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石鎚山に登る(日記)

 川の流れを眺めているとこの流れはどこから来たのだろうと元を辿ってみたくなるのは僕だけだろうか。川で仕事をしていながら僕はこの川のことをほとんど何も知らないような気がする。毎日限られた区間を行ったり来たりするだけだからだ。この川が始まる場所に行ってみたいというのはこの仕事を始めて以来の思いであった。

 前日から土小屋登山口に入り、車の中で寝た。外はかなり寒いようだ。携帯が冷たかった。持参の寝袋も高級なものではないので、とにかく足が冷えて寝れなかった。

 六時半出発。ひたすら茂みの中を進む。たまに片側だけ視界が開けて景色を一望できた。こんな朝早くから登っている人は少ないので独り占めである。

 鎖場に到着した。噂には聞いていたが思った以上の傾斜と高さに驚いた。1人きりで登るのには勇気がいったが、ここまで来てやらない手はない。
手袋を持ってきていなかったため、冷たい鎖に手を悴めながら登った。岩の隙間に溜まった雨水は凍っていた。二の鎖、三の鎖を登りきり頂上に着いた。出発から2時間半ほど経っていた。石鎚山といえば鋭利に尖った天狗岳が日に照らされ綺麗だった。

 石鎚山は鎖場と頂上は楽しめたが、道中を楽しめる登山ではなかった。それなりに植物や地質の知識が有れば楽しめるのかもしれないが、ぱっと視界が開ける場所が道中になく、ひたすら茂みを歩く登山だった。他のルートはまた見え方が違うのだろうか。東陵ルートを登ってみたい。

山に登っていて沢を一度も見なかった。石鎚山が仁淀川の源流部であるのは間違いないが、やはり川と山が一体であると言う実感を得るには渓谷を登っていくより他ないと思った。

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