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やがて故郷を失う〜限界集落の存続問題〜誰が故郷を思わざる

 普段は楽観的な私ですが、相続の相談を受けていると少し暗澹たる気持ちになる時があります。
それは、不動産の問題。いわゆる負動産(良い言葉ではありませんね)、そうです、空き家問題や農地などを相続人の子供達が欲しがらない、誰も相続する人がいないと言う問題です。

 先日訪れた地域は、限界集落と言ってしまっても違わない地域。かつては、鉱物の産出に湧き、昭和の高度成長時代には、それなりの賑わいを見せた場所でありました。
今は、地場産業も衰退、公共交通もコンビニも無く、若い人を呼び込むには、相当の対策を取っても難しいと感じます。

隣県の一部地域への最短のルートとなる、かつての街道沿いには、築50年以上、あるいは80、90年と言った歴史のある民家が連なっており、味わいのある景観であります。

底抜けに青い空と滔々と流れる碧い河、こう言う故郷を失うのは寂しい

しかしながら、その子供たち、孫たちは故郷を出てしまっての都会での快適な暮らしがあり、確かに「相続したくない」と感ずるのは無理ありません。活用の難しい不動産の管理は重荷になると思います。

過日、その地域出身のお客様と印象深い面談がありました。お客様は代々続くお家のご長男であり、家屋や田畑を全て親から相続いたしましたが、その後、高齢になった現在は、退職を機に、生活の快適さを求め、20〜30キロ先のそのエリアの主要都市へ家を建て、移住したのです。ご実家は空き家です。

今度は、ご自身の相続の際に不動産をどうするかの話題になった時にふと、こう呟かれたのです。
「あんな土地、誰も欲しがらない。周りの集落もみなそうだ。」
そこには、諦観を通り越した故郷を失うと言う不条理とも言える絶望的な寂しさ虚しさが、無意識のうちにも、込められていたのを感じました。

こう言う場所は、今話題の相続土地国庫帰属制度には当てはまらないようです。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html

*写真は、本文の内容とは関係ありません。


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