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第3章 2話 居心地スペクトル(2/3)

「君のスペクトルは今」
....絵がしゃべった。

 私は、女性がコーヒーテーブルの上に置いたままだった絵を両手で持ち、顔の正面に絵を持ってきて、その先も聞く気があることをアピールするように深く頷いた。

 すると、その絵は気を良くしたのか、急に勢いよく話し始めた。

「短期間に君の身にいろんな不思議な事が起きた。メンターとの出会いのフレームには驚いただろうけど、君が求めていた事だよ。SF的な展開を。(第1章 宇宙采配のキス)たしかに普通ではない。愛や細胞の震え、生まれて初めての至福感を体が知ったことも含めて。」

 その声は、ちょっと低めでしっとり落ち着いていて、聞いたことのある私が好きな声だった。
 まるで一瞬声に想いを馳せている事を知っているかのように、間があった。
 そして私がはっと意識を絵に戻すとまた、その絵は話しはじめた。

 「学んできたことすべてが覆される新しい知識に触れて、君の魂は歓喜している。真理に触れたと解っているから。だけど、表層意識ではそれを血肉にすることを排除しようとした。それは人間としてのホメオスタシス(安全のために現状を維持しようとする機能)が正常に働いた証拠。過去の知識や記憶と結びつけて「もう知ってる」事として片付ける事でメモリーしないようにしたんだ。加えてメンターへの「捉えきれない愛」という未経験の感情が同時に押し寄せて不安になり、新しい扉を開いた魂の喜びと逆位相となった。不安vs喜びの周波数だ。君の場合は魂の好奇心の方が優位だった。消えなかった代わりに不安も残ったまま。これに関しては君のお気に入りの苦しみに関係しているよ。知識を腑に落とす身体と脳、そして感情は一般の人間の機能でそれらを同時に昇華しきれない。君たち人間世界ではこれができる事を「悟り」って呼んでる。」

ここで私は、その絵に1つリクエストをした。
「事実だけじゃなく、「悟り」とか概念についても少し解説してほしい」と。
 絵は返事もせず、しかし解説してくれた。

「悟りとは自分の都合や善悪に囚われず漂ってる可能性を淡々と受けいれる事。」

「捉えきれない愛」についてもう少し話すよ。あの時、知人から紹介された本は手助けになっただろう。体験した事と「タオ(道)」が同じだと知識として知ることができた。知ることは意識する事だからエネルギーが変わる。それは意味が変わるという事だ。3次元的に大事な事だ。そして君はメンターとの出会いが単なる「男女間の恋愛」ではないと感じた。だから脳で「ほんとうに求めていることは何か?」と自問自答し君は「魂の成長」を選んだ。なんの問題もなく、すんなり感情を昇華できただろう。

 だけどそれは、すべて君が設定してるテーマを達成するのに必要なプロセスだからね。
居心地が悪いことも含めて。」

今まで読んできたどの本よりも腑に落ちた。

「ここで、魂と感情の関係を可視化するスペクトルを説明しておこう。」


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