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2学期制、3学期制のメリット、デメリット

弊教室の在籍者は、小学校1年生から高校3年生までだが、25名の小規模教室であるにも関わらず、4小学校、5中学校、4高校と、学校も学年も実に様々であるが故に一斉授業という形式は取れない。従って教室では自学を中心として、本人が学習計画を立てている。

そんな状況下のとある5月の光景のこと。

高校生は明日からテスト、I中の子は明後日からテストということで、それぞれテスト範囲を黙々と(睡魔と戦いながら)さらっている。が、H高校はすでにテストは終わっていて、H1中も終わっている。しかし、F中は来月まで定期テストの日程はない。

どういうことかと言えば、テスト期間というのは、それぞれの学校で実施日が異なり、さらに、2学期制か3学期制によって、テスト実施回数も異なるが故に起こる現象である。

このようなことは年間通してなので、弊教室には定期テスト対策講座なるものは設置できない。だからといって皆得点が低いわけでもない。それは記憶の仕方を理解した上で学習計画を立ててもらっているからだ。今回は、2学期制、3学期制それぞれのメリット、デメリットについて纏めておきたいと思う。

2学期制、3学期制におけるメリット、デメリット

先にTwitterアカウントにてアンケートを行った結果、その多くは3学期制を採用している学校に在籍していることがわかった。

当塾生との比較でいけば、若干2学期制をとっている学校が多いように思われるが、これは都市部の私立、国立小中高に在籍している方が多いためではないかと予想される。

弊教室の学区では、F中やH高、平川市の小中は子どもたちが小学校に在籍していた頃は2学期制であったが、数年前より3学期制に戻した。その他の弘前市内の学校は大抵3学期制だ。2学期制だと、年間の大きな定期テストは4回になり、試験範囲が膨大になる傾向がある。
これに対して、3学期制は5回、こまめに進度に合わせて習熟度の確認が出来る。
3学期制のほうが学習範囲が狭くなり、生徒にとって負担は少ない。しかしながら、これまでの経験から総合的に考えると、2学期制に慣れてきた生徒のほうが、高校入試のように試験範囲の無い実力テストなどで力を発揮できているように思われてならないのだ。その理由を考えてみたい。

先にも述べたが、2学期制では試験範囲が広いため、日頃からコツコツと勉強を積み重ねていかないと、試験範囲を全てこなすことは難しい。故に日頃の学習習慣がなければ、定期テストで高得点できない。すなわち、カリキュラム上、広い範囲を満遍なく勉強する方法を3年間の定期テスト12回をこなすうちに自然と身につけられるようになっているということが言えよう。

片や3学期制の場合、その多くは単元テストの延長で試験範囲が狭く、短いスパンでテストがあるので、比較的短い勉強時間で試験範囲をさらってしまうことができる。しかしこれは裏を返すと、いわゆる一夜漬けに近い形でも得点できるということである。

短期記憶から長期記憶へ

さて、ここで記憶とは、短期記憶と(中)長期記憶、とがあるということを確認しておこう。この中で学習面に関係するのは主に長期記憶の中でも意味記憶という知識の記憶である。

脳の世界 より 記憶の分類 三上章允

短期記憶は、一時的な記憶の保存で、脳内容量が小さい。これに対し長期記憶は、上書き保存にかなり時間がかかるものの、一度完全に記憶すれば、かなりの率で長期保存しておくことができる。その容量も大きく無限大といわれている。
例えば単純な漢字テスト、単語テストであれば、短期記憶、つまり一夜漬けでなんとかなるものの、難易度の高い高校入試、大学入試ともなれば、短期記憶を復習を繰り返して長期記憶に変えなければならない。そして試験においては記憶として保持された長期記憶の中の膨大な知識からいかに短時間で適切な解を想起、選択、アウトプットできるのかということに全てがかかっている。

すなわち、3学期制で慣れてきた生徒は、その期間が短い故に、学習内容が短期記憶で終わってしまっているかも知れないのだということだ。

かの有名なエビングハウスの忘却曲線(ぼうきゃくきょくせん)は、記憶の中でも特に中期記憶(長期記憶)の忘却を表し、これは一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合を節約率としてグラフ化したものだ。それによると、

20分後には、節約率が58%であった。
1時間後には、節約率が44%であった。
約9時間後には、節約率は35%であった。
1日後には、節約率が34%であった。
2日後には、節約率が27%であった。
6日後には、節約率が25%であった。
1ヶ月後には、節約率が21%であった。

ということである。すなわち、次のテスト範囲を勉強するころには、以前のテスト範囲は8割以上復習しないと定着できないということになり、長期記憶として残っていない学習法では、入試のような範囲の広いテストにおいては、なかなかうまく答えを導き出すことはできないのだ。

このように、定期テストで良い得点だったとしても、2ヶ月後にはほぼ忘れている状態にまでなっているため、休み明けテストや年度末の実力テストにおいて定期テストの時のような結果が出せず、その落差に驚き慌てるケースがままある。例えば

学校の定期テストでは450点取れていたのですが、直近の模擬テストになると350点くらいしか取れず、伸び悩んでいるのですが、どうしてでしょうか?

というご相談を受けるが、これはそもそも伸び悩んでいるのではなく、もともと、それだけの分しか勉強して来なかった、と言わざるを得ない。つまり、一度問題を解いて分かったところを復習する機会がなく次の試験範囲に移行するため、短期記憶から長期記憶に変わるような復習時間が少なすぎるためなのである。

つまり、1ヶ月毎に細かく範囲を区切って定期テストをやることは、生徒にとっては勉強範囲も少なく、繰り返し復習せずとも短期記憶の範囲内で得点できる3学期制のほうが得点しやすいが、それゆえに忘却も早いということなのだ。

これをカバーするには、やはり、意識的に前単元の学習内容を数割出題範囲に出したり、夏休み明けや、冬休み明けのテスト、また学年末の実力試験等の機会において、前期分、後期分、通年分の広範囲の試験範囲の際にしっかり復習をしておく必要がある。にもかかわらず、実力試験は内申点、評価に関係がないからといって、実力試験を疎かにしてしまう生徒たちもいるのだが、その結果が上記のような顛末になりがちだ。

これに対し、2学期制の学校の生徒たちは、試験機会が少ないにもかかわらず、定期テストと実力テストの差が少ない。これはやはり、日頃から広範囲の試験範囲に慣れ、計画的に試験勉強を進められる生徒が多いからではないかと思われる。

効果的な復習方法は?

では、いつ、どのタイミングで復習をしたらよいのだろうか?

良く言われるのは、先のエビングハウスの忘却曲線に従い、

1日後→1週間後→1ヵ月後→半年後

という拡張分散学習が謳われている。
しかしながら、高島徹治氏は「バラード=ウィリアムズ現象」をあげ、
2、3日後に復習することを推奨している。

弊教室では、後者の説に即して、週3回のフリーコース受講を特に充実させている。これによって、効果的な復習習慣が身について欲しいと思っている。そして、一回ごとの定期試験、実力試験をはじめ、英単語テストや漢字テスト、計算テストのような小テストにおいても、手抜きすることなく全力で学習してほしいということなのだ。
無論、学校教育において、無駄、行き過ぎとされる宿題、課題も多いことは承知ではあるが、それでもやはり、教室現場の状況に応じて課題が出されていることを考慮しながら、うまく宿題と向き合っていきたいものだ。

記憶の保存とコンピュータでは、ボタン一つでデータを上書きし、保存できることであるが、人間の脳ではなかなか困難な事である。しかし、人間の脳は、コンピュータよりはるかに多くの情報を統合し、融合して新たな発想を生み出す力を持っている。

近年、AIの進化によって、近未来の仕事の大多数は人間ではなくAIにとって変わるとされているが、こうした中で次世代の人間は、AIがなしうることができない何か創造的な能力のある人間が生き残っていけるのではなかろうか?

創造力をつけるには、まずそのベースとなる膨大な基礎知識を身につけることが重要だ。そのためには、義務教育期間にしっかり勉強しておくことが大切だ。

勉強は、一日にしてならず


これさえやれば!といったような勉強法もなければ、指導法とかの問題でもない。ただひたすらに勉強すること、たったそれだけのことだが、これが一番難しいことでもある。

巷では、ただひたすら勉強するだけの動画配信が人気だそうだ。それは1人地道にコツコツと言われても心細いからであろう。

弊教室にも、頑張りたいと願う生徒が、それぞれ状況は違いつつもその違いを意識しながら自主学習をするスタイルが自然と出来ている。

私はそんな皆さんをそっと応援していきたいと思う。

上田学習教室
室長 上田さおり

※エビングハウスについての記述を訂正加筆しました(R2.3.9)

※この記事は2018.5.16日のFBより、加筆修正しました (R3.6.7)

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