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Ordinaryのはじまり

そんなこんなで始まったものの、古着が好き。古着屋が好き。ってだけで、めちゃくちゃ知識がある訳でもなく、もちろん仕入れのパイプがあるわけでもない。てかそもそも店を開くには何の許可が必要なんだ。古物商許可証取らなきゃじゃん。税金はどうなるんよ。と、土台にすら立てていなかった。
一方の巻き込まれた相方はというと、確か当時は新卒で入った仕事を退職したてほやほやの頃だった。服好きであるが故に貯金がなく、フリーターとして正社員以上に働くことで生き繋いでいたところだった。
2月も終わりの、“冬”が終わらせねえぞと本気で風を吹かせていた日に、お互いの近況を報告すべく、金欠民のド定番マクドナルドで落ち合った。二人が最も会いやすい、北朝霞駅前のマクドナルドである。店の入口から2番目に近い席に座ったのだが、1番入口近くに座る中学生ほどのグループが店の外と中を行ったり来たりで扉が何度も開き、その度に本気の風による冷気が中へと侵入してきて寒かった。そして、彼らが中に戻ってくる度に彼らの仲間が増えて入ってきた。
「買付けできてる?」
「できてないねえ、、、」
「許可証は取れたんだけど、税金とかどうなんだろ、でもそんな気にするほど売れないよな。」
「確かに」
お互いがお互いを探るような、なんか上っ面な、会話する意味ないんじゃないか。みたいな会話が続いていた。特に何も決めず、ただグダって集まって何もしなかった中学生の夏休みみたいな感じ。
「てか、店の名前どうする」
「んー、、、ハレノヒ」
「なんで?」
「なんかありそうだから」
「んじゃ、だめじゃん」
「ハレとケ」
「絶対それ次言うと思った」
「日常」
「ケやな」
「日常って英語で、、、Ordinaryだ」
「オーディナリー、なんかいいじゃん。」
Nulbarichの『Ordinary』が好きで覚えていた。ありふれていて特別な事は出来ない、ごめんな、俺は普通な男なんだ。って感じの歌詞なんだけど明るい雰囲気の曲。大学2年の冬によく聴いていた。
「新しい服着て出かける時とかお気に入りの服着て出かける時ってめちゃくちゃウキウキするじゃん。」
「そうね」
「なんか、その感覚めちゃくちゃいいよなって思ってて。コロナ真っ只中の時なんか、散歩するだけでもスラックス履いたり革靴履いたりしてたし。何ともない日でも、好きな物着てたらめちゃくちゃ幸せ感じられるもんな。」
こういうことを話すときって小っ恥ずかしい。
「わかるわ、いいね、めちゃくちゃいい。」
なんて言いながら相方はニコニコしていた。バカにしたような、でもこの考えに賛同してくれてるような。いずれにせよめちゃくちゃいいって言われることは普通に嬉しい。
何より名前が決まったことで、自分のお店を持った感が増して、それがめちゃくちゃ嬉しかった。

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Ordinary : 普通な、日常の、平凡な

ありふれた日常の中でも、身につけているものは少し特別なものを。

お気に入りの服を身につけてお出かけする、それだけで一日がいいものになる。

皆さんの日常を彩る一着を、是非Ordinaryで。
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