【書評】孫子の兵法:3冊読み比べ


「孫子の兵法」の解説本3冊を読み比べしてみました。(最後のパートで、自分なりの解釈を簡潔にまとめましたのでそこだけでもご覧いただければ嬉しいです)
3冊は、読みやすさで分けると、初級・中級・上級、といった感じです。


以前から孫子の兵法に興味はあったのですが、いざAmazonで検索してみるとめちゃくちゃ解説本が出てくるんですよね。

中国春秋時代の呉の国の将軍孫武によって書かれた「孫子の兵法」は、抽象度が高く、中国においても古来より多くの解説書が出版されていますので(三国志で有名な曹操も解説本出してます)、読む人によって捉え方が異なるでしょうし、ましてや現代人がビジネスで応用しようとすると再解釈が必要な代物ですよね、と思います。

そこでまず初級編として、孫子の兵法の全体像と、現代的意味の超訳を手っ取り早く理解したい方におすすめなのがこちらの書籍です。

(1)【初級編】超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール (知的生きかた文庫)

東洋思想研究家であり、企業や政治家向けコンサルティング企業の代表でもある、田口佳史氏による解説本。

現代を生きる社会人にとって、孫子の兵法が持つ意味を一つ一つわかりやすく解釈してあるだけでなく、全体もしっかり網羅してあります(巻末には書き下し文一覧つき)。

中国語は読まなくていいから、現代の日本語訳を読んで、意味を手っ取り早く理解したい方におすすめの一冊です。

(2)【中級編】孫子・三十六計 ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)

孫子の兵法の中国語と日本語訳が掲載されており、「(1)超訳 孫子の兵法」に比べると、解説が原文により忠実(その分、現代人にとっての解釈は(1)の方がわかりやすいです)。

また、孫子の兵法にまつわるコラムや、「三十六計」(明末清初:17世紀半ばに編纂)についての解説など、中国の歴史や慣用句に詳しい人であれば読んで楽しい内容がふんだんに盛り込まれています。

中国語の原文も読みたい、中国の歴史や慣用句にまつわるエピソードを読んで楽しみたい、という方におすすめです。また、読みやすさは(1)には負けますが、原文に忠実な分、孫子の兵法をより理解することができると思います。


(3)【上級編】アミオ訳 孫子[漢文・和訳完全対照版] (ちくま学芸文庫)

初めて孫子の兵法をヨーロッパ言語に訳したとされるアミオ訳(18世紀初頭)の孫子。守屋先生の本だけあって中身が濃すぎて圧倒されます。

さらに圧巻なのは、伊藤大輔航空自衛官による、「ナポレオンは孫子の兵法を読んだのか」と題する論考が巻末に掲載されており、この論考の情報量と分析力に圧倒されて面白すぎて一気読みしました。専門家ってこういう風に分析するのね(自分には無理・・)と感動しっぱなしでした。

孫子の兵法を骨の髄まで理解したい、ヨーロッパの人々が孫子の兵法をどのように理解したのか興味がある、そんな方はぜひ手に取ってみられることをお勧めします。

(4)おまけ:孫子の兵法についてのざっくりした理解

孫子の兵法は、全13編で構成されており、所々で「敵を知り己を知れば百戦して危うからず」とか「風林火山」の元になる言葉が載っているので、なんとなくばらばらと理解はするものの、所詮戦争について書かれているものなので、これまで何度か読んではいたのですが、イマイチ全体が掴めず、局所的な理解に止まっていました。

今回改めて、13編全体の構成を振り返るとともに、「(1)超訳 孫子の兵法」を真似て、私なりに超訳してみました。

【基本原則】
1 計編 : 内外環境を十分に分析すべき。道天地将法(道理・時宜・場所・人・規則)。
2 作戦編 : 自らのキャパシティをよく理解すべき。長期戦は避けるべき(兵は拙速なるを聞く)。
3 謀攻編 : 情報を収集し、策略を巡らせよ。単に勝利のみを収めることが最善ではない。

【事前の心がけ】
4 形編 : 自らを整え、勝つべくして勝つべし。策略は緻密に練るべし。
5 勢編 : 大隊も規律をもって運用すべし。事には勢いを持ってあたるべし。
6 虚実編 : 敵の虚を突くべし、こちらの実を晒すべからず。

【実行時の心がけ】
7 軍争編 : 機先を制するべし。時には回り道も必要。現場の情報を重視し、場所・時間・相手の動きを見極めるべき。
8 九変編 : 極端に走らず、物事を総合的に判断するべき。状況の変化には臨機応変に対応すべき。
9 行軍編 : いざ動き始めたら、自分の置かれた状況(場所)をよく理解し、注意を怠るべからず。軍隊は規律を持って進むべき。
10 地形編 : 決戦の場所までの道のりを見極めよ。仲間内の信頼関係を強く保つべし。
11 九地編 : 決戦の場所の特徴に応じて戦うべき。普段は大人しくやり過ごし、大事のときに迅速に勝負を決するべし。

今日はここまでです。これまで孫子の兵法は何度か読んできましたが、ちょっとした単語しか印象に残ってきませんでした。今回は思い切って自分なりの解釈を最後にまとめることができたので満足です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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