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第5章 2話 宇宙采配のキス 2nd (2/3)
まだ新人だということもあり、アーティストの甲田はじめとは、すぐに会うことができた。
向こうも、誰かに話したいものの怪しい話と一括りにされそうで、舞がそれを共感できそうだと感じて、積極的に会う方向で予定が決まった。
どこかのスタバで会うイメージでいたのに、甲田は谷中商店街のザクロというトルコ料理店を指定してきた。
そこは異次元な異世界だった。人々が無尽蔵に押し寄せる王宮か寺院のエントランスホールのようなオリエンタルな雑踏感溢れる店内。床には一面ペルシャ絨毯。天井からは、トルコモザイクランプや水タバコ用のガラスボールがぶら下がっている。私たちは、日本の法事で精進料理をいただくときのような間隔で床に向き合って座った。
「こんにちは。時間作ってくれてありがとう。」
舞はまだ刺激ある店内造形を見回しながら言った。
「初めまして。甲田はじめです。」
丁寧な人だ。
「私は、あなたが記者に話した施術者の事を聞きたくて連絡したの。私が探してる人は、多分その人のような気がして。いったいどこで会ったの?」
私は、早く知りたくていきなり本題に入った。
「それが…。」
甲田はちょっと困ったように話しはじめた。
「言いづらいんですが、気づいたらそこに居たんです。アトリエで気絶して、たまたまアトリエを覗いた人が僕をそこに連れて行ったみたいで。だけど、その施術してくれた方が、「また来る時はここに連絡して。」とアドレスを教えてくれたので、それを教えますね。」
甲田は紙の端切れにアドレスを書いたものをくれた。
舞は素早くそれを受け取って握りしめた。「会える」と心の中で唱えて、
「私の友人が、あなたは施術で描くものが変わったって言ってたけど、それはどういう事なの?」
同じ人だという確信が欲しくて聞いた。
「僕の頭頂を掌で押さえて、ハープのよう心地よくて不思議な音律の声を出したんです。そうしたら、僕の脳の何かがどんどん剥がれ落ちていくような感覚になりました。手足指先にまで電流というか温かいものが流れるような感覚でした。少しの間、まどろんでいる間至福感のようなものに包まれました。ちょうど僕が絵を書き上げた時に感じる、対象物のない愛のような、って言っても分からないですよね^ ^。」
「すごく分かるわ。私も同じものを感じた。」
明らかに覚者だった。
甲田は、まだ話し足りないように手元の飲み物を口に含んで、タイミングを待っているような素振りをしたが、舞はすぐにでも会いたいと思って甲田に「ちょっと待ってね」という目配せをして、アドレスを書いた紙を見ながら、携帯でメッセージを送った。
「どこに居るんですか?」
すぐに返信音が鳴った。
第3話に続く→
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