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財産の中に負動産があると感じている方の場合

 地方在住の方にとって、不動産を持っていることが相続の時に悩みのタネだと言う状況になっております。先祖代々の田畑などの農地、はたまた山林など。そのような日常あまり使わない不動産に限らず、子供たち相続人が全員都会に出てしまい、都会で自宅不動産を持っている場合などまだまだ価値のある自宅なども、当該不動産を引き継ぐ人がおらず悩ましい限りです。

 このような状況の方にとって、とびっきりの特効薬となる処方箋は正直見当たりません。2024年度より、相続土地国庫帰属制度がスタートしますが、概要を読むと、個人的にはなかなかハードルが高いと感じます。国が引き取る際の条件が結構キビシイ感じがするのです。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html

 それでも、相続は待った無しです。お客様とのご相談の中で、子供たちに不要な不動産を相続させて、余計な負担はかけたくないと感じている方は多いです。子供さんへの優しい思いに心を打たれることがあります。
とはいえ、遺産分割協議になった場合、子供さんたち相続人の間で、子供たちにとって「欲しくない不動産」の押し付け合いになるのは必至の状況です。

そんな時、私は一つ提案をいたします。「遺言書を書いて、不動産を信頼のおける一人の子(ケースによっては甥姪)を指名し、その不動産を受ける子には、金融資産の相続割合を多めに指定したらどうか」と。

例えば、自宅や農地、山林を三人いる子のうち、有る程度事務能力が高いと思われる公務員の長男Aに相続させる。そして金融資産の相続分は、
長男Aに50%、
二男Bに25%、三男Cに25%と。
そして付言事項に
「金融資産の配分に偏りがあるのは、不動産を相続してくれる長男に、その管理費用として多めに渡す必要があるかです。固定資産税や火災保険などの管理費用は、その分のお金からお支払いください。B、Cもこの配分に理解してくれるものと思っています。」などと記載すれば、遺言披露時にその付言事項を読んだ子供たちへの理解が進むと予想できます。
(付言事項については、下記リンクをご参照ください)

https://houmukyoku.moj.go.jp/sendai/page000001_00313.pdf

また仮に長男Aがこの配分(不動産の相続すること)に反対する気持ちが起きた場合、「相続放棄」を選択すると予想できますが、その際、不動産のみの相続放棄はできず、金融資産の50%部分も同時に放棄となります。
人情として、金融資産を他の相続人より多い割合で指定を受ければ、たとえ不要だと感じた不動産でもいったん相続する確率の方がかなり高いと思います。そしてまた付言事項に「(ある程度、市場流動性のある自宅不動産などは)Aが相続したあと、売却したり、賃貸したりの判断はAに任せます。」と記しておけば、長男Aさんの心理的負担もかなり減ると思うのです。

山林などを所有していると、管理は大変のようです🥺

このケースの場合、留意する点は、金融資産の割合も含めて、二男B、三男Cの遺留分は確保しておくことです。長男Aへの負担を申し訳なく思いすぎるあまり、二男、三男への配分を極端に少なくすると遺留分侵害額請求等の思わぬ事態を招きかねません。

上記の方法は、問題を完全に解決する万能薬ではなく、あくまで対症療法でしかありません。一刻も早く、国民全体で危機意識を持ち、国全体の課題として検討する必要を痛感します。ある程度人口の多い地方都市でも、郊外へ行くと「空き家」や耕作放棄地などが点在しており、根深い問題を感じざるを得ません。

そしてこのような遺言を書いたり、検討している事をゆめゆめ、子供たちに話して意見を聞いたりしないように。
(大半のケースで反対が起きます。子供たちの了承を得ておきたいと言うお気持ちは十二分に理解できますが)


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