第5章 3話 宇宙采配のキス 2nd (3/3)
すぐに着信音がなった。返信があった。
「意識が向かうところに」
返信にはこう書いてあった。
舞は、黙って文字を眺めた。
いったいどう言う意味だろう?
あの時、私たち3人は特別な時空にいた。
どうして覚者に会えたのだろう?あの時眞人は自然界の摂理を計算していて、真理子はピアノの音律に調和して、そして舞には....。それぞれの波長が不思議な螺旋となり、
何に意識が向かったのだろう?意識を向けたところにエネルギーが向かう。
覚者は本当に存在するのかな?
舞は、表面上は甲田を見つめて心で覚者を描いた。すると、ドローンか何かで観測点が段々と高くなって観測範囲が広がるように、覚者のいる部屋から放射状に街並みが描かれ、自分の居る点とそれがどこか?の点が結ばれた。判別できるほどまでのピクチャーが舞のイメージにはっきりと浮かんだ。
一体、自分の感覚に何が起こっているのか?よく分からないが
舞は甲田に挨拶をして無心の状態でその場所へ向かった。
向かったと言うよりは、その場所が自分に向かってクローズアップしてきたような感覚で、その場所に着いた。
その場所には、確かにあった。
それは、あのアパートだった。
ドアの鍵は開いていた。
舞は玄関で靴を脱ぎ、廊下の奥の右手にある階段をゆっくりと二階へ上がり、あの日の場所に辿り着いた。
しかしそこには覚者は居らず….
それなのに気配だけがあった。
「久しぶり」
音霊や言霊を超えた
存在の響き。
舞は、そこに覚者がいる事を確信できた。
それは不思議な体験だった。
「いつでも私を感じることができるだろう。記憶という振動で君は、私を現象化できる。しかし、もうそこに居るのだから感じるだけで十分だろうが。」
こう、声として頭に響いた。
まだ訳がわからないままだったが、愛に包まれたこの存在の響きを感じ舞は感動で涙が溢れ、黙ってうなずいた。
私たちすべての体内に、すべての記憶がある。あとは自分の観念を外し緩んで、もうすでにある記憶を思い出してゆくだけ。
fin