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友人が他界したからLeicaに手を出した話

駄文を認めるのが好きなのでずっとnoteには興味があったものの、FBで満足してて今まで手を出してなかった。
でもいい機会なので今日からスタート。


2012年にD600を購入してから本格的にカメラをはじめ、GRII、X-Pro2、そしてレンズに至ってはNikonの大三元レンズの2種(70-200と12-24)、SIGMAのART50mmf1.4、タムキュー、Nisi12-24f2.8専用フィルターアダプターとフィルターのセットという、マジで使い方の限定されるもの、さらにはX-Pro2用にLaowaの9mmやVoightlander Nokton Classic 35mmと立て続けに購入しつつも、イベントでもなければカメラを持ち出すこともあまりなかった。
ので、レンズについてるスイッチとか、「ん?これ入れたらやる気が出るの??」とかそういうレベルで何かわらん。

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これではイカン!もっと機材使い倒さねば!元を取らねば!!と思って「毎日1枚写真撮ってネットにアップしよう」と決めたのが去年の6月。
ベロンベロンに酔っ払ってほとんど記憶がないままアップしたり、気がついたら次の日の朝だったりしたけども、決めた通りに365日達成することができた。我ながら良く1日も欠かさずに続けたなと褒めてやりたい。
良かったらその軌跡も見てやって。

ところで、僕は趣味でうどんを打つんだけど、365日の目標達成する数ヶ月前に、NYCに住む友人が「今からうどん食いに行くわ」とか気の触れた連絡してきたので冗談だと思ってたらマジでNYCからわざわざ1泊で僕が住むシンガポールまでやってきた。Leicaを持って。行動も基地外だけど、金銭感覚も基地外だと思った。いつの間に買ったんだよ。
正直Leica自体は「クソ高いし腕もないので憧れはあるけど自分なんかには関係ないカメラ」だった。その時までは。しかし、その頭の狂れている彼女が持ってきた黒くて四角い物体、Leica M10をもたせてもらった瞬間に「欲しい」と思ってしまった。でもその時はまだ「いつか買えればいいな」くらいだった。

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それから数ヶ月たち、あと2週間位で365日を達成するという麗らかな日曜の朝。惰眠を貪り11時頃に目を覚ました僕は、いつもするように寝ぼけ眼でスマホを拾い上げメッセージをチェックした。そしたら、いつもとは違うメッセージが入っていた。


友人が死んだ。


断っておくが、Leica持ってきた頭おかしい件の彼女ではない。別の友人だ。ただ、その友人も僕より一回りほど若く、こちら(私、シンガポール在住です)で出会って、お互いの趣味であるクラフトビールを通じて仲良くなり、何度も盃を交わし、笑い、大いに飲んだ。数日前までFBでもコメントしあってた。

彼女は少し前に結婚し、半年前に娘さんが生まれたばっかりだった。あまりの非実現感に日曜の朝から涙がとめどなく流れ、脱力してしまい、数日間は気持ちがふさぎ込んでしまった。

現実はドライなもので、僕がいくら悲しもうが時間は確実に進んでいくし、彼女の死が「間違いでしたテヘッ」というアニメ的展開もなかった。
そうこうしているうちに僕の365日チャレンジは無事終了した。

人というのは、何かに付けて物欲を正当化するもんだが、物欲の権化の様な僕もご多分に漏れず「このチャレンジを完遂できたらご褒美になにかレンズを買おう」と、チャレンジを始めたきっかけをフルスイングで殴り飛ばすような妄想を抱いていたんだけど、やりきった感がすごかった僕は「あ、Leica買おう」と思ってしまった。

あともう一つ言い訳をするとすると、この1年間、曲がりなりにも毎日写真を撮り続けて来て、自分はやっぱりストリートフォトグラフィーが好きだなと思った事が挙げられる。
Mシリーズはストリートフォトグラフィーには最適なカメラだと言われているし、正直旅行にニコンのバカでかいシステムを持っていって、そのあまりの重さにドイツのノイシュヴァンシュタイン城を見下ろす吊橋の上から奇声をあげながらハンマー投げみたいにぶん投げそうになったことを考えると、旅行用に小さなシステム、というのは理にかなっておーーーっとX-Proさんのことはここでは言うなよ?

実は件の亡くなった彼女とは別に、その半年くらい前にも高校の同級生を亡くした。ここ数年、身の回りで自分と同じくらいの年、もしくはそれより若い仲間を立て続けに亡くした影響に加え、若いつもりではいても自分もすでに40半ばという妙齢、「人はいつまで生きていられるかわからない」「いつか、は起こらないかもしれない」という思いが焦りのように湧き上がってきている。

そんな思いもあって、今一度Leicaをちゃんと調べてみると、高いのは知ってたけど、いやもうね、Leica持ってる君たち、マジで馬鹿なんじゃないの???とドリアンのタネとか全速力で投げつけたくなるような金額。知ってたけど。知ってたけど高いよ!富士山登ってる時に同じ感覚だったよ!!「高いのは知ってたけど、まだ頂上来ないのかよ!!知ってたけど!!!」っていうアレ。


そこでふと、亡くなった彼女の笑顔が浮かんできた。


心は決まった。
そうだ。
人はいつまで生きられるかわからない。
自分の性格上、欲しいと思ったらいつかは買うのはわかってる。
しかも、買うお金は別に問題なく用意できる。
だったら今買おう。
幸い株で儲かったし。(このあと大損して盛大なるマイナス勘定になることを僕はまだ知らない。呪。)

 
そこでM10-Pを買おうとしていた矢先、件のNYCの友人から「M10-Rが出るってよ」という連絡が入った。「M10-Pの限定ホワイトバージョンも買っちゃった♡」という連絡とともに。オマエ、脳みその代わりに頭ン中ベルビアとか装填してんのか。

すぐに彼女に紹介されたドイツのLeicaショップ担当者に連絡をとり、M10-Rが出たら値段を教えて欲しいとお願いした。
次の週には値段と発売日の連絡が来たのでその場で「1台僕のために取っておいて」とお願いした。
流石に「買うので取っておいて」というメールの送信ボタン押すときはめちゃくちゃドキドキした。

だって、日本よりは安いとは言え、ボディーと50mmの単焦点レンズ1本だけで150万だぜ?
150万あれば、皆が機能も値段も高いと崇め奉っているD6に大三元レンズ3本同時購入しても同じくらい。
かたやM10-Rは単焦点だし、マニュアルフォーカスだぞ。
D6がF1マシンだとしたら、M10-RなんてカタツムリにチョロQのタイヤを無理やりつけたみたいなスペックだからな?
それに150万!!!!!
気が狂れてるとしか思えない。
じゃなかったら、IQ5くらいだわ、オマエ。

でも、結局買いました。
彼女の笑顔が僕を後押ししてくれた。
本当に屈託なく、よく笑う素敵な子でした。
彼女が教えてくれた時間の大切さ、何が起きるかわからないという不安定さ。
やりたいことは今やる、先延ばしにしないことの大切さ。

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そんなこんなで僕は今、ただの憧れだったLeicaを手に街をブラブラしてる。
シャッターを切る時、いつも彼女の顔が浮かぶ。
正直Leicaを手にしてから、首から150万もするブツをぶら下げてるという重圧に押されて、あまり良い写真が撮れなくなってしまった。
でも、いつか彼女のような屈託のない笑顔を街の人々から引き出して撮ってみたいと思ってる。

Tちゃん、ありがとう。
安らかに。

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P.S.ちなみに、下の写真が人生初のLeicaで撮った記念すべき1枚目になります。開封後部屋でテストのために撮った1枚なので構図とか全然何も考えてないクソ写真なんだけど、なぜかめっちゃ赤くなり、何をやっても直らずパニック。その後Leicaフォーラムで質問したら"Keep practising until you get your shot."というクソリプがいの一番について、「あー、クソリプおじさんは日本だけじゃないんだなー」という発見がありました。その後ちゃんとしたおじさんが「M10-Rは初期不良でこういうエラーが出るから、設定を一度全部リセットすると直る」と教えてくれ、事なきを得ました。

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