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つちや水源など貴重な湧水の水利権も上田市のものではなくなるのか?~2024年6月議会④~

水道料金は大幅値上げ必要?施設の維持更新費捻出で市が試算

(斉藤達也) 次に移ります。次に、今年の秋頃に公表される予定の上田市独自の財政シミュレーションに関連して質問させていただきます。5月24日付の信濃毎日新聞の記事の見出しには、「上田市水道料金大幅値上げ必要、施設の維持更新費捻出で市側が試算」とあり、内容としては、国の基準に従うと市の上下水道ともに多額の資産維持費が必要で、それらを捻出するための料金設定にしたいということを市が上下水道審議会に提案したという内容でした。
 そこで、審議会で示された上下水道料金の試算と資産維持費に関連して、浄水場の維持管理費についても伺います。
 まず1点目として、5月23日に開催された上田市上下水道審議会で示された上下水道料金の試算について、その考え方はどうか。
 2点目として、染屋浄水場に代表される緩速ろ過の浄水場は長野県企業局の諏訪形浄水場のような急速ろ過の浄水場と比較した場合、維持管理に係る費用はどうか。
 以上2点お尋ねし、第4問といたします。

上下水道局長(宮島裕一君) 初めに、上下水道料金算定について申し上げます。上下水道料金については、法令にのっとり3年から5年という定められた事業期間ごとに収支を見据えた料金設定を行うこととされております。市では、おおむね4年ごとの料金の見直しを行っておりまして、次回の令和7年度から10年度までの上下水道料金について、この4月に上下水道審議会に諮問したところでございます。
 料金算定に当たりましては、サービスの提供に係る費用を利用者からの料金収入で賄うことを基本といたします総括原価方式を採用しておりますが、人件費、動力費、修繕費、減価償却費、支払利息などの維持管理経費に将来の施設の拡充・強化のための財源となります資産維持費を加えたものを総括原価として算定することとされております。
 また、令和5年7月に発出されました厚生労働省通知においては、令和3年度の管路の経年化率が全国平均で22.1%と年々上昇している一方で、管路の更新率が0.6%にとどまり、低下傾向が続いていることや、基幹管路の耐震化適合率が41.2%と依然として低い水準にとどまっている現状を指摘し、安定的な財政運営を行うために、資産維持を含む適正な水道料金を設定するよう改めて求められたところであります。この資産維持費については、建物、機械などの償却資産額に一定の率を乗じて算出されますが、永続的な給水サービスの提供を確保できる水準といたしまして3%が標準とされております。
 5月に開催されました上下水道審議会では、こうした資産維持費を含む算定方式をご理解いただくために、前回の改定時に使用いたしました令和3年度から6年度までの事業費をベースとして、仮に資産維持率を1%、2%、3%とした場合に、どの程度の料金改定となるかをお示ししたものでございます。
 現在、物価高騰、労務単価の高騰、動力費の高騰などにより、上下水道事業ともに厳しい経営状況にございますので、令和7年度からの事業期間におきましては、これらの影響を的確に把握するとともに、資産維持費を適正に計上し、将来世代との負担の公平にも配慮した適正な料金設定となるよう上下水道審議会でご審議いただきたいと考えております。

染屋浄水場の緩速ろ過(生物浄化法)と急速ろ過のコスト比較

 次に、緩速ろ過と急速ろ過の維持管理費についてでございます。市の水道事業では、緩速ろ過方式と急速ろ過方式の浄水場がございますので、比較的規模が近い、緩速ろ過方式の石舟浄水場と急速ろ過方式の腰越浄水場の維持管理費での比較とさせていただきます。また、浄水場の立地あるいは取水方法等の違いによりまして管理費も大きく異なってまいりますので、比較する費用をろ過方式の特性を反映している薬品費、燃料費、光熱水費、動力費、委託費、材料費、修繕費に限定をさせていただき、令和3年度から5年度の費用を配水量で割った1立方メートル当たりの維持管理費での比較とさせていただきます。
 試算結果でございますが、緩速ろ過方式の石舟浄水場の維持管理費は1立方メートル当たり17.1円、急速ろ過方式の腰越浄水場は17.8円という結果でございました。
 急速ろ過方式では、常に凝集剤を使用して凝集沈殿させるため、薬品費が多額であることや、ろ過層を短期間で洗浄する機械設備の維持管理費など緩速ろ過方式にはない費用がかかってまいります。
 一方、緩速ろ過方式では、ろ過池閉塞時の砂揚げ(砂の削り取り)といった業務ですとか、ろ過砂の再生・補給といった急速ろ過方式にはない費用がかかってまいります。今回の試算では、条件が限定された一部の検証ではございますが、ろ過方式が異なる場合であっても維持管理費に大きな差が生じない結果となったところでございます。
 以上でございます。

(斉藤達也) ご答弁いただきました。緩速ろ過の石舟浄水場が1立米当たり17.1円、腰越浄水場、急速ろ過なのですが、そちらは17.8円とそれほど大きな差はないという答弁でした。ただ、今、局長の答弁の中にもありましたとおり、期間も限られていますし、特定の条件の中での比較ということですので、今後、こういったことに関しては、より広域化する場合の検討を踏まえて研究していったほうがいいのではないのかなというふうに個人的には感じました。

能登半島地震の教訓をどう生かしていくか

 次に、5月に開催されましたおいしい水を広める市民の会の皆様の勉強会では、能登半島地震の教訓から分散型のインフラ整備をどうしていくかですとか、豊かな水源や緩速ろ過の浄水場を有する上田市水道をどのように評価するかですとか、あとは岩手県の矢巾町のように若い世代が議論に加わる仕組みをどうつくっていくかなど新たな課題も指摘されたところでございます。
 そこで伺います。1点目として、能登半島地震の教訓を踏まえ、広域社団法人土木学会は、上下水道については分散型・自給自足型(オフグリッド型)のインフラ導入についても検討する必要があるとの見解を示しているが、上田市における分散型水道の整備の方針はどうか。
 2点目として、将来にわたって水道事業の広域化の影響を大きく受ける若い世代が議論に加わるべきだと考えるが、どのように進めていくのか。
 3点目として、上田市は真田・武石地域を中心に湧水、地下水、伏流水など豊富で良質な水源を有しているが、その資産価値をどのように評価しているか、またそれらの水源からの給水地域及び人口はどうか、広域化した場合の水利権はどうなるのか。
 以上3点お尋ねし、第5問といたします。

上下水道局長(宮島裕一君) 初めに、分散型水道の整備の方針についてでございます。市の水道施設の整備については、市町村合併以前より旧上田市において水質悪化や水量不足等の課題を解消するために、浄水場への集約型に切り替えてきた経緯がございます。また、合併後の近年では、真田地域におきまして簡易水道事業の統合により施設の統廃合を行っておりますが、これらは水質の改善を図りつつ、維持管理コストを削減していくとの方針の下に進めてきたものでございます。
 現在、水道事業で使用する水源は、統廃合の結果、26か所となってございますが、廃止により使用しない水源4か所につきましても、水をかけ流すなどの方法により管理を行っているところでございます。能登半島地震の教訓から分散型・自給自足型の検討が必要と示されておりますが、地震などの有事の際には非常用の水源として活用が図られるよう、引き続き適切な維持管理に努めるとともに、基幹施設の耐震化や給水系統の連絡管の整備など防災・減災の対策に取り組んでまいりたいと考えております。

若い世代との議論の進め方について

 次に、若い世代との議論の進め方についてでございます。将来の水道事業の在り方を検討する上で、若い世代が議論に参加することは非常に重要であると感じております。しかし、昨年実施いたしました市民説明会では、155人の方にご参加いただきましたが、このうち50歳以上の参加者が8割を超え、若い世代の参加は極めて少ない状況でございました。
 また、18歳以上の市民4,000人を対象としたアンケート調査では、40.1%に当たる1,604人の方から回答いただきましたが、10代から30代までの回答率はいずれも20%前半であったことからも、若い世代の関心をいかに高めるかが課題であると認識しております。
 そのような中、昨年は、市民説明会の状況を撮影し、ホームページから動画を視聴できるようにいたしましたが、こうした取組に加えまして、少しでも若い世代の目に触れるようSNS等を活用した情報発信にも努めることとしてございます。また、若者や子育て世代など幅広い層から意見を聞くためには、どのような形態で説明会等を実施することが有効か、議員ご紹介の先進事例等も参考に研究し、取り組んでまいりたいと考えております。いずれにいたしましても、年代にかかわらず全ての方が将来世代の視点に立って考えてみることが重要でありますので、そのような視点で議論が進むよう取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。

広域化した場合、水利権は企業団に引き継ぐことを想定

 次に、水源について幾つかご質問いただきました。まず、上田市水道事業における水源の状況でございますが、千曲川をはじめとする表流水が6か所、湧水が13か所、地下水が6か所、伏流水が1か所の計26か所となっております。
 湧水水源等の資産価値についてでございますが、特に湧水、地下水については良質で浄水処理が不要な水源が多く、施設整備や維持管理コストを抑えることが可能でございます。また、地域の皆様が、こうした自然の恵みを地域の宝として長年にわたり保全されてきました貴重な水源でもございますので、これらを有効に活用させていただくことはもとより、後世にしっかりと引き継いでいかなければならない貴重な財産であると評価してございます。
 次に、湧水水源等の給水区域・人口についてでございますが、令和4年度末の数値で申し上げます。まず、真田地域につきましては、一部の地区を除き湧水、地下水及び伏流水を水源としております。これらの給水人口は約9,500人でございます。また、武石地域の水源は、湧水及び地下水となっておりまして、給水人口が3,200人でございます。
 このほか上田地域では、岩清水・長入地区の水源が湧水及び地下水でございまして、給水人口は約200人となっております。これらを合わせますと上田市水道事業における給水人口の約1割に当たります約1万2,900人への給水が、湧水、地下水または伏流水を水源としたものとなっております。
 最後に、広域化した場合の水利権の取扱いでございます。水道事業広域化の検討においては、一部事務組合であります水道企業団の設立を考えておりますので、各事業体の保有します水利権についても企業団に引き継ぐことを想定しております。今後、協議会において詳細な検討を行ってまいります。
 以上でございます。

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