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Udemyの学びをきっかけに、部署内で業務改善チームを始動。その意欲の源泉とは

札幌市では、2023年度に市役所・区役所職員のデジタルスキル向上を目的とした研修を実施しました。
研修は、Udemy Business(以下、Udemy)を活用したオンライン学習と、ワークショップ中心のオフライン学習を組み合わせたハイブリッド形式です。

研修への参加によって訪れた心境の変化や、今後のデジタル関連の取り組みに対する意気込みを取材しました。
後編の今回は、札幌市東区役所の及川さんにお話を聞きました。

【話し手】
札幌市東区役所 保健福祉部保護一課 保護一係長 及川さん
2000年度に入庁。西区役所・財政局・環境局・保健福祉局・教育委員会事務局などの業務を歴任したのち、東区保健福祉部に異動し現職に至る。


▼札幌市職員のデジタルスキル向上研修の記事「前編」はこちら▼

アイデアが飛び交うより良い職場づくりのため、研修への参加を決意

―及川さんの所属部署と担当する業務の内容について教えてください。

私は東区役所の保健福祉部保護一課に所属し、生活保護関係の業務を担当しています。
生活保護の申請時はケースワーカーという職員が保護受給者との面談や手続きを進めますが、その管理・監督をするのがSV(スーパーバイザー)である私の役割です。
私自身も新人職員の頃に3年ほどケースワーカーとして業務を行った経験があります。

―今回の研修に参加した背景についてお聞かせください。

生活保護の仕事は、札幌市が国から受託して行っている業務です。
国からの指示に従って行動する側面が強く、どちらかといえば受動的で「自ら積極的に変えていこう」という意欲が発揮しづらい部分もあります。

ただ、札幌市東区に所属する110人のケースワーカーはそれぞれが日々工夫を重ねながら業務を進めており、より良い職場にするためには職員のアイデアを吸い上げる必要があると考えていました。

そんなことを漠然と思い描いていた2023年、区役所を含む札幌市の全部署にTeamsが導入されることになり「これを使えば職員同士の情報共有が活性化できるかもしれない」と思いました。
最初はTeamsの使い方がわからず手探りのスタートで、なかなか職員にも必要性が浸透しない悩みを抱えていましたが、同時期に研修の開催を知って「何かヒントを得られれば」との思いで参加しました。

研修の学びを受けて業務改善のプロジェクトチームを発足

―Teamsの活用について検討する中、まさにタイムリーな状況でワークショップ研修に臨まれたのですね。研修ではどのような気づきがありましたか。

現場でTeamsを使い始めた当初は「なぜ他の職員に伝わらないのだろう、どうすればみんな使ってくれるのだろう」と悩んでいました。
研修では、まさにその悩みに添う内容が学べたのが大きな収穫でした。

一番印象に残っているのは「業務改善をして時間を生み出し、より生産性の高い業務に集中することが重要」という内容で、現場の職員にもぜひ伝えたいと思いました。
自分の中で言語化できていなかった悩みの原因が明らかになり、今後どう周囲に伝えていけばいいか理解できたのがとても良かったです。

―ワークショップ研修を経て、現場で実際に取り組み始めたことはありますか。

生活保護業務ではまだまだアナログな仕事がたくさん残っています。
東区保護課には100人以上の職員がいることもあり、私一人でツールの導入や意識改革を推し進めるのは難しいため、一緒に具体的な業務改善に取り組む有志を募りました。
現在、手を挙げてくれた11人でチームを結成したところです。

このプロジェクトチームは「窓口呼び出し用の内線電話の設置」といった具体的な業務改善計画を提案しますが、組織の垣根を超えて計画立案を行うのは初めての試みです。
そのため、軌道に乗せるにはもう少し時間がかかりそうですが、Teamsを含めたシステムの導入や「そもそもどういう業務で不便を感じているのか」という部分から意見を出し合い、検討を進めていきたいと考えています。

今後は積極的に取り組んでくれるメンバーを核にしつつ、取り組みを進めるうちに「私にもできそうだ」と感じてくれる職員が一人でも増えればいいと考えています。
その中でTeamsによるコミュニケーションも活性化していけるのが理想ですね。

「定型業務を効率化したい」という気持ちが学びの原動力に

―及川さんはUdemyで数多くの講座を受講していますが、その中でも「これは業務に活かせそうだ」と感じたものがあればお聞かせください。

Udemyでは、これから活用したいと思っているTeamsの講座について、札幌市が設定するUdemyのラーニングパス(学びの道しるべ)に沿って一通り学びました。
また、Udemyの他の講座で「Teams以外にも業務改善ツールは多くある」ということがわかったので、今後は他のツールにも範囲を広げてみたいと考えています。

最近興味があるのは、Power Automateの講座です。
それまでは何ができるツールなのかまったく知りませんでしたが、Udemyで学んでみると「こんなことができるのか!ここまで自動化させられるのか!」と驚きました。
今は「これができるなら、きっとあれもこれもできる」というアイデアがいくつか浮かんでいるので、これからもっと深めて学びたいと思います。

▼及川さんが受講した講座はこちら▼

―Power Automateで実現したいことが数多く思い浮かんだとのこと、素晴らしいです。具体的にどのような業務にPower Automateを使いたいと思いますか。

生活保護業務では、受給者に支出する生活費として「日常生活の維持に必要な費用(生活扶助や住宅扶助など)」と「通院の交通費など一時的に必要となる費用(一時扶助)」の大きく2種類に分かれます。
一時扶助は費用が発生するたびに受給者から請求を受けて支出しますが、現状では職員の手作業が多くあり、書類作成に手間がかかっています。

そこで、今後はこの一時扶助にかかる定型的な作業をPower Automate Desktopで自動化できないかと考えています。
金額・日付のシステム入力や書式への落とし込みまで自動化が可能になれば、職員の負担が減り他の業務に時間を使えるからです。

これを実用化するにはまだ学ぶべきことがたくさんあり、また組織的に導入するには多くの検証も必要となるため、アイデアを形にできるよう引き続きUdemyで学び、実務に取り入れられるよう努力したいと思っています。

まずは身近なメンバーから始め、徐々に範囲を広げるのがDX推進の鍵

―及川さんをはじめとするチームメンバーがDXを推進するうえで、今後乗り越える必要がある課題は何ですか。

やはり、部署内でなかなかDXへの認知が広がらないのは大きな壁です。
それは生活保護の部門に限ったことではないのですが、「今までの方法で問題なかったんだからいいじゃないか」という考えが根底にあると思います。
DXの便利さや良さを各職員が日常業務レベルで実感できていないことが要因としてあるため、デジタル技術活用のアイデアを具現化し、どれだけ普段使いにしていけるかが鍵になると感じます。

―最後に、今後のデジタル関係の学びへの展望や期待があればお聞かせください。

今回のワークショップ研修とUdemyでのオンライン学習は、私自身の視野を大きく広げてくれました。
自分でも様々なことを調べてみたり、係を超えたチームを結成したりといった第一歩を踏み出すきっかけをくれた、素晴らしい研修だったと思います。

この動きをぜひ他の職員にも広げていくために、研修を受ける層を広げてさらに認知が広まればいいですね。
またDX推進が職員に浸透するまでにはさまざまな困難も考えられるため、推進の担い手となる職員を手助けする支援体制もあるといいと思います。
一足飛びにDXを進めることはできませんが、徐々に庁内の機運を高めマインド醸成をしていくことが重要だと考えます。

【行政DX通信 編集部より】
今回の研修の学びを受けて、すでに現場で業務改善のプロジェクトチームを発足した及川さん。引き続きUdemyで学びながら、各種ツールの使い方を深めたいというお話が印象的でした。本日はお時間をいただきありがとうございました。

研修協力会社:みらい株式会社