己優位性を高めるために意図的にしたとしたら_

そう仮定し、もしそれが裁判で証明されたら、詩織さんを応援していた人たちは大恥を掻くことになる。

また履歴書を送ってもらったとはいえ、よく知らない相手を自室に泊めてトラブルになっただけだった場合、「レイプ魔」などと山口氏が世間から名指しされた事への名誉回復の道のりは絶望的に遠い。(この部分は山口氏の不注意だと思います)

★私は双方に落ち度あり

あとがき:私はこの事件は社会人として双方に落ち度があったとする立場です。不起訴も納得していますし、不同意の行為で賠償が出たなら払えばいい。しかし、山口氏がやってもいないことまでやっただろう、レイプだったろう、権力にもみ消しさせたろう、と論拠なしに山口氏を叩くのは下品だと思いますし、ブラックアウトでのいざこざで酔って意識を失っただけだったのなら、詩織さんを「枕営業」などと揶揄するのも同じく下劣だと思います。(もしそうならその後の詩織さんの性被害者としての情宣、公表行為は問題があり、また別の検証が必要になります)

この事件は万事、刑事、民事ともに裁判に任せればよろしい。司法のプロが正解を見つけてくれます。


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