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道徳の時間の「考える」とは NO2

 本シリーズでは、道徳科の授業で子どもが「考える」とはどう言うことなのかについて迫ってみたいと思います。
 前号では、子どもが教材と自分自身のことを語り始める中間的モードを引き出すための3つ方略のうちの「エピソード化」について述べました。
 本号では、二つ目の方略「多元的機能化」について述べてまいります。
*前号と合わせてお読みいただけると幸いです↓

1 多元的機能化とは

 前号では、ものごとの背景となる具体的なエピソードを引き出すための「エピソード化」について述べました。
 本号では、方略2の「多元的機能化」について迫ってみたいと思います。
 まず始めに、東京大学名誉教授である佐伯氏は多元的機能化を以下のように述べています。

多元的機能化とは、ものごとの「構造」を見て、その機能を様々な観点から見ることである。機能の理解はとかく「固定化」しやすい。「○○は○○である」と決めてかかり、それ以外の目的に使えることに気づかなくなる。大切なのは同一のものが多様な機能を果たすことに気づくことである。

 つまり、子どもは一面的な見方に固定化することが多々あるため、新たな視点や観点から考えることで、「このような意味もあるんだ」「○○の状況と同じなんだ」などと、多様な機能に気づくことが重要であり、そうすることで子どもの思考が働き始めると述べています。

2 多元的機能化を引き出す

 ではどうすれば、子どもの一面的な見方を、多様な機能に気づかせならが多面的・多角的な見方へと発展させることができるのでしょうか。
そのためのポイントは・・・

「やはり、問い返し」です。

 子どもの「固定化」された一面的な見方に対して、「○○の立場から考えたらどうだろう」や「○○することは、今後のこと考えても正しいと言えるのか」など、多様な視点や観点から問い返して、新たな見方を与えてあげることが大切だと思うのです。
例えば・・・

教材「くずれ落ちただんボール箱」内容項目:親切、思いやり
(主なあらすじ)
主人公の私は友達の友子と一緒にショッピングセンターに出かける。売り場の狭い通路に積んであっただんボールをはしゃいで倒した5才くらいの男の子は、一緒に来たおばあさんが元に戻そうとするのも構わず、おもちゃ売り場に1人で歩いていく。たまたま居合わせたわたしと友子は、見かねて「迷子になってはいけないので、わたしたちが片付ける」と申し出る。
おばあさんが男の子を追ってその場を去った後、だんボール箱を片付けていると、店の人が来て、2人が倒したと誤解する。「こまるわね、ここは遊び場じゃないのよ」・・・
 2人は、「こんなことなら片付けてやらなければよかった」と思いながらも、店の人と一緒に最後まで片付けた。
 後で、先ほどのおばあさんがやってきて、「先ほどはありがとうございました」とお礼を言うも、「いいえ、いいんです・・。」と何とも後味の悪い2人だった。
 3学期の始業式に、「ショッピングセンターの人から、お詫びとお礼の手紙が来た」と校長先生が紹介し、「本校にこんな立派な人がいて、うれしい」とほめてくださった。

【授業展開】
T:親切をしたのに、店員さんに注意された二人はどんなことを考えていたのでしょうか。
C:やらなければよかった。
T:ということは、二人の親切はあまりいい行為ではないの?
C:親切をしたのに注意されたから損しているからいいとは言えない。
C:注意されるくらいならやらない方がいいと思う。
T:では、店員さんは、どうして学校に手紙を送ったのだろう。
C:自分の勘違いに気づいたから。
C:申し訳ないと思った。
T:本人に届くか分からないような手紙を「送らないといけない」と思ったのはどうして?
C:二人がやった親切を無駄にしたくなかった。
C:二人の親切をどうしても学校に伝えたかった。
T:二人の親切は、たとえ勘違いされても見ている人には感動や感銘を与えるんだね。

 このように、最初は主人公の立場(感情)からしか考えていなかった子どもに対して、「定員さんが手紙を送りたくなった理由」や「校長先生が全校児童の前で手紙を読みたくなった理由」などを問い返していきます。
 そうすると、子どもの一面的な見方が多様な見方へと発展し始め、一見無駄と思われた親切の機能が、視点を変えて考えると有効な親切だったんだと気づくことができるのではないでしょうか。
 このように、物事を多様な視点から考えるように問い返すことで、子どもが本気で考え始めます。そして、多様な機能に気づかせることで、深い学びの実現が可能になるのです。

次号では「モデル化」について迫っていきたいと思います。

*私のnoteでは、2週間に一度、「道徳科の授業づくり」について書いております。興味のある方はフォローして頂けると幸いです。

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